ガートナーが提示した、日本企業が注目すべき2023年の技術トレンド

今回は「ガートナーが提示した、日本企業が注目すべき2023年の技術トレンド」についてご紹介します。

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 ガートナージャパンは10月31日から3日間、年次カンファレンス「Gartner IT Symposium/Xpo 2022」を3年ぶりにリアル会場で開催している。会期初日のプレスセミナーでは、バイスプレジデント アナリストの池田武史氏が、「2023年に向けて日本企業が押さえておくべき重要トレンド」を解説してくれた。

 2022年の後半は、数年に及ぶコロナ禍がもたらした混乱から徐々に脱出する動きが進み始めているが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻や世界的な物価の高騰、急速な円安など先行きの不透明さが増すばかりの状態が続いている。池田氏は、そうした中でも企業としてコストを削減し、ビジネスを成長させ、変革を推し進めなければならないと指摘する。そこで「最適化・拡張・開拓」の3つの観点から、日本企業が抑えていくべきという10のテクノロジートレンドを紹介した。

 まず「最適化」の観点で池田氏が提示したのは、「デジタル免疫システム」「オブザーバビリティの応用」「AI TRiSM」の3つになる。

 「デジタル免疫システム」とは、生物あるいは生態系が持つ免疫、問題に対する自己修復の仕組みにならい、ビジネスに活用して持続性を確保するものとなる。同社の調査では、デジタル組織が売り上げの創出に責任を負うという割合が76%に上り、デジタルサービスがビジネスに直結する事態が進みつつある。

 池田氏によれば、デジタル免疫システムを実現するテクノロジーには、オブザーバビリティー(可観測性)やAI(人工知能)拡張型テスト、カオスエンジニアリング、SRE(サイト信頼性エンジニアリング)、アプリケーションのサプライチェーンにおけるセキュリティ対策などがある。企業がこれらのテクノロジーを活用すれば、ダウンタイムを80%削減できるとガートナーでは分析している。

 「オブザーバビリティの応用」は、これまでシステムの安定稼働などに役立てていたシステムの各種情報をビジネスの観点からも評価、活用していくアプローチになる。具体的には、サイト利用者の体験(UX)などが挙げられるものの、池田氏はドライバーの運転動作を安全性などの点から監視、分析している米Teslaや、環境負荷の抑制に船舶の航行データなどを利用しているノルウェーの海運会社Klavenessを例に挙げた。

 「AI TRiSM」とは、「AI Trust, Risk and Security Management(AIの信頼性/リスク/セキュリティマネジメント)」を総称する造語で、AIの利用に付随するセキュリティやプライバシー、倫理などのリスクに対応して、AIへの信頼を高めるべき取り組みになる。その実現にさまざまな試行が続けられているが、AIが出力した結果に対して数学的に説明可能なモデルを導入している欧州のAIスタートアップ企業Abzuなどの例があるという。

 次に「拡張」の観点では、「インダストリークラウドプラットフォーム」「プラットフォームエンジニアリング」「ワイヤレスの高付加価値化」を挙げた。

 「インダストリークラウドプラットフォーム」とは、特定領域に特化したクラウド基盤であり既にさまざまな業界に特化したサービスが出てきている。池田氏は「ITシステムを統合するクラウドの活用が進む一方で、ビジネスの価値にまで踏み込んだクラウドの活用はこれから」と解説する。業界内で個々の組織が差別化あるいは優位性を手にしようとする場合、業界内で共通して使われる機能や役割などはインダストリークラウドプラットフォームで提供されるものを利用して、個々の組織は付加価値の創出にリソースを活用していく。

 「プラットフォームエンジニアリング」は、上述のインダストリークラウドプラットフォームを効果的に活用するためのものになるという。デジタルの仕組みは複雑なアーキテクチャーを伴い、オンプレミス/クラウドの複雑な構成で、それを使いこなすスキル(人材)も不足している。このため、再利用可能な部品やツール、セルフサービスなどを具備するプラットフォームエンジニアリングを整備することにより、組織はデジタルの取り組みをより高速かつ効率的に展開していけるようになる。

 「ワイヤレスの高付加価値化」は、無線を単なる情報伝送だけでなく、さまざまな価値を伴うように利用していくことを指す。最近では、現実空間の情報をサイバー空間に投影して現実空間に存在する課題の解決を図るような「デジタルツイン」や「サイバーフィジカルシステム」といった概念が提唱されている。池田氏は、有線もあるが、やはり空間において情報を転送する無線の価値は大きく、無線は場所やセンシング、電源、インテリジェンスなどをさまざまな要素を伝えることができる。無線には、4G/5GやWi-Fi、Bluetoothなど多様な規格があり、それぞれにユースケースも多様だが、組織は求める価値に応じて使用する無線を見直すことも肝心だとする。

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