ソフトバンクG、数億のAIエージェント導入を構想–OpenAIと企業向けAIで新事業
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ソフトバンクグループと米OpenAIは2月3日、日本の大企業向けにAIソリューションを開発、提供する新会社「SB OpenAI Japan」を合弁で設立すると発表した。両社らでこのためのAI基盤「Cristal intelligence」を開発し、顧客ごとにカスタマイズして提供していく。ソフトバンクグループ 代表取締役 会長兼社長執行役員の孫正義氏は、同社グループで数億規模のAIエージェントを展開し、グループ各社のビジネスを変革したいと表明した。
SB OpenAI Japanは、OpenAIとソフトバンクグループおよびソフトバンクが新設する中間持株会社が50%ずつ出資する。ソフトバンクグループ各社などから1000人体制の専任セールスエンジニアを構成。日本の大企業顧客を対象として、Cristal intelligenceと顧客企業の各種業務システムの接続、ビジネスデータの蓄積や一元化、AIエージェントなどのアプリケーションの開発、展開、運用などを一手に引き受ける。孫氏は、「まず1業種1社の利用から募りたい」と述べた。
同日の発表会には、国内上場企業全ての時価総額の半分を占めるという500社の経営層や経営幹部が招待された。発表会の冒頭であいさつしたソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO(最高経営責任者)の宮川潤一氏は、「AIは汎用(はんよう)人工知能(AGI)への進化の途上にある。AIは業務を補助する存在からAIエージェントになり業務を自律的に行っていく。企業経営者はこの未来を見据えて積極的に対応しなければならない。生成AIとAIエージェントがもたらす企業変革の戦略を構想いただきたい」と語った。
宮川氏に続いて登壇した孫氏は、米国時間1月21日にDonald Trump米大統領らと発表したAIインフラ事業「Stargate Project」を踏まえて、「100年、200年、300年先の人類につながるプロジェクトになるだろう。2024年にAGIが10年以内に達成されるとしたが、数年以内と訂正したい。AGIはまず企業で実現する。あらゆる人類に万能なAGIの実現には時間を要するが、大企業に限れば、そこには良質で膨大なデータが存在し、そのデータを学習、推論しインテリジェンスを獲得できる」と切り出した。
さらに、「AIエージェントは人間に代わり24時間働き続けることができ、AIエージェント同士が協働していく。だが、これには膨大な資金やリソースが必要。それができるのは大企業になる。そこで、世界初のこの取り組みを日本の大企業から開始したい」と語った。
AIエージェントは、2024年後半からITベンダー各社が次々に機能や製品、サービスの展開を推進している状況にある。多種多様なものが登場しているが、企業や組織のビジネスデータを学習、活用しながら一定水準のタスクを自律的、自動的に実行するテクノロジーになる。
孫氏は、この取り組みの中核とするCristal intelligenceについて、現在の生成AI開発で主流となる強化学習関連や、同氏が「長期記憶」と呼ぶ巨大なデータの蓄積・学習などを担う基盤に関する同社が2015年に取得した3件の特許技術を活用していると説明。ユーザー組織があらゆるビジネスデータをCristal intelligenceの長期記憶に蓄積しておくことで、多様なAIエージェントがデータを活用して協調動作をしながら、自律的、自動的にさまざまな作業を実行し、意思決定を行うようになり、人間はより生産的、付加価値の高い業務に注力できるとした。
さらに孫氏は、ソフトバンクグループ傘下の各社で2500にもなるという業務システムの全てのソースコードやビジネスにまつわるあらゆるデータをCristal intelligenceに学習させ、グループ全体でAIエージェントベースの業務環境を構築、整備していくと宣言。このために新設のSB OpenAI Japanへ年間で30億ドル(約4500億円)の開発・運用費を支払うと説明した。
孫氏は、ソフトバンクグループが先行してノウハウや実績を獲得することで、それを大企業に提案できるとする。「われわれの規模の投資ができる企業が10社あれば、それだけで(SB OpenAI Japanの売上は)年間4兆5000億円になる。世界の大企業が利用すれば、数十兆円という規模になり、(協業する)OpenAIも収益を上げることができる」などとした。
孫氏によれば、Cristal intelligenceの取り組みはStargate Projectの延長線上にあるとのこと。Stargate Projectでは、AIデータセンターを米国で設立、運用する方針だが、SB OpenAI Japanが提供するCristal intelligenceは国内に用意するデータセンターで運用し、ユーザー組織のビジネスデータなどを国内に保存した状態で活用できるようにするという。同氏は、ユーザー組織のデータを他のユーザーと共有したり、Cristal intelligenceでの学習に利用したりすることは一切ないと強調し、AIデータのソブリン(主権)を日本で確保するとした。
発表会に登壇したOpenAI CEOのSam Altman氏は、「AIエージェントがデジタルアシスタントになり、ユーザーを理解しアクションしていく」とコメント。2024年9月にリリースした「OpenAI o1」モデルや直近で新たに提供を開始した「OpenAI o3」「OpenAI o3-mini」、また同日に発表した「deep research」などが、高度なAIエージェントのベースになっていくと説明した。
同じく登壇した英Arm CEOのRene Haas氏は、今後あらゆる企業や組織で無数のAIエージェントが実行される世界では、これまで以上に電力が消費されることが課題になるとした上で、電力効率と低消費電力に優れるArmの半導体設計技術がエネルギー課題の解決に寄与するとアピールした。
発表会の後半では、孫氏とAltman氏が対談し、AIの将来や可能性などを語り合った。孫氏は、高度なAIエージェントを実現した先には、例えば、ソフトバンクグループ傘下の各社に数億規模のAIエージェントを配備して各社の顧客対応を担ったり、各社を横断したサービスを提供したりできるとだろうとコメント。なお、AIエージェント単体では小規模だとし、数億規模で運用してもエネルギー消費がそれほど大規模にはならないとの見方を示した。