動画配信「日本独自」で勝負 スタジオ確保、地上波連動……競争が激化
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大手のインターネット動画配信サービスが、日本オリジナル作品の制作を強化している。Netflixは、作品ごとに借りるのが一般的だった撮影スタジオを企業として確保。日本テレビグループのHuluは地上波放送と連動し、ヒット作を生み出している。競争が激化する中、各社は独自のコンテンツを確保して視聴者拡大を図っている。(文化部 森本昌彦)
Netflixは4月から、国内最大規模の「東宝スタジオ」(東京都世田谷区)にあるスタジオ2棟を複数年にわたり、賃借した。同スタジオは過去に「七人の侍」や「ゴジラ」シリーズなど映画史に残る名作が作られた舞台として知られている。
運営するTOHOスタジオによると、作品ごとに借りる場合には撮影スケジュールと空き状況が合致しなかったり、制作期間が変更しても対応できなかったりするケースもある。これに対し、事業者が長期的に借りることで、好きなときにスタジオを使用できる。このメリットは大きい。
今回の賃借の狙いについて、Netflixで広報を担当する東菜緒さんは「実写作品の本数だけでなく、大きなスケールで作るプロジェクトも増えている。今後作っていく環境を整備するという意味でも、インターナショナルスタンダードの制作拠点を確保しておくというのは今後の作品作りで重要になってくる」と説明する。
2015年から日本でサービスを始め、約50本の日本オリジナル作品を配信してきた。アダルトビデオ業界の風雲児と呼ばれた村西とおる監督を主人公に時代を活写した「全裸監督」(19年)は人気を集め、続編公開が決まっている。20年12月から独占配信するオリジナルシリーズ「今際(いまわ)の国のアリス」は開始4週間で全世界の1800万世帯が視聴し、日本の実写作品として世界で最も見られた作品になった。
「全裸監督」や「今際の国のアリス」などドラマが目立っているが、今後は別ジャンルの拡充も目指す。東さんは「今年以降はジャンルを豊富にし、例えば長編映画やリアリティー番組、バラエティー番組のような作品群にも挑戦していきたいと思っている」と話した。
「重要性、年々増す」
他のサービスも日本オリジナル作品の充実を図っている。Huluは「Huluオリジナル」というブランドを展開。独自制作の作品に加え、「ミス・シャーロック」(18年)や「THE HEAD」(21年)という海外と組んだ大型作品も並ぶ。
Huluを運営するHJホールディングスの常務取締役CCO、長澤一史さんは「われわれとしては、Huluオリジナルを、ユーザーが『見てみたい』、俳優が『出演したい』、クリエーターが『作ってみたい』と思ってもらえるようなブランドにしていきたいと思っている」と語る。
地上波テレビとの連動に力を入れているのもサービスの特徴の一つだ。20年のNHK紅白歌合戦にも出場した9人組女性グループ「NiziU」(ニジュー)を生み出したオーディション企画「Nizi Project」はその代表例で、日本テレビでは情報番組で特集したり、オーディション番組を放送。Huluではオーディションの完全版が配信された。最近では1月クールに放送されたドラマ「君と世界が終わる日に」の続編が独占配信されている。
長澤さんは「オリジナル作品の重要性は年々増していくと思っている」と話し、オリジナル作品の充実を図っている。
豪州などでリメイク
Amazonプライム・ビデオは15年に日本でサービスを始めてから、21年3月時点で37作品を制作。お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志企画のバラエティー番組「HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル」はシーズン9まで作られる人気作品となった。
20年には三谷幸喜が脚本・演出を担当し、香取慎吾が主演したシチュエーションコメディー「誰かが、見ている」も発表され、話題となった。日本の会員に楽しんでもらうのに加え、世界を意識してオリジナル作品を手掛けており、「HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル」はフォーマットが海外展開し、メキシコや豪州でリメイクされた。今後もイタリアやドイツ、フランス、スペインでの制作が決まっている。
提携で海外作品も拡充
海外事業者との提携で作品の充実を図るサービスもある。「U-NEXT」(ユーネクスト)はSVOD(定額制動画配信サービス)で、米Warner Mediaと独占パートナーシップ契約を締結。4月から配信サービス「HBO Max」などの人気作を配信している。
映画「ブレードランナー」などで知られるリドリー・スコット製作総指揮のSF作品「レイズド・バイ・ウルブス/神なき惑星」のほか、「セックス・アンド・ザ・シティ」など過去の人気作も提供する。
同社の堤天心社長は3月末の戦略発表会で、「日本における動画配信市場はまだまだ伸びると思っている。一人のユーザーが複数サービスを使っているという傾向はどんどん高まっている」と説明。他社との差別化について「今回のような取り組みを含めて、われわれはわれわれで今後、プレミアムないい作品をそろえていく」と語った。
日本では20年、米Walt Disney Companyの「Disney+」(ディズニープラス)もサービスを始め、競争はこれまで以上に激化。米アカデミー賞ではNetflixなど動画配信サービスの作品が、ノミネートされることはもはや当たり前となっており、今後も量、質の両面で存在感が高まっていくことは間違いない。
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