人的資本経営を主導すべきなのは誰か
今回は「人的資本経営を主導すべきなのは誰か」についてご紹介します。
関連ワード (松岡功の一言もの申す、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営の在り方を指す「人的資本経営」という言葉が注目されている。人材の話なので人事部門の役回りに受け取れるが、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上でも重要なキーワードになりそうだ。ならば、人的資本経営を主導すべきなのは誰なのか。
日本オラクルが先頃、「人的資本経営を実現するクラウド・アプリケーションの最新動向」と題してオンラインで記者説明会を開いた。説明に立ったのは、常務執行役員クラウド・アプリケーション事業統括の善浪広行氏とクラウド・アプリケーション事業統括ソリューション・エンジニアリング事業本部HCMソリューション部 部長の矢部正光氏。従って、人材管理をはじめとしたHCMの話が中心になるとみられた(写真1)。
同社が提供するソリューションを中心とした会見内容については速報記事をご覧いただくとして、会見の冒頭で「今後の人的資本経営に求められること」について説明した善浪氏の話が興味深かったので、ここではその内容を取り上げたい。
同氏は企業における経営と人材の関係について、過去から現在、そして今後についての象徴的な在りようを図1に示した。高度経済成長期の過去においては「終身雇用」や「年功序列」が前提で、つまりは「企業と人(従業員)が一体となっていた時代」(善浪氏)だった。現在は企業が「働き方改革」や「成果主義」に取り組むようになり、人材も流動するようになってきた。経営サイドが従業員エクスペリエンスの向上へ動き始めたところでもある。
今後はどうなるか。善浪氏は「企業のパーパス(存在意義)に基づいてそれぞれの事業と従業員がどう動いていけばよいのか。従業員エクスペリエンスをどう深化させていくか。そうしたことを考えていく上でこれから不可欠なのは、経営戦略と人事戦略を密接に連動させることだ。それが人的資本経営として目指すべき企業価値向上につながる」との見解を示した。
同氏は、職務内容に応じて人材を起用する「ジョブ型」の人事制度についても、「人的資本経営を進める上でジョブ型を適用するメリットは相応にあるが、一方で今後は社会全体として人の流動性が高まってくる可能性が高いので、経営サイドは従業員と職務について話す際に、社内だけでなく社外の動きも見据えていかなければならなくなるだろう」と話した。これはつまり、今後はジョブ型が発端となって人材の市場価値の情報が社外でもやりとりされるようになり、従業員は自らの市場価値に応じて企業と「対等」にやりとりできるようになることを意味している。こうした点を踏まえておくのも人的資本経営の新しい姿ではないかと、同氏の話を聞いて感じた。
ちなみに、善浪氏は経営戦略と人事戦略を連動させる同社のアプリケーションとして、図2を示した。見ての通り、HCMだけではない経営に関わるソリューションが全て対象となっている。同氏は、「当社は人的資本経営を支える包括的な仕組みを提供することができる」とアピールしていた。
こうした説明を聞いて、筆者の頭の中で素朴な疑問が浮かんだ。「経営戦略と人事戦略を連動させないといけない人的資本経営を主導すべきなのは、いったい誰なのか」と。