コロナ禍も1年で成長路線に復帰–大塚商会が決算発表

今回は「コロナ禍も1年で成長路線に復帰–大塚商会が決算発表」についてご紹介します。

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 大塚商会が8月2日に発表した2021年度上期(2021年1~6月)の連結業績は、コロナ禍の厳しい中でも順調な回復ぶりを見せた。大塚裕司社長は、「リーマンショックの時は同水準に戻るまでに5年を要したが、今回は1年で成長路線に戻った。過去最高だった2019年度を上回りたい」とした。

 売上高は前年同期比7.8%増の4666億円、営業利益は9.7%増の332億円、経常利益は10.6%増の342億円、当期純利益は13.8%増の236億円だった。大塚氏は「オンラインを活用したフェアや商談、リアルとバーチャルの活動を組み合わせて顧客接点を確保し、厳しい環境でも着実に成長ができた。売上高と純利益はWindows 7のサポート終了時の買い替え需要があった2019年度上期実績を上回り過去最高を更新した。巡航速度に戻りつつある」と総括した。

 セグメント別連結売上高は、システムインテグレーション事業が7.3%増の3022億円、サービス&サポート事業が8.7%増の1630億円、複写機の販売台数は13.3%増の2万1533台(うちカラー複写機は14.1%増の2万1078台)、サーバーが3.3%減の1万3083台、PCが40.8%増の90万7975台、タブレットを含むクライアント合計では56.4%増の104万6028台だった。

 なお2021年4月~6月は、複写機が22.9%増の1万1697台と大きな伸びを見せた。だが、PCは20.1%減の21万5897台、クライアントでは17.7%減の23万2835台とマイナスになり、前年同期のテレワーク需要の反動などが影響した。一方で、マイクロソフト製品や自社ソフトウェアなどのパッケージソフトウェアが好調な売れ行きを見せ、4~6月はパッケージソフトウェアだけで約100億円の売上げ規模に達するなど、「ソフトウェアやネットワーク、セキュリティなど、PC本体以外の商材が組み合わさって成長を遂げている」(大塚氏)という。

 大塚商会の単体での業績は、売上高が9.9%増の4237億円、営業利益が10.3%増の295億円、経常利益が9.5%増の312億円、当期純利益が11.7%増の220億円だった。単体SI関連商品の売上高は11.2%増の2323億円、受託ソフトなどが5.8%増の283億円。サプライが9.4%増の924億円、保守などが7.9%増の805億円だった。第2四半期(2021年4月~6月)は全セグメントで2桁成長という。顧客企業の業種別売上げも全業種で増加した。

 連結子会社は、ネットワールドが前年同期比4.9%減の622億円と減少したが、市場の厳しさはあるもののハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)や新たなネットワークテクノロジーが中長期的には堅調と見ているという。

 重点戦略事業に位置付ける「たのめーる」の売上高は10.8%増の881億円、オリジナル統合業務ソフト製品の「SMILE」が5.3%増の61億円、ナレッジマネジメントシステムの「ODS」が6.9%増の293億円、セキュリティビジネスの「OSM」は21.6%増の491億円だった。2021年6月末時点の「たのめーる」の口座数は、6.0%増の178万9316口座だった。「コピー用紙の出荷トン数は戻っていないが、消毒液などの感染症対策商品、介護関連商品、工具、作業用品などの多彩な商品でカバーし、堅調である」(大塚氏)とした。また、サプライと保守契約を含むストックビジネスの売上高は前年比0.8%増の1570億円、構成比は37.1%となった。

 大塚商会から複写機を導入している1社当たりの商材数は4.30で、「取り扱いる商品が幅広く、オフィス丸ごと提案できる。だが、3分の2は1つの商品だけでのお付き合い。ワンストップソリューション、ワンストップサポートができる強みをもっと生かし、オフィス丸ごとの複合提案を進めたい」と大塚氏は述べた。

 コピー保守売上げの増加率は17.4%、システム保守は10.1%。「システム保守は安定的に成長し、コピー保守はコロナ禍の影響が一巡して回復が見られる。売上高はコピー保守の1に対してシステム保守は3.3倍。今後も安定成長の基盤として積み上げたい」と大塚氏。社員数は9340人で社員一人当たりの売上高は4996万円と、過去最高になった。

 今回の決算説明会見で大塚氏は、同社のクラウドおよびセキュリティに関する取り組みについて時間を割いた。これまでにも、ウェブサービス(ASP)に関する指標を公開しており、2021年度上期の実績は利用者数が前年同期から15万4000人増加して311万人になった。今回はそこから大きく踏み込みも、クラウドの売上高の2021年度上期は前年同期比21.7%増の148億円、セキュリティの売上高は21.6%増の491億円と初公開した。

 「セキュリティビジネスは25年の歴史で、2020年度売上実績が818億円。約9万社に提供している。トレンドマイクロやフォーティネットなどから18年や11年連続で優秀パートナーに表彰されている。2020年度のクラウド関連売上高は259億円。大塚商会全体では小さいが、業界内ではそれなりの規模。クラウドビジネスにも以前から取り組んでおり、業界の中では前を行っている」と強調した。

 大塚商会では、クラウドサービスとして提供している「たよれーるMicrosoft365」「たよれーるDropbox Business」「たよれーるAdobe CC」「Remote View」などで、各製品領域における国内トップの実績を持つという。

 2021年度(2021年1月~12月)の連結業績については、見通しを上方修正した。前回公表値に比べて売上高は160億円増の前年比5.3%増の8810億円、営業利益は12億円増の前年比5.3%増の593億円、経常利益は17億円増の前年比5.5%増の607億円、当期純利益は19億円増の前年比5.6%増の415億円とした。セグメント別売上高では、システムインテグレーション事業が前年比4.8%増の5520億円、サービス&サポート事業が6.2%増の3290億円を見込む。「上期の上振れ分を端数丸めて乗せた数字。緊急事態宣言が延長され、不透明な状況が続いており読みづらい。だが、公表計画に上乗せできるようにがんばりたい」と大塚氏は述べた。

 2021年度下期の方針では、引き続き「デジタル変革(DX)とドキュメントソリューションでお客さまに寄り添い、お客さまとともに成長する」を掲げる。オフィス丸ごとの提案を推進するほか、DXのさらなる推進、同社の経験やノウハウをもとにした具体的なドキュメントソリューションの展開、複数の人工知能(AI)を活用した顧客管理および営業支援システムである「大戦略II」の取り組み強化をあげた。

 「コロナ禍の不透明感は残るものの、今後景気は緩やかに回復すると見ている。また、行政や民間におけるデジタル化推進の動きや、テレワークの定着と新しい働き方への対応、AIやIoT、5G(第5世代移動体通信)などの市場が拡大している。厳しい状況だからこそ、生産性向上が必要であり、実際に年商10億円以下の企業の売上構成比が高まっている。業態変更や生産性向上などに関わる各種助成金も用意されており、企業のIT活用ニーズは底堅い」とした。

 大塚商会は2021年4月に、経済産業省指針に基づく「DX認定」を取得。大塚氏は「ノウハウを顧客と共有し、提供していきたい」とも述べた。

 会見では、ビッグデータとAI活用についても説明した。1998年に基幹系システムを整備し、2001年から顧客管理&営業支援システム「SPR」を稼働させ、基幹系データを統合した戦略的なデータ活用を行ってきた。これにより財務体質改善や生産性向上を実現。今では一般的にDXと言われる取り組みを、この時点で開始していたとも言える。

 2001年時点で47万件の商談データなどを活用して稼働させたSPRにより、営業活動の生産性向上が推進される一方で、2006年にはコールセンターシステムと連携して、顧客の声を反映し、サポート体制の改善にも着手。「ビッグデータを活用しながら、顧客の姿をしっかりとつかみ、打率を上げてきた」と振り返る。2000年の上場時点での売上明細の件数は月84万件だったが、2020年には月865万件と10倍に拡大。2001年には月4万件だった商談件数が、2020年には月27万件となり、約7倍に拡大し、これからのデータが全社で活用されている。

 現在活用のSPR2では、2020年に320万件の商談、1億件の売上明細を蓄積。2000年以降の累積データは商談数で4600万件、売上明細で11億5000万件に達しているという。大塚氏は、「こうしたデータがあるからこそ、AIが生きる」とコメント。営業活動などにAIを生かしていることを紹介した。

 AI提案による「AI商談」は、2019年8月~2021年6月までで15万件に達し、そのうち2021年度上期だけで7万4300件を占める。「営業対応率は2019年度下期に6.0%だったが、2021年度上期は31.5%で徐々に浸透している」とする。また、「営業担当が『あの顧客にはもう売れない』と思っていても、AIが気づきを与えたり、先入観がない判断を行ったり、顧客にとって最適な提案を行うことができる。AIが営業担当をサポートすることで、新たなニーズを知るといった学びにもつながっている。これが最終的にはオフィス丸ごとの提案につながっていくことになる。AIも商談結果を受けて、深層学習でさらに進化することになる」(大塚氏)という。

 2021年7月時点の社内のAI有資格者数は300人以上おり、「そのうち難易度の高いE資格取得者が21人、G検定取得者が324人在籍している。あるメーカーよりも大塚商会の方がAI人材は多い。これらの人材は社内で活用するだけでなく、社外にAIソリューションを販売する際にも活用していく」と述べた。

 AIソリューション事例として社内には、営業先や提案商材を推奨するAI商談のほか、iPhoneアプリによるAIアシスタント、コールセンターでの音声自動テキスト化、コールセンターでのやりとりをもとに顧客の感情を推定し、最適な対応が行える仕組みも導入する。これらの自社利用に基づく経験とノウハウをソリューションとして、中小企業でも導入できる価格で提供していくという。「中堅・中小企業のDX化は大塚商会の使命。そこにAIやビッグデータを活用した知見を生かす。電気、ガス、水道、大塚商会という存在になりたい」とした。

 さらに2021年10月には、横浜市に「横浜物流センター」を新設することを発表した。東京都板橋区の高島平物流センターや東京都大田区の東日本物流センターに続き、首都圏における第三の物流拠点として物流ネットワーク体制を強化し、「たのめーる」の受注量拡大に対応しいぇ地域密着型サービス展開の拡充、商品供給品質の向上を図る。

 横浜物流センターは、延べ床面積が5万3828平方メートルで、地上4階建ての全館LED照明および太陽光発電を採用する。国内最大規模となるロボットストレージシステム「オートストア」を2基導入、既存の物流センターと比較して保管効率は3.5倍以上になるほか、在庫配置の最適化に加えて、自動分析や解析機能などのAI、ビッグデータを活用し、出荷スピードの向上、物流生産性の向上、作業人員の省人化などを実現する。

 庫内には最新のマテリアルハンドリング設備を各種導入し、120台のロボットが稼働。デジタルピッキングシステム(DPS)のステーション数を、東日本物流センターの1.75倍となる28ステーションに拡張する。画像処理とデジタルチェックを組み合わせて商品知識などのスキルに頼らない作業環境を構築した。また、「シャトルラック」と呼ばれる高能力ケース荷ぞろえシステムによる配送引渡し待ちの一時保管や、コンベアーラインの渋滞を抑制して出荷スピードの向上も実現しているという。

 なお、大塚商会は、2021年7月に、創業60周年を迎えた。主な記念事業として、海外植林事業「たのくんの森」、米航空宇宙局(NASA)の技術と発電装置を活用することで災害時でもシャワーや手洗いが可能になる事業継続計画(BCP)対応商品を自治体に寄贈ことなどを予定しているという。

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