メタバースを利用する企業が知るべき基本的な事項–ガートナーが説明
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仮想空間技術のメタバースに期待する企業は、少なくないかもしれない。今後本格的に流行し身近な存在になるのか――ガートナー ジャパンが6月16~17日に開催した「アプリケーション・イノベーション & ビジネス・ソリューション サミット2022」では、米Gartner シニア ディレクター アナリストのAnthony Mullen氏が、メタバースに興味を持つ企業が知るべき基本的な事項を解説した。
Mullen氏は、まず消費者のメタバースの認知度を紹介した。Gartnerが2022年1月に実施した調査によると、「言葉を知っている」「聞いたことがある」人は6割以上だが、「言葉を知らない」「内容を知らない」人は73%に上った。また、「ある程度知っている」とした回答者(21%)の60%は、メタバースに対して「特に意見はない」と答えた。全体的に現在の消費者の多くは、メタバースにそれほど期待をしていない状況だという。
一方で、企業のビジネス幹部はメタバースの可能性におおむね楽観的な見解だという。メタバースでは、仮想現実(VR)や電子商取引(EC)、デジタル通貨、非代替性トークン(NFT)、オンラインショップやエンターテインメント、仮想オフィスといった多様な要素が絡み合い、それらによっていろいろなユースケースが考えられ、企業の期待値は高いそうだ。
現時点でメタバースの企業利用の成否を占うのは難しいが、Mullen氏は、メタバースが突然生まれたわけではなく、少なくとも企業がこれまでに取り組んでいるさまざまなデジタルのユースケースが連続的に変化したものだと指摘する。
例えば、ウェブブラウザーからアクセスするメタバースの空間に、アバターとなったユーザーへ企業を紹介するバーチャル看板あるいはバーチャルブースを設置したとする。それら自体は新しいが、ウェブブラウザー経由で企業を紹介する方法としては、既にウェブサイトがある。つまり、ウェブブラウザーで企業を紹介すること自体は昔から現在も続いており、その方法がウェブサイトからメタバース内の看板やブースに変化したというわけだ。
Mullen氏は、企業がこの点を理解しないままメタバースへ多額の投資や取り組みを進めてしまうと、いずれはメタバース空間と現実空間の双方で大きな技術的負債を抱えるだろうと予想する。企業は、これまでの取り組みの連続的な進化としてメタバースを位置付け、これまでの戦略と計画を基に、中長期的にメタバースを成功させていくための戦略と計画を持つことが重要になるという。
またMullen氏は、現実世界に生きる人々がメタバースの世界で長い時間を過ごすようにはならないとも指摘する。「25%の人が1日のうち1時間以上をメタバースに費やすとの調査があるが、人が使える時間全体が増えるわけでない。メタバースはあくまでチャネル(顧客接点)の1つに過ぎないと理解すべき」と述べ、その例にアパレルのBenettonを挙げた。Benettonは、メタバース内で顧客にゲームを提供し、ゲームで獲得したポイントを現実店舗で商品購入する際などに使えるようにしているという。
上述したようにメタバースには、さまざまなテクノロジーが絡み合う。メタバース内で人工知能(AI)のチャットボットが接客したり、VRゴーグルで3次元立体画像の商品を疑似体験したり、メタバース専用のデジタル通貨を使って商品購入を決済したりといったいろんなことができる。繰り返すが、メタバースを連続的変化だと理解して中長期的な戦略と計画を持たなければ、こうしたメタバースで活用するテクノロジーは、いずれ技術負債になってしまう。
そこでMullen氏は、現実世界のビジネスモデルを仮想世界のメタバースへと共通的に展開していくためのフレームワークの利用を勧める。これは「モノ」(現実あるいは仮想にある物体)、「環境」(イベントによりルールの影響を受ける場所)、「エージェント」(現実あるいは仮想の空間に存在する目標を持つ行為主体)があり、モノ、環境、エージェントの組み合わせによってモデルを整備し、適用していく。
また、こうしたモデルを検証、適用していく過程で相互運用性もテーマになってくるという。コンテンツがリッチになる過程で、環境をブラウザーベースからリッチコンテンツを生かす新型デバイスのようなものにどう対応させていくかといったことだ。Mullen氏は、企業が技術負債を抱え込まないために、モデルとそのシミュレーションが助けになると述べる。
加えて、「メタデータ」の活用が技術負債を回避する鍵になるとする。現実世界で利用するテクノロジーにメタデータを与え、W3CやOWL、RDFなどのデータ標準を活用してプラットフォームとし、メタバースと共通的に利用できるようにしていくという具合だ。
企業にとってメタバースは、顧客との関係性を深めるといったものにとどまらず、従業員同士やビジネスパートナーとの仮想コラボレーションワークの場になることも期待される。現状ではそうしたユースケース実現のための“実験場”と言え、Mullen氏はメタバースの基本理解を踏まえ、メタバースの期待を具現化していく実験に取り組んでほしいと述べている。