DXの浸透と定着化–全社的かつ継続的な取り組みとするために
今回は「DXの浸透と定着化–全社的かつ継続的な取り組みとするために」についてご紹介します。
関連ワード (デジタルジャーニーの歩き方、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
「DXジャーニーマップ」の最後のフェーズがデジタルトランスフォーメーション(DX)の浸透と定着化です。DXが一過性の取り組みに終わることなく、全社的な取り組みとして定着化するためには、会社全体の仕組みがデジタルを前提に組み立てられ、全従業員の行動も変容することが求められます。DXの定着化は、1つのゴールであると同時に、終わりのない長い旅路の一里塚ともいえます。
前回までは6回にわたって「DX推進のための環境整備」について述べてきました。今回からは、DXジャーニーマップの最後のフェーズである「DXの浸透と定着化」について解説していきます。
企業内の環境整備によってDXを円滑に推進するための社内環境が整ったとしても、それを持続させるためには、デジタルの時代に即した新しいやり方や考え方をしっかりと社内に定着させなければなりません。デジタル化した業務プロセスや変革した制度などが、社内に浸透せず「先祖返り現象」を起こしてしまうことを避けるためです。
DXの環境整備で新たに設定された制度や権限などの新しい社内ルールは公式に明文化され、それに即した運用がなされている状態を保つようにモニタリングしていく必要があります。また、新しい仕事の進め方やルールを業務プロセスや情報システムに組み込むことで、「仕組み化」することが推奨されます。業務プロセスや情報システムに組み込んでしまえば簡単に元に戻ることはありません。
DX推進のために組織体制を整えたり、人材を確保・育成したりしたとしても、それが一度限りの対応にとどまっていたのでは環境変化に適応していくことはできません。働き方、社内のコミュニケーションの在り方、意思決定のメカニズム、指揮命令系統などの組織マネジメントの考え方といった企業のあらゆる枠組みを再考し、デジタルの時代に適合するものへと継続的に変革していくことが求められます。
DXによって実現した新しい方式や取り組みが会社の仕組みとして、誰もが意識することなく運用されるよう、企業の枠組みだけでなく、従業員一人一人の意識や行動様式も変容しなければなりません。目指す姿は、新しい方式や取り組みが通常の仕組みとして意識することなく運用されており、その仕組みをビジネス環境の変化に応じて柔軟に適応させていける状態です(図1)。
DXが浸透・定着化した企業とは、どのような姿となっていることを意味するのでしょうか。DXのジャーニー(旅路)に終わりがあるわけではなく、企業はビジネス環境の変化に適応し続けるために継続的に変革を推進していかなければなりません。また、業種やそれぞれの企業が掲げるビジョンによって、DXの先に目指す姿やゴールは異なります。
ここでは、デジタルの時代での生き残りをかけて、先駆的にDXを推進して企業が共通して実現しようとしている企業像を鑑みて、その要件を考えていきます。詳しくはこれから5回にわたって順に述べていきますが、元の状態に先祖返りすることなく、DXの活動や新しい取組みが全社に広がり、その成果が維持されるためには以下に示す5つの要件が必要となります(図2)。