SUBARUがデータ活用で取り組むデジタル時代の「モノ作りの強化」

今回は「SUBARUがデータ活用で取り組むデジタル時代の「モノ作りの強化」」についてご紹介します。

関連ワード (ビッグデータ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 セールスフォース・ドットコムは6月1~4日、プライベートイベント「Salesforce Live: Japan」をオンラインで開催している。初日には「ビジネスの成功をどこからでも“Success from Anywhere”」をテーマにさまざまなセッションが配信された。ここでは、「Salesforce&Tableauで進化する次世代のデータ活用」というセッションで紹介されたSUBARUのTableau活用事例をお伝えする。

 まず、セールスフォース・ドットコム傘下でTableau Software Country Managerを務める佐藤豊氏がTableauの概要を紹介。Salesforceが目指すものを「お客さまの顧客接点を全てデジタル化すること。その中で生まれてきたデータを“Single Source of Truth”として、データを会社のパワーに変えていくこと」だとした上で、さらにデータをパワーに変えていく際に必要となるツールが「アナリティクス」であり、TableauがSalesforceに加わった理由だと説明した。

 また、「データは、ビジネスを知っている人や何かをしたい人が手にしたときに一番効果がある」と指摘。ビジネスに携わる全ての人がデータを見て理解できるように支援することがミッションだと語った。

 「Single Source of Truthを使うことによって、データドリブンな意思決定ができる。データドリブンな意思決定ができるとバイアスが抜け、カルチャーの変化や人の変革につながる。データの力を組織全体として把握し、最大化しようという形になり、一人一人の社員/従業員がより速くスマートな意思決定をするような形にフォーカスしていく」(佐藤氏)という流れでデータを基盤に据えた企業改革が進んでいくとした。

 続いて、SUBARU 専務執行役員 CIO IT戦略本部長 兼 経営企画本部 副本部長の臺卓治氏が同社のデジタル/データ活用の取り組みを紹介。同社は自動車と航空宇宙をメインのビジネスとし、2019年度の実績で売上高3兆3400億円超、営業利益2000億円超という規模の企業で、同氏は「自動車メーカーの中では決して大きな企業ではないので、経営戦略として『選択と集中』『差別化』『付加価値』という3つを掲げている」という。

 同社が最終的に目指す姿について、臺氏は「SUBARUは『技術オリエンテッド』な企業というイメージで見られることが多いが、お客さまに『安心と楽しさ』という価値を提供して、お客さまとの結び付きを強くしていきたいというのがわれわれが目指しているところだ」とした。

 従来の自動車産業はデジタルとは距離がある世界だったが、現在は「100年に一度の変革期」として“CASE(Connected, Autonomous, Shared & Service, Electric)”に注目が集まる状況になっている。業界が否応なしにデジタル技術に向き合わざるを得ない状況になる中、「SUBARUはデジタルとどう向き合っていくのか」について悩んだと明かす。

 どちらかと言えば保守的な社風の中で同氏が取り組んだのは、データを活用することで従来は難しかった顧客との直接の接点を作っていくことと、日本の強みであった「モノ作りの強化」だという。前者の取り組みが、同社の戦略市場である米国で提供している「コネクトサービス(サブスクリプションビジネスモデル)」や「SUBARUオリジナルナビゲーションスマートフォンアプリ“SUBAROAD”」による顧客体験の価値創造だ。

 後者の取り組みは「日本の製造業の強みであった『現場と一体となった改善』が停滞気味で、従業員の意識も少し落ちているんじゃないか」という“モノ作りの危機”に対する危機感を背景としたものだという。理由としては「業務量が増えてきて時間的な余裕がなくなってきた」ことや「積み上げ式に業務量が増えたことで作業者が自分がやっている仕事の全体感が分からなくなってきている」「『この仕事の本質って何だ?』というところが見えないので改善が進みにくい」ということが挙げられるという。

 「業務の効率化で時間を生み出し、課題を可視化してチームで共有・分析しながら問題解決につなげる。その結果を通じて人材を育てていくというのがわれわれの得意としてきた改善プロセスになる。そう考えると、現在のように業務が非常に複雑になっている中でデジタルツールが重要になり、そこにTableauの活用領域があるのではないか」と臺氏は考えたという。

 同氏はその狙いとして「社内の成功事例を積み上げることで、従業員にもう一度、改善意識を取り戻してもらいたい。非常に煩雑になっている業務を標準化するなどして、より本質的な仕事に取り組んでもらいたい。結果的にそれが職場の活性化につながり、従業員のモチベーションを上げ、エンゲージメントの向上になる」ことを期待していると語った。

 同社は2016年にTableauの導入を開始し、現在は526部署、1400人が利用できる状態になっているという。社内業務のほぼ全領域で活用しているとのことだが、主な事例として「製造領域」「販売促進領域」「品質領域」の3つが紹介された。

 製造領域の取り組みでは、従来、紙を使って手作業で行っていたチェックリストの作成をタブレットに切り替え、Tableauで分析することで効率化や精度向上などのメリットが得られた。それによって、「作業工程をデータによって可視化できるようになったことで『自分たちがやっている仕事のどこが問題なんだ』ということが認識できるようになり、改善につながるようになった」(臺氏)

 販売促進の領域では、Salesforceの機能であるウェブ履歴の収集から顧客がどういう風に車に向き合っているかをつかみ、適切な情報発信につなげることができるようになった。また、その結果をTableauで分析することにより、従来の枠を超えてさまざまな部門で課題を共有し、問題解決できるようになったという。

 最後の品質領域は、米国市場での品質向上の取り組みになる。米国内630拠点の販売店から毎日4000件を超える指摘が顧客から集まってくるが、従来はこのデータを選任の担当者が分析してきたため、スピードの遅さやデータの属人化という問題があった。しかし、Tableauを活用することで誰でもデータを見られるようになり、さまざまな切り口からの分析が行われるようになったことで次のアクションが迅速になったという。

 こうした成果を踏まえて、同氏は今後の取り組みとして「データ活用の定着を図る」と「経営との距離を詰めていく」の2点を挙げ、さらにデータを活用できる人材の育成や新事業の創出などにもつなげていきたいとした。

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