横河とNTT Com、熟練者に学んだAIによるプラント自動運転に成功
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横河ソリューションサービス(横河)とNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は1月30日、プラントの熟練運転者のノウハウを学んだ人工知能(AI)でプラントの24時間自動運転を行う実証実験に成功したと発表した。2月から「AIプラント運転支援ソリューション」としてサービスを販売することにしている。
この実証では、JNC石油化学の市原製造所(千葉県市原市)で、プラントの各種センターから取得したデータと運転員の過去の操作履歴をAIが模倣学習し、AIによるプラントの自動運転の効果を検証した。2社は、運転員の確保や技能伝承に関する問題解決を目的に、2017年から協業しており、2022年4月には最適な運転方法のガイダンスを使って運転員による手動運転を支援する「ガイダンス機能」を開発。今回はこれらの成果を基にAIによる自動運転の有効性を検証したものになる。
同日記者会見したNTT Comによると、化学業界では、海外メーカーが安価な原材料と大規模設備で汎用(はんよう)品の大量生産し市場を席巻しており、対する国内メーカーは市場ニーズに応じた高機能製品を変種変量生産している。生産状況の変化が大きいなどの理由から、これまで自動運転が難しく手動生産を行っているものの、運転品質が安定しないことや熟練運転員の技能の伝承に年月を要することが課題になっているという。
このため2社は、熟練運転員の操作履歴を学習して自動運転を行うAI技術「オートパイロット」を開発。プラントの状態に応じた熟練運転員の操作方法に従ってAIが運転を模倣することにより、運転品質を安定化させて余分な原材料や燃料などの消費を抑制したり、海外展開を含む運転員育成の短期化などを図ったりできるとする。
同社スマートファクトリー推進室 担当部長の伊藤浩二氏によれば、オートパイロットのメリットは運転効率化、人の観測に適合した操作性、属人性の排除、高頻度運転の4つで、デメリットは、新しい最適な運転方法をAIが自律的に発見できないことと、未知の状況に対応するには運転者が追加でAIに教える必要があることの2点。「今回開発したAIは人と協働することが最大の特徴」(伊藤氏)という。
プラント運転の高い安全性と安定した運転の継続性を高めるために、オートパイロットでは工場の担当者とAIの動作保証範囲を定義しているとのこと。AIの自動運転時に保証範囲から外れる恐れがあると、即時に運転員へ通知を行い手動運転に切り替える。保証範囲に復帰可能な場合は、運転員が確認と判断を行ってAIによる自動運転に切り替えられるようになっている。
また、プラント設備の稼働状況は、変種変量生産や季節性、経年、修理などのさまざまな要因で頻繁に変動するといい、オートパイロットではAIが毎分ごとに自動で再学習を行い、過去の運転履歴から現在の稼働状況に合致する運転方法を見つけて適用し、運転の継続を可能にしている。
オートパイロットの実証実験は2022年12月に行われ、JNC石油化学の市原製造所のある生産工程の設備を対象としてオートパイロットのシステムを現場に構築。ローカル環境において、実験前の6カ月間ほどの運転データをAIに学習させ、まず運転者が5日間の手動運転を実施し、その後オートパイロットで24時間の自動運転を実施。その後再び運転者が6日間の手動運転を実施して、プラント運転の目標値に対する達成度とばらつきを手動運転と自動運転で比較した。
その結果、目標達成度は自動運転時が0.134、自動運転前の手動運転時が0.200、自動運転後の手動運転時で0.274と、自動運転の改善効果としては事前の手動運転より33%、事後の手動運転よりも51%高い効果が見られた。ばらつきは、自動運転時が0.166、自動運転前の手動運転時が0.205、自動運転後の手動運転時が0.230で、事前の手動運転より19%、事後の手動運転よりも28%高い効果が得られた。
実証結果で有効性が認められたことから2社は、共同で「AIプラント運転支援ソリューション」を企画開発し、2月から横河が販売提供する。料金などは調整中だが、「年額500~700万円程度が目標」(NTT Com)とのこと。既に6社で先行導入の準備が進んでいるといい、1年後に数十社への販売を見込んでいる。
NTT Comの伊藤氏は、「今回開発したAI技術は、設備運転の安定化によるコスト削減と熟練者の技能継承を支援するもので、化学にとどまらず農業など同様の課題を抱えるさまざま産業分野に展開できるものと期待している」と述べている。