「音声認識AIの競争に対する懸念が高まっている」とEUが発表

今回は「「音声認識AIの競争に対する懸念が高まっている」とEUが発表」についてご紹介します。

関連ワード (AI、Amazon Alexa、EU、Googleアシスタント、IoT、Siri、音声アシスタント等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


欧州連合はおよそ1年にわたり、AIを使用した音声アシスタントおよびテクノロジーと連携したモノのインターネット(IoT)に関連する競争の影響を調査してきた。今回紹介する1回目の報告では、EU委員会の立案者が表明する潜在的な懸念が、今後の幅広いデジタル法案決定への情報提供に役立つかどうかという点が扱われる。

2020年末に提出されたEUの法案の大部分は、その地域で実行中のいわゆる「ゲートキーパー」プラットフォームに対する法規の事前適用に向けて、すでに準備が整っている。EU全土に適用されるデジタルサービス法にまとめられた、仲介を行う強力なプラットフォームに当てはまるビジネス規範「命令事項および禁止事項」のリストも含まれている。

しかしもちろん、テクノロジーを活用する流れが止まることはない。競争政策を担当するMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベステガー)氏はこれまで、音声認識AIテクノロジーに注目してきた。自分の部門で「データへのアクセスがどのようにマーケットプレイスを変えるのか探っている」と彼女が述べた2019年には、ユーザーの選択に対して引き起こされる課題に関する懸念を表明していた。

関連記事:EU競争政策担当委員の提言「巨大ハイテク企業を分割してはいけない、データアクセスを規制せよ」

委員会は2020年の7月に、IoT関連の競争に関する懸念について精査するため、セクターごとの調査を発表し、確かな一歩を踏み出した。

これは、コンシューマー向けのIoT製品やサービスに関連する市場で(ヨーロッパ、アジア、米国で)事業を展開する200以上の企業を対象とした調査に基づき、現在、暫定報告書として公開されている。さらに、最終報告が来年の前期に発表される前に、(9月1日までの)調査結果に対するさらなるフィードバックを要請している。

競争に関して明らかになった潜在的な懸念のうち、主な分野には、同じスマートデバイスで異なる音声アシスタントを使用しにくくする音声アシスタントおよび手法に関連した、独占行為または結託行為がある。また、ユーザー、さまざまなデバイス、サービスの市場との間で、音声アシスタントおよびモバイルOSが担う仲介的な役割も懸念となっている。この場合の懸念は、プラットフォーム音声AIのオーナーが、ユーザーの関係性を管理することで、競合他社のIoTサービスが発見される可能性や可視性に影響を与える可能性があるという点である。

データへの(不平等な)アクセスに関連した懸念もある。調査の参加者は、プラットフォームと音声アシスタントのオペレーターが、ユーザーのデータに対して広範囲にアクセスできると述べた。これには、サードパーティーのスマートデバイスやコンシューマー向けのIoTサービスと通信した内容が、仲介的な音声AIを使用することで取得されてしまう可能性も含まれる。

委員会のプレスリリースには「セクター調査に協力した人々は、データへのアクセスと集積された膨大なデータにより、音声アシスタントを提供する側は、汎用音声アシスタントの改善や市場優位性に関連した利点を得られるだけでなく、関連する業界にも容易に応用することが可能になると考えている」と記されている。

第三者の業者が保有するデータを、Amazonが使用しているという点に関するEU独占禁止法の調査(現在進行中)にも、同じような懸念が表れている。このデータとは、Amazonが電子商取引マーケットプレイスから取得できるデータ(委員会によると、オンライン取引市場で競争を妨害する違法行為になり得ると考えられている)のことである。

その報告で注意が喚起されている別の懸念は、コンシューマー向けのIoTセクターにおける相互運用性の欠如である。「特に、音声アシスタントとOSを提供するひと握りのプロバイダーが、一方的に相互運用性と統合プロセスを管理しているため、自社のサービスと比較して、サードパーティーのスマートデバイスおよびコンシューマー向けのIoTサービスの機能を制限することが可能である」とのことである。

上記の点は特に驚くことではないだろう。しかし、該当する地域で音声アシスタントAIの普及率が低い現段階で、委員会が競争上のリスクに対処しようと努めており、採用できそうな対策を思案し始めているのは注目に値する。

委員会はこのプレスリリースで、音声アシスタントテクノロジーの使用率は世界的に高まっており、2020年から2024年で2倍になる(音声AIの数が42~84億個になる)との予想を発表している。とはいえ、Eurostat data(ユーロスタット・データ)の引用によれば、2020年の調査対象で、すでに音声アシスタントを使用したことがあるEU市民は11%のみであった。

EU委員会の立案者は、デジタル開発の現状に精通し、巨大テック企業の最初の波を抑制する上で、競争政策に関連する最近の失敗から学んだはずである。これらの巨大テック企業は、Amazon Alexa(アマゾンアレクサ)、Googleアシスタント、Apple(アップル)のSiri(シリ)を使って、現在の音声AI市場を間違いなく独占し続けるであろう。競争が脅かされていることは明白であり、過去の間違いを繰り返すことがないように、委員会は目を光らせている。

しかし、ユーザーが利用しやすいウェブサイト、プッシュボタン、ブランド化された利便性をUSPとしている音声AIに対して、政策立案者が競争に関する法整備にどう取り組んでいくのか、これから明らかになっていく点も多いだろう。

相互運用性を強制すると複雑になる可能性があるため、使いやすさという点では好ましくない。また、ユーザーデータのプライバシーなど、他の懸念が浮上する可能性もある。

コンシューマー向けのテクノロジーについてユーザーが意見を述べ、テクノロジーを管理できるようにするのは良いアイデアだが、少なくともまず、選択できるプラットフォームの在り方そのものが操作されるまた搾取されるものであってはならない。

IoTと競争に関する問題が数多くあるのは確かだか、独占プラットフォームがすべての基準をもう一度定めることがないように規制措置を事前に講じることができれば、スタートアップや小規模企業にもチャンスが訪れる可能性がある。

ベステガー氏は声明に対するコメントとして「このセクター調査を開始した時点では、このセクターでのゲートキーパーのリスクが新たに高まっているのではないかと懸念していました。大企業の持つ影響力により、新興ビジネスやコンシューマーに損害をもたらすほど競争が妨げられることを心配していました。現在発表されている最初の報告から、セクター内の多くの関係者が同じ懸念を抱いていることは明らかです。コンシューマーの毎日の生活において、モノのインターネットのすばらしい可能性を最大限に引き出すには、公平な競争が必要です。この分析結果は、今後の法案施行と規制措置に役立ちます。関係する利害関係者すべてから、今後何カ月間でさらにフィードバックを受け取ることを楽しみにしています」と述べた。

セクターごとの報告は、ここからすべて閲覧できる。

【更新】ベステガー氏は調査結果に関するスピーチで、いくつかの行為については、将来的に新たな競争防止違反の訴訟につながる可能性もあると述べた。しかし、そうなるのはまだ先のことであると彼女は強調し、委員会には「懸念の範囲を的確に把握する」必要があるとも述べた。

「これまでのセクター調査の結果により、異なるスマートデバイスとサービスをつなぐオペレーティングシステムと音声アシスタントの主な役割がはっきりしました。この役割により、オペレーティングシステムおよび音声アシスタントのプロバイダーが、競争にマイナスとなる影響を与える可能性があると、回答者は注意を喚起しています。EUでは、Googleアシスタント、Amazon Alexa、AppleのSiriが音声アシスタントの分野で優位に立っています。加えて、グーグル、アマゾン、アップルには、 スマートホームやウェアラブルデバイスのオペレーティングシステムがあり、それぞれデジタルサービスを提供し、スマートデバイスを生産しています」とも語った。

「異なるデバイスとサービスでの通信や相互運用性はほとんどの場合、このような企業に依存しています。加えて、音声アシスタントはユーザーについて多くのことを学習します。スマートデバイスとモノのインターネットサービスは、家にいる時のユーザーの活動に関する大量のデータを生成します」。

「データへのアクセス、ユーザーへのアクセス、切り替えの難しさなど、現時点で明らかになった課題の多くは、デジタルマーケットで法を施行する場合と同じような課題です。実際、デジタルマーケット法に関連して委員会が提案する命令事項および禁止事項について、調査機能によって数多くのケースが報告されています。現段階での事前調査結果と、今後何カ月かの取り組みにより、デジタルマーケット法の対象に関する討議に、セクター調査が寄与することは間違いありません」と付け加えた。

「競争の強化と補完的法的措置によって、すべての人が恩恵を受けられるデジタル経済を作り上げることが目標です。その目標を実現するには、コンシューマー向けのモノのインターネットを含むデジタルマーケットが、どんな規模のビジネスでも参入して成長できる場となり、コンシューマーにとってオープンかつ公平であるかどうかを確かめていく必要があります」。

【更新】委員会の報告に対して、Amazonから送られた声明は以下のとおりである。

スマートホーム分野においては、多くの企業による競争が激化しています。1社だけが勝者となることはなく、勝者となるべきでもありません。弊社では当初からのこの認識に基づいて、アレクサを設計しました。現時点で、アレクサには14万個以上のスマートホーム製品と互換性があるため、デバイスを生産する企業が独自の商品とアレクサを簡単に統合できます。また、1台のデバイスから複数の音声サービスにアクセスできるように、お客様が柔軟に選択できる取り組みとして、音声相互運用イニシアチブ(現在80社が参加中)にも出資しています。

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画像クレジット:Joby Sessions/T3 Magazine / Getty Images


【原文】

The European Union has been digging into the competition implications of AI-powered voice assistants and other Internet of Things (IoT) connected technologies for almost a year. Today it’s put out a first report discussing potential concerns that EU lawmakers say will help inform their wider digital policymaking in the coming years.

A major piece of EU legislation introduced at the back of last year is already set to apply ex ante regulations to so-called “gatekeeper” platforms operating in the region, with a list of business practice “dos and don’ts” for powerful, intermediating platforms being baked into the forthcoming pan-EU Digital Services Act.

But of course applications of technology don’t stand still. The bloc’s competition chief, Margrethe Vestager, has also had her eye on voice assistant AI technologies for a while — raising concerns about the challenges being posed for user choice as far back as 2019, when she said her department was “trying to figure out how access to data will change the marketplace”.

The Commission took a concrete step last July when it announced a sectoral inquiry to examine IoT competition concerns in detail.

It’s now published a preliminary report, based on polling more than 200 companies operating in consumer IoT product and services markets (in Europe, Asia and the U.S.) — and is soliciting further feedback on the findings (until September 1) ahead of a final report due in the first half of next year.

Among the main areas of potential competition concern it found are: Exclusivity and tying practices in relation to voice assistants and practices that limit the possibility to use different voice assistants on the same smart device; the intermediating role of voice assistants and mobile OSes between users and the wider device and services market — with the concern being this allows the owners of the platform voice AI to control user relationships, potentially impacting the discoverability and visibility of rival IoT services.

Another concern is around (unequal) access to data. Survey participants suggested that platform and voice assistant operators gain extensive access to user data — including capturing information on user interactions with third-party smart devices and consumer IoT services as a result of the intermediating voice AI.

“The respondents to the sector inquiry consider that this access to and accumulation of large amounts of data would not only give voice assistant providers advantages in relation to the improvement and market position of their general-purpose voice assistants, but also allow them to leverage more easily into adjacent markets,” the Commission writes in a press release.

A similar concern underlies an ongoing EU antitrust investigation into Amazon’s use of third-party merchants’ data which it obtains via its e-commerce marketplace (and which the Commission believes could be illegally distorting competition in online retail markets).

Lack of interoperability in the consumer IoT sector is another concern flagged in the report. “In particular, a few providers of voice assistants and operating systems are said to unilaterally control interoperability and integration processes and to be capable of limiting functionalities of third-party smart devices and consumer IoT services, compared to their own,” it says.

There’s nothing very surprising in the above list. But it’s noteworthy that the Commission is trying to get a handle on competitive risks — and start mulling potential remedies — at a point when the adoption of voice assistant AIs is still at a relatively early stage in the region.

In its press release, the Commission notes that usage of voice assistant tech is growing worldwide and expected to double between 2020 and 2024 (from 4.2 billion voice AIs to 8.4 billion) — although only 11% of EU citizens surveyed last year had already used a voice assistant, per cited Eurostat data.

EU lawmakers have certainly learned lessons from the recent failure of competition policy to keep up with digital developments and rein in a first wave of tech giants. And those giants of course continue to dominate the market for voice AIs now (Amazon with Alexa, Google with its eponymous Assistant and Apple’s Siri). So the risks for competition are crystal clear — and the Commission will be keen to avoid repeating the mistakes of the past.

Still, quite how policymakers could look to tackle competitive lock-in around voice AIs — whose USP tends to be their lazy-web, push-button and branded convenience for users — remains to be seen.

One option, enforcing interoperability, could increase complexity in a way that’s negative for usability — and may raise other concerns, such as around the privacy of user data.

Although giving users themselves more say and control over how the consumer tech they own works can certainly be a good idea, at least provided the platform’s presentation of choices isn’t itself manipulative and exploitative.

There are certainly plenty of pitfalls where IoT and competition are concerned — but also potential opportunities for startups and smaller players if proactive regulatory action can ensure that dominant platforms don’t get to set all the defaults once again.

Commenting in a statement, Vestager said: “When we launched this sector inquiry, we were concerned that there might be a risk of gatekeepers emerging in this sector. We were worried that they could use their power to harm competition, to the detriment of developing businesses and consumers. From the first results published today, it appears that many in the sector share our concerns. And fair competition is needed to make the most of the great potential of the Internet of Things for consumers in their daily lives. This analysis will feed into our future enforcement and regulatory action, so we look forward to receiving further feedback from all interested stakeholders in the coming months.”

The full sectoral report can be found here.

Update: In a speech discussing the findings, Vestager suggested some practices could lead to new competition cases being opened in the future, if confirmed. But she stressed that it’s still early, saying that the Commission still needs to “better understand the extent of the concerns”.

“So far, the results of the sector enquiry confirm the central role of operating systems and voice assistants in the interconnection of different smart devices and services. Respondents flag that this may give providers of operating systems and voice assistants opportunities to engage in behaviors that negatively affect competition,” she also said. “In the EU, Google Assistant, Amazon’s Alexa and Apple’s Siri are the leading voice assistants. In addition, Google, Amazon and Apple provide the main operating systems for smart home and wearable devices, they offer digital services and they manufacture smart devices.

“In practice, these companies determine how the different devices and services can communicate and inter-operate with one another. In addition, voice assistants learn a lot about their users. Smart devices and Internet of Things services generate a huge amount of data about what we do in our homes.”

“Many of the issues identified so far, such as access to data, access to users or barriers to switching, are familiar themes from our enforcement work in digital markets,” she added. “In fact, a number of the practices reported in the enquiry feature in the Do’s and Don’ts of the Commission’s proposal for the Digital Markets Act. With today’s preliminary findings and the future work to be done in the coming months, the sector enquiry will certainly contribute to the debate on the scope of the Digital Markets Act.

“Through competition enforcement and complementary legislative action, we aim at creating a digital economy that works for everyone. To do so, we must make sure that our digital markets, including the consumer Internet of Things, are open and fair for consumers, with room for businesses of all sizes to innovate and grow.”

Update: Amazon reached out to send the below statement, responding to the Commission’s report:

There is intense competition from many companies in the smart home sector. There will not, and should not, be one winner. We recognized this from the beginning and designed Alexa accordingly. Today, Alexa is compatible with over 140,000 smart home products, and we make it easy for device makers to integrate Alexa directly into their own products. We also founded the Voice Interoperability Initiative — now 80 companies strong — which is committed to giving customers the choice and flexibility to access multiple voice services on a single device.

 

(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

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COMMENTS


42862:
2021-06-22 05:44

さすがSiri. その通りすぎてしょんぼり( TДT)

42863:
2021-06-22 02:38

なるほど(笑) AlexaとSiriにも頼んでみよう(笑)? お米仕掛けるのと洗い物が面倒ですよねー?

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