Apple Music「ロスレス配信」の本質と、現実的な楽しみ方 :小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

今回は「Apple Music「ロスレス配信」の本質と、現実的な楽しみ方 :小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)」についてご紹介します。

関連ワード (再生、日本、相当等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、It Media News様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 6月7日(米国時間)からスタートした米Appleの開発者向けカンファレンス「WWDC」に歩調を合わせるようにして、Apple Musicのロスレスオーディオと空間オーディオ対応が始まった。すでに日本でもサービスが開始されており、各メディアから指南書のような格好の記事が出ているところだ。

 アプリの設定などはそちらの記事を見ていただくとして、本稿ではもう少し掘り下げて、ロスレス配信を楽しむための「現実的な解」を探してみたい。

 まず状況を整理してみよう。空間オーディオのほうは、Dolby Atmosエンコードされた音源が配信される。これはH1およびW1チップを搭載したApple製のAirPodsシリーズか、Beatsの一部の製品、または世代限定されるがiPhone、iPadの内蔵スピーカーで。

 一方、非可逆圧縮によるデータ損失がないロスレス(Lossless)の方は、今のところワイヤレスで聴く方法がなく、ワイヤード(有線)接続するしかないことが。方法はいろいろあるわけだが、順当に考えれば近いうちにロスレスオーディオのストリームを直接受信して再生する、HomePod的なスピーカーが登場するのではないだろうか。ロスレスだけでなく空間オーディオにも対応するだろうから、AmazonのEcho Studioみたいなものになるという予測は成り立つ。

 ワイヤレスイヤフォンのロスレス対応は、現状のBluetoothベースの接続では帯域が足りないことから、難しいことになる。ハイレゾ相当の音質が伝送できるコーデックにはソニーのLDACや米QualcommのaptX HDおよびaptX Adaptive、韓国SamsungのScalable Codecなどがあるが、これらは非可逆圧縮を伴うので、ロスレスではない。それでも従来のAAC伝送よりマシなことは間違いないが、ロスレスとは違う文脈の話であることは頭に入れておきたい。

 将来的にはBluetoothの帯域も上がるかもしれないし、Wi-Fi伝送を使ってワイヤレスを実現するという手もないことはないだろうが、まだ当分先の話になるだろう。従ってこの時点ではあまり散財せず、手持ちの機材を使ってロスレスを楽しみ、Appleの次の一手を待ちたいところだ。

ロスレス配信の本質

 Apple Musicの配信で初めてロスレス配信というものを認識した方もある程度いらっしゃると思うが、これは何もAppleが最初ではない。すでにAmazon Music HD、Deezer、OTOTOY、TIDAL、mora qualitasといったサービスがロスレス配信を行っており、2021年後半にはSpotifyも対応する予定だ。対応が見えない大手はもはやYouTube Musicぐらいで、むしろAppleのサービスインは後発組といっていい。

 ロスレスとハイレゾの関係がゴチャゴチャしてよく分からないという方もいるだろう。Apple Musicでのロスレス配信を例に取れば、「ロスレス ≠ ハイレゾ」ということになる。それを理解するには、まずデジタルミュージックの基本となった、CDクオリティーから確認していこう。

 CDに収録されているデジタルデータは、44.1kHz/16bitである。これはメディアに入れるための規格としてこのフォーマットに決まったわけで、音楽制作時のデジタルレコーディングでは、もっと高レートのフォーマットを使っている。時代によって変遷があるが、過去多く使用されてきたのは、48kHz/24bit、96kHz/24bit、192kHz/24bitといったところだろうか。ざっくりいえば、数値が大きくなるほど高音質ということになる。

 Apple Musicで配信されるロスレスデータには、44.1kHz/16bitから192kHz/24bitまでいろいろある。44.1kHz/16bitならCDをそのまま聴いてるのと同じということになるが、圧縮配信よりはマシ、という考え方である。

 じゃあハイレゾってどこからどこまで? という話になるわけだが、JEITA(電子情報技術産業協会)の定義によれば、48kHz/16bitまではCDクオリティーとみなし、それ以上をハイレゾと定義している。

 このため、Apple Musicのロスレス配信には、CDクオリティーのものもあればハイレゾのものもあるといった、混在状態となっている。一例としてピーター・ガブリエルのアルバムで調査したところ、「1」が44.1kHz/16bit、「2」がロスレス配信なし、「3」「4」「So」が96kHz/24bit、「Secret World Live」が44.1/24bitと、ものの見事にバラバラである。ただ、わざわざロスレスの楽曲を探さなくても、大抵のものはすでにロスレス配信となっており、その点では非常に展開が早いといえる。

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