NEC森田新社長が経営方針会見で見せた「攻めの姿勢」とは
今回は「NEC森田新社長が経営方針会見で見せた「攻めの姿勢」とは」についてご紹介します。
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本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO(最高経営責任者)の森田隆之氏と、マカフィー 代表取締役社長の田中辰夫氏の発言を紹介する。
NECは先頃、2020年度(2021年3月期)の決算と今後の経営方針について発表した。4月1日に同社社長に就任した森田氏の冒頭の発言は、そのオンライン会見で、2021年度(2022年3月期)から2025年度(2026年3月期)までの5年間の中期経営計画のポイントについて述べたものである。
森田氏による中期経営計画の説明で、筆者が注目したのは、同社が推進する事業を「成長事業」と「ベース事業」に区別したことだ。これまで長年にわたって同社の決算や経営方針に関する会見にはほぼ出席してきたが、こうした区別を行って事業内容を説明したのは、筆者の記憶では今回が初めてだ。
どのように区別したかというと、成長事業はデジタルガバメント(DG)、デジタルファイナンス(DF)、グローバル5G(次世代通信規格)、コアDX(デジタルトランスフォーメーション)、そして次の柱となる事業のことで、ベース事業はそれら以外の事業を指す。
2025中期経営計画では、2025年度に全社の売上収益3兆5000億円(2020年度は2兆9940億円)、営業利益3000億円(同1782億円)を目標としているが、これらを成長事業とベース事業に分けて見ると図1のようになる。すなわち、成長事業が文字通り今後の成長を担っているが、それもベース事業があってこそという考え方から冒頭の発言になったようだ。
成長事業の中でコアDXという言葉が気になった読者もおられるだろう。森田氏によると、「国内IT事業のトランスフォーメーション」の中にコアDXとベース事業である既存のIT事業があり、今後は図2に示すように「国内IT事業をこれまでの個別最適から全体最適へと、コアDXをテコにベース事業の変革を図るとともに、国内IT事業の営業利益率を8%から13%に改善していく」とのことだ。コアDXの内容については、図2に記されている3つがポイントとなる。
筆者がなぜ、こうした事業の区別に注目したかというと、富士通が半年前から主力のテクノロジーソリューション事業を「For Growth」と「For Stability」に分け、成長事業を前面に押し出した形で説明するようになったからだ。今回のNECの説明も基本的な方向は同じだという印象を持った。富士通の説明については関連記事で解説したので参照していただきたい。
その解説記事でも述べたが、筆者はかねがね、IT分野をはじめとした日本企業は欧米企業に比べて決算や経営方針の会見での成長事業や注力事業の説明がおとなしいと感じ、記事でも幾度か「成長事業をもっと前面に」と訴えてきた。
それが、ここにきて日本のIT企業を代表する富士通とNECが目に見える形で「攻めの姿勢」を前面に打ち出すようになってきた。筆者の訴えが届いたかどうかは分からないが、今回の森田氏の説明に、勝手ながら小さな達成感を得た次第である。
ただ、会見の質疑応答で「成長事業とベース事業を分けた意図」を聞こうとしたが、時間切れで質問の順番が回って来なかった。次の機会に確かめてみたい。