サステナビリティーの推進に「3D」と「体験」を活用–ダッソー・システムズ
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サステナビリティー(持続可能性)への関心が高まる中、設計ソフトウェア大手のダッソー・システムズは、近年戦略として掲げる「3Dエクスペリエンス」に基づくソリューションが、この領域でのさまざまなプロジェクトに活用されていると説明する。代表取締役社長のPhilippe Godbout氏に、サステナビリティー領域での取り組みなどを聞いた。
フランスが本拠の同社は1981年に創業し、3D CAD(3次元コンピューター設計)ソフトウェアの大手として、世界140以上の国や地域で事業を展開する。顧客数は製造業を中心に30万社を超える。Godbout氏は、25年前に入社し、2019年から日本法人のトップを務めている。
Godbout氏によると、サステナビリティーの観点で同社の3Dソリューションは、複雑な形状を持つ製品の設計を3Dのコンピューターグラフィック(3D CG)で効率的に実現することに始まったとする。これにより製品の詳細設計を検討するための立体模型の必要性が減り、模型部品の調達や作成などのコストが減少する。また、3D CGのデータを設計者やエンジニア、購入企業の担当者で共有することで、設計協議などのコラボレーションもより効率的になったとする。
2000年代は製品のライフサイクル全体に拡張し、製品の廃棄までを含めて環境負荷や廃棄ロスの低減、再資源化しやすい部材品の検討などが可能になった。こうした変遷を経て2012年に「3D EXPERIENCE」(3D体験)をコンセプトに掲げる。消費者など製品のエンドユーザーも含めるようになり、例えば、自動車の購入を検討する際にディーラーのショールームで3D CGを見ながら実車の様子を感じ取ったり、さまざまなカラーバリーションを試してみたりと、人間の「体験」を中心に据えた。
2020年からは、その進化形として「人のバーチャルツイン体験」を打ち出す。このプラットフォームでは、さまざまな立場の人々が3D CGやシミュレーションを通じて現実空間と仮想空間でコラボレーションし、「体験」を共有することで物事や目的の達成に向けた取り組みの推進をサポートするという。
サステナビリティーについてGodbout氏は、国家などの要請や法規制、循環型経済を実現するビジネスモデルの構築、カーボンニュートラルなどの環境的要請やそのための技術的といったさまざまな要因が重なり合うと指摘する。そうしたさまざまな要因に対する取り組みの相乗効果によって、サステナビリティーが推進されていくと述べる。
サステナビリティーでの事例として、モビリティースタートアップの米Canooは、ライドシェアのための自動運転の電気自動車をダッソーのプラットフォームで設計開発し、人間の効率的な移動と排気ガスの削減の両立を追求している。フランスのレンヌ市はエネルギー効率に優れる都市計画の策定でダッソーのプラットフォームを用い、例えば、街灯で使用する電力消費の変化を3Dソリューションで再現するなど、計画に携わる利害関係者がコラボレーションし、検討を重ねているという。ダッソーのプラットフォームでは、環境負荷の少ない部品といった製造設計にとどまらず、二酸化炭素排出量など外部情報とも連携可能だとしている。
サステナビリティーは非常に抽象的な概念であり、その取り組みでは、主に人間の経済活動に起因する環境負荷をいかに減らすかに焦点が当てられ、欧米での事例が目立つ印象だ。欧米での動きを受けて日本での取り組みも広まり始めている。
日本の現状についてGodbout氏は、個人的な見解としつつ、「現在の日本での取り組みは、欧米などの外的な影響を踏まえての対応に映るが、サステナビリティーを世界的にリードする立場になり得る可能性も秘めている。海外の規制を順守するといった受け身の姿勢ではなく、むしろ世界のイノベーションをけん引する気概を持つことが大切ではないだろうか」と述べている。