中国大手ネット企業出身の外注社員と、その理不尽すぎる境遇とは
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かつて中国の花形業界だったインターネット企業で、近年、大規模なリストラが進んでいる。事業の縮小に伴い、正社員を外部委託の労働力に置き換える動きが活発になっている。これまで高い給与を受け取っていた大手ネット企業の社員たちは次々と職を失い、外部委託のスタッフとして働くケースが増えているという。
2021年、曾さん(仮名)は動画サービス「Bilibili」(ビリビリ)の運営会社で外注スタッフとして勤務していた。当初、曾さんの所属していたチームには外注スタッフはごくわずかで、約10人のチームメンバー中2人だけだった。
しかし、2022年に入ると組織の規模が3回にわたって縮小され、社員の3割が解雇された。曾さんのチームでも正社員が大幅に減少したが、外注スタッフ2人はその職を維持し、残った1人の正社員と共にチームの業務を継続した。その後、曾さんのチームは他の部門に統合された。
曾さんは、ビリビリでは外注スタッフの割合が増加しており、現在の部門では外部スタッフが全体の約半分を占めていると推測している。また、他の企業でも同様に外注スタッフの比率が急増しているという報告もある。
中国がゼロコロナ政策を推進していた2021年には、阿里巴巴(アリババ)や騰訊(テンセント)、字節跳動(バイトダンス)のリストラが頻繁に話題に上がった。公開された決算報告からは、アリババ、テンセント、バイトダンスなどの大企業は、過去1年で数万人規模の正規従業員を削減したことが見えてくる。
2021年当時、中国の主要なネット企業に就職したある人物は次のように振り返っている。「2021年に故郷を離れ、深センへと移り住んだ時、私は大手ネット企業に入社する最後の機会をつかみました。面接は思いのほか簡単で、必要なスキルさえあればすぐに採用されました。ここでは学歴や経験年数は重視されず、通勤バスや食事の福利厚生が整っていました。しかし、入社して半年も経たないうちに、外部委託の社員向けの福利厚生は終了してしまいました」
外注社員は、正社員から指示されたタスクをこなすものの、プロジェクト全体の概要を把握することなく業務を行うことが多い。この状況に満足できず、正社員への昇格を望む外注社員も存在するが、企業の方針により昇進は難しいのが現実だ。実際に、2022年初めからは、大企業を中心に外注社員の離職が加速している。ネット企業に限らず、不動産、金融、自動車、家電製造業界などでも、アウトソーシングの採用とその最適化が進んでいる。特に2022年上半期には、大手ネット企業の外注社員の退職者数が増加していることが人材派遣会社のレポートで明らかになっている。
もっとも、全ての産業や職種で仕事がないわけではない。実際、特定の分野では仕事の需要が高まっている。新エネルギー、医療、国際ビジネス、ゲーム産業など、安定して成長している業界では、引き続き人材を求めており、コスト削減のために優秀な外部スタッフを探している。しかし、ネットや銀行のように人材があふれている業界や、フロントエンド、Java、テスト、開発、運用といった特定の職種では、仕事を見つけるのが難しくなっている。
人材派遣会社は、特に武漢、西安、南京などの大都市に多数存在している。これらの企業は、大手ネット企業をはじめとするさまざまな業界で働く外注社員を提供している。派遣先を退職後に新しい職を見つけられない場合、これらの社員は通常、最低賃金で契約している人材派遣企業に戻ることになる。そして、新たな職を求めて他の会社に履歴書を提出するプロセスが開始される。待機期間が長くなるにつれて、従業員は次第に冷遇されはじめ、中国の人材派遣会社が採用する厳しい手法により、自主退職を余儀なくされることになる。
その手法は、例えば東京での勤務を契約した後に、交通や生活の便が悪い郊外や離島に通勤させ、不満があれば自己退職させるというものだ。この状況を経験した人々は、インターネット上で「労働者の墓場」と表現し、多くの議論を呼んでいる。
ある人材派遣会社が、解雇したい社員に対して、深セン市内の宝安区から、70km東に位置する恵州市の境界近くにあるオフィスに通勤を強いた事例がある。この分室は待機部屋のようなもので、社員は監視カメラのもとでコードを手書きで複写するという作業を命じられた。当然、怠けていれば解雇だ。しかし、契約書の勤務地には「深セン市内」とあるだけので、契約違反ではないという。
内陸に位置する古都、西安の中心部にある人材派遣会社は、従業員の解雇を目的として、市内の山間部にある村落へと事務所を移転した。移転先へは車でのアクセスが可能だが、公共交通機関を利用する場合は、バスで終点の山村まで行き、そこから3kmの山道を徒歩で30分ほど歩かなければならない。このオフィスは2階建ての建物の上階に位置し、10数人の従業員が働いており、下階では地元の家族が生活している。トイレの設備も不十分で、食事の場所もなく、従業員はパンやインスタントラーメンに頼るしかなかった。最終的には全員が退職し、その後会社は西安市内のビジネス地区へと再び移転した。
かつて中国では、大手ネット企業で働くことが羨望の的だったが、今ではそのような企業で働いていたエンジニアも予期せぬ状況を経験している。外資系企業は、中国の規制を順守する必要があるため、倫理的な面で再評価されている。