ネットアップの中島社長に聞く–ブロックストレージの勝算、VMware問題、日本のAI

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 ストレージベンダーのNetAppがAI時代に向けた戦略を展開している。同社が9月末に米国ラスベガスで開催した年次カンファレンス「NetApp INSIGHT 2024」では、最新のブロックストレージ、AIデータパイプラインのアーキテクチャーなどを発表した。イベントの会場で日本法人ネットアップ 代表執行役社長の中島シハブ・ドゥグラ氏に話を聞いた。

–今回のイベントで発表した主なポイントを教えてください。

 今回のNetApp Insightは非常に特別なイベントでした。例年、このイベントはわれわれにとって最大の年間イベントですが、今年は特に準備も念入りに行い、全体的な盛り上がりも違いました。私自身もエネルギーの高さを強く感じました。

 新製品の発表では、「ASA(All-Flash SAN Array)」のフラッグシップ製品として、ハイパフォーマンスの「ASA A Series」を発表しました。クラウド分野では、アズ・ア・サービスの「Keystone」の強化も発表しました。セキュリティ関連の製品も幅広く紹介し、AI関連の発表もありました。

 特筆すべき点は、今回のイベントでわれわれの将来の展開を共有したことです。これはNetAppにとって新しい動きです。これまでNetAppは、製品が完成してから発表をするスタイルでしたが、今回はわれわれが目指す方向性や今後の取り組みを事前に公開しました。これにより、お客さまやパートナーの皆さまにわれわれの長期的なビジョンをより明確に理解していただけると考えています。

–ASA A Seriesは、どのような用途を想定しているのでしょうか。

 仮想化基盤やデータベース向けのアプリケーションなど、高性能が要求されるワークロードを想定しています。特にTier1、つまり、最も重要度の高いミッションクリティカルなアプリケーションに適しています。例えば、大規模なトランザクション処理を行う金融系システムや、リアルタイム分析が必要なビジネスインテリジェンスシステム、さらには高速な応答が求められるECプラットフォームなどが典型的な用途として考えられます。

–A Seriesの日本での展開はどのように進めていく予定ですか。

 A Seriesは、まもなく日本でローンチする予定です。既にASAの展開を積極的に進めており、その延長となります。数カ月前に日本で「ASA C Series」を発表しました。お客さまやパートナーさまからの反応は非常に良好で、特にパフォーマンス、コスト削減効果、そして導入の簡便さについて高い評価をいただいています。多くのお客さまやパートナーさまが概念実証(PoC)を実施しています。

 また、技術者向けのトレーニングやワークショップも積極的に行っています。これはA Seriesも同じで、お客さまやパートナーさまの技術者が、A Seriesの特性を十分に理解し、最適な導入・運用ができるようサポートしていきます。

 さらに、業種別のソリューション提案も強化していく予定です。金融、製造、医療など、各業界特有のニーズに合わせたA Seriesの活用方法を提案し、より具体的な価値を示していきたいと考えています。

 このように、製品の優位性を示すだけでなく、お客さまのビジネス課題解決に直結する形での展開を目指しています。日本市場の特性を十分に考慮しながら、段階的かつ確実にA Seriesを訴求していく方針です。

–ブロックストレージは競合がひしめく分野です。NetAppの強みはどこにあるのでしょうか。

 われわれの目標は、単なるストレージベンダーを超えて、お客さまのデータ活用を最大化することにあります。データ中心、データドリブンなアプローチを実現するための総合的なソリューションを提供することを目指しています。

 そのためにブロックストレージ、ファイルサーバー、オブジェクトストレージと幅広いポートフォリオを持ち、さまざまなニーズに対応します。例えば、Tier1ほどの極端な高速性を求めないTier2のアプリケーション向けには、キャパシティーフラッシュを提供しています。バックアップの領域では、イベント会期中に「FAS」ラインの新製品を発表しました。大容量のデータを効率的に保存し、必要に応じて迅速にリカバリーできるように設計されています。これほど幅広いポートフォリオを持つストレージベンダーは、ほかにないと自負しています。

 製品ポートフォリオに加え、NetAppの技術が生み出す強みを幾つか紹介します。まずは、シンプルさ、です。われわれは「OnTap」という単一のオペレーティングシステムを持ち、ブロック、ファイル、オブジェクトストレージの全てを管理できます。

 異なるベンダーのさまざまなストレージシステムが混在する環境では、それぞれが異なるオペレーティングシステムを持つため、管理が複雑になります。結果としてIT部門の負担が大きくなります。

 NetAppのアプローチは、これらを全て統合することです。OnTapを使用することで、運用が大幅に簡素化され、コストダウンにもつながります。また、データのサイロ化を防ぎ、統一されたセキュリティポリシーを適用できます。これにより、お客さまのビジネススピードが向上し、データをより効果的に活用できるようになります。

 クラウドとの連携もわれわれの強みです。ハイブリッドクラウド環境において、オンプレミスのストレージとクラウドストレージをシームレスに統合できる能力が多くのお客さまから高く評価されています。

 このように、シンプルさ、パフォーマンス、コスト効率、そしてクラウド統合能力という複数の側面から、われわれは競争力を維持・強化しています。

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