パナソニックが増収赤字–Blue Yonder事業に暗雲か、再成長の備えか
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パナソニックホールディングスは10月31日、2022年度上期(2022年4~9月)連結業績を発表した。法人顧客向けビジネス(BtoB)ソリューションやPC事業などを行うパナソニックコネクトの業績は、売上高が前年同期比22%増の5179億円の増収だったが、調整後営業利益は220億円減の96億円の赤字に転落した。また、第2四半期(2022年7~9月)業績は、売上高が同28%増の2731億円、調整後営業利益は56億円減の3億円の赤字で、いずれも増収赤字の決算となっている。
パナソニックホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループCFO(最高税務責任者)の梅田博和氏は、当期について「PCやスマートフォン分野の投資減速の影響を受けたプロセスオートメーション、東京五輪以降に需要が低迷した現場ソリューションが販売減だった。一方で、海外向けの堅牢なモバイル端末、航空市場回復によるアビオニクスの増販に加え、Blue Yonderの連結化の影響もあり増収だった。減益要因はBlue Yonder買収に伴う無形資産償却費などの影響」と説明した。
だが、今決算で気になるのが、サプライチェーンビジネスを行うBlue Yonderの失速ぶりだ。Blue Yonderの2022年度第2四半期の売上高は、前年同期比8%増の3億1000万ドルだったものの、一時費用などの影響でマイナス66億円を計上し、赤字決算となっている。
赤字決算の内容は無形資産償却などの影響が大きいが、それ以外にもマイナス要素が幾つか出ている。梅田氏は、「Blue Yonderの赤字は、買収に伴う無形資産償却費の計上などがある。無形資産の償却をドル換算するため、その影響額が大きい」と前置きしつつも、「景気の減速懸念に伴う顧客の投資判断の先送り、ドル高の影響も外部環境の悪化につながり、SaaS開発投資の加速も影響している」と語る。
さらに梅田氏は、ここに来てもう一段階の構造改革を進めていることも明かした。「赤字は再度経営体質を作り上げる一時的な構造改革費用が入っているのが理由だ。2022年7月に迎えた新CEO(Duncan Angove氏)の基で、強固な組織体制の確立、顧客体験の向上などの重点戦略を設定し、さらなる成長に向けた変革を推進している」とした。
Blue YonderのCEO(最高経営責任者)には、7月にInfor社長などを務めたAngove氏が就任し、8月の来日時には「これまでの経験の中心はイノベーションであり、Blue Yonderの変革をリードしていく」と述べていた。パナソニックホールディングス グループCEOの楠見雄規氏も、「サプライチェーン分野でパナソニックが唯一無二の会社になるためにも、Blue Yonderの発展は欠かせない。Angove氏に大きな期待をしている」と述べてた。
梅田氏は、「新CEOから見て、ネイティブSaaS事業の加速には、営業部門の質の転換が必要だと考えたようだ。また、新たな目で見ると、間接部門がダブついて見える。経営体質の強化に集中する方針を打ち出しており、今がタイミング」と語った。
その他にBlue Yonderに関する経営指標を見ると、SaaS ARR(Annual Recurring Revenue)は5億5200万ドル、リカーリング率は68.4%、SaaS売上比率は41.1%、SaaS NRR(Net Revenue Retention)は107%となっている。売上高やSaaS ARR、SaaS売上比率は上昇しており、Blue Yonderが目指すSaaSビジネスへの転換が進んでいるものの、リカーリング率は前年同期に比べて0.6ポイント減少し、SaaS NRRが12ポイント減少するなど、一部指標で減少が見られる。