産業制御システムのロックウェル、国内で予防保全AIの一般提供を開始
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産業制御システム大手の米Rockwell Automationは7月10日、都内で記者会見を開き、AIを用いた予防保全機能「FactoryTalk Analytics GuardianAI」の国内一般提供を開始すると発表した。併せてAIやクラウドなどIT化による産業制御システムの高度化に向けた取り組みを説明した。
同社は、産業オートメーションシステム分野の大手メーカーで、100カ国以上で事業を展開し、2023年の売上高は91億ドルに上る。近年は、AIやクラウドなどITを取り入れた産業制御システムの高度化を推進している。
アジア太平洋地域プレジデントのScott Wooldridge氏は、同社の主要顧客900社を対象に実施している年次調査において、「この2年ほど柔軟な生産体制の実現やサイバーセキュリティなどが顧客の新たな課題として浮上している。特にAIへの投資は、2年前までは顧客の優先事項のトップ10の圏外だったが、今ではトップ3に入るほどに変化している」と説明した。
このため同社では、デジタルツインによるシミュレーションなどを活用した生産システム設計や生産管理の高度化、搬送ロボットなどによる製造設備の構内物流の自動化、エッジおよびクラウドの活用を推進し、最新技術の適用による自動化から自律制御の実現を目指しているという。
ITを中心とする最新技術を獲得すべく、2016年以降でデータサイエンスやデータプラットフォーム、アナリティクス、サイバーセキュリティ、コンサルティングファームなど20社近い企業を買収している。また、顧客や多様なパートナーとのエコシステムの拡大も進め、例えば、AIの領域ではMicrosoftやNVIDIA、ITと制御システムの安全なネットワーク接続ではCisco Systemsと協業しているとした。
また、ロックウェル・オートメーション ジャパン 代表取締役社長の矢田智巳氏は、「自律型生産」「製造ライフサイクル管理」「各産業専門知識」の3つを基礎に据えて、AIやIoT、自律型搬送、拡張現実/仮想現実(AR/VR)、デジタルツイン、生産実行・プロセスの標準化、デジタル情報流通、ネットワークセキュリティ、パートナー/コンサルタントなど広範に取り組みをしていると説明した。
特にAIでは、上述の調査において77%の製造企業がAIや機械学習に投資しており、72%が生成AI分野に投資し、80%が自社においてAIスキルを重要と考えることが分かったという。
同社では、International Society of Automation(ISA)のビジネス・制御システム統合の標準「ISA-95」に基づいて、レベル1(センシング)、レベル2(制御)、レベル3(製造管理)それぞれの領域における分散型のAI活用のアプローチを採用している。例えば、レベル1では映像データ分析による可視化の「Vision AI」、機械学習による予兆モデル基盤の「LogixAI」、レベル3では生産企画や保全、在庫、稼働計画など全体を管理する「OptimAI」、レベル2ではOptimAIに基づいて各種プロセスの制御などを担う「TwinAI」を展開している。
今回日本で一般提供を開始したFactoryTalk Analytics GuardianAIは、上述のレベル1における状態分析のソリューションに位置付けられる。世界中で稼働する既存の制御機器のデータと機械学習により、機器異常の兆候などを検知・識別するAIモデルをあらかじめ現場システム(エッジデバイス)に組み込み、すぐに利用を始められる。また、エッジデバイス上でトレーニングを行うことで、リアルタイム性の高い予測を可能にしているという。
ロックウェル オートメーション ジャパン パートナー戦略事業本部長の吉田高志氏によれば、現時点で同社製デバイスにおいては、ユーザーが高度なデータサイエンスのスキルを保有していなくてもAIモデルをすぐに適用、活用可能とする。将来的には、サードパーティー製のデバイスや、ユーザー固有の環境における異常の検知・識別にも対応していくことにしている。
また、説明会では、2025年前半のリリースを目標に開発を進めているプログラマブルロジックコントローラー(PLC)用アプリケーション開発環境のクラウドサービス「FT Design Studio Copilot」も披露。この環境では、開発者が生成AIやC/C#を使ってPLCアプリケーションを作成でき、C/C#によるコーディングをPLC用のラダー構造に自動生成するという。
吉田氏は、PLCアプリケーション独特の記述に不慣れな若手開発者も多いと話し、FT Design Studio Copilotでは若手開発者が参加しやすい環境を提供する狙いもあるという。