多様性とバランスの経営で最高業績を更新したA10 ネットワークス
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米A10 Networksは、2022年の売上高が前年比12.1%増の2億8000万ドル、EBITDAが同26.8%増の7500万ドルで過去最高業績となった。売上高は2年連続、EBITDAは3年連続の2桁成長で、特にコロナ禍で大きく伸長している。1年ぶりに来日した社長兼最高経営責任者(CEO)のDhrupad Trivedi氏に好業績の要因などを尋ねた。
Trivedi氏は2019年12月に就任した。直後に新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が始まり、企業ビジネスのオンライン化に伴うネットワーク投資が拡大するなど、IT産業全体としても好況だったが、コロナ禍の規制緩和が進み出した2022年下期はその反動で景気が後退し、大手IT各社の大規模な経営再建が相次ぐ。その状況下で同社の好業績の要因は、「多様性とバランスを重んじ、お客さまの要請に柔軟に応じてきた」とTrivedi氏は述べる。
同社は、創業から初期にコスト性能に優れたアプリケーション配信コントローラー(ADC)で急成長し、次に分散型サービス妨害(DDoS)攻撃対策を中心としたセキュリティ分野にも展開して、市場での存在感を確立した。顧客構成は通信事業者を含むサービスプロバイダーが65%、大手中心の企業が35%で、地域別では北米市場が50%強ながら約30%を日本市場が占める。おおむね10%程度とされる外資ITベンダーの中では、特異な存在でもある。
「われわれは、安全で高い可用性とパフォーマンスの価値を顧客に提供することで、顧客のデジタル体験とビジネスの成功に寄与することをミッションにしている。オンプレミスとクラウド、マルチクラウドへの展開と5Gなどの高速のネットワークインフラへ継続的に取り組んできた」(Trivedi氏)といい、これにより顧客数が7000社を超え、製品収益率も20%向上しているという。
Trivedi氏は、同社が競合優位性を発揮する部分として、セキュリティ・可用性・低遅延(高スループット)を両立させた一貫性ある製品アーキテクチャー、機械学習技術を駆使したセキュリティ脅威への対応と防御、CAPEX(初期投資)とOPEX(運用費)を柔軟に組み合わせられる提供モデル――を挙げる。
昨今の企業や組織のITインフラは、オンプレミスやプライベートクラウド、複数のパブリッククラウドを組み合わせる複雑な様相にあり、ネットワークとしての性能と安定性、セキュリティをバランスさせることが難しい。Trivedi氏は、製品面でこれらを担保しつつ、特に顧客需要が高まるセキュリティ領域への研究開発投資の強化と、顧客に密着したテクニカルサポートによって、複雑な顧客の要件に対応していると述べる。
「例えば、大手広告配信企業では、多額のクラウドインフラコストを抑制しつつ、TLS 1.3やHTTP/2などの新しいセキュリティやネットワークの技術要件に対応しなければならず、われわれのソリューションを採用いただいた」(Trivedi氏)
また国内では、埼玉県北本市が2022年春に同社の「A10 Thunder CFW」を採用したとのこと。自治体ITインフラの「三層分離モデル」に対応しつつ、業務効率化でSaaSも活用していくために同製品でローカルブレイクアウトを実現させているという。
CAPEX(買い切り)とOPEX(実使用ベース)を柔軟にできるとする提供モデルは、2023年前半現在の経済情勢では、顧客の選択肢を広げるとして評価を得ているという。例えば、モバイル通信事業者は5G関連サービスの展開において慎重な投資判断に迫られているが、「OPEXモデルも選べることができれば、(5Gサービスなどの)加入者の拡大ペースに合わせて投資を最適化していける」とTrivedi氏はメリットを挙げる。
OPEXにフォーカスした提供モデルについては、特にサーバーベンダーなどが注力しており、収益構造の変革にまで踏み切る動きも見られる。しかしTrivedi氏は、同社としてそうした動きはとらず、「顧客が必要に応じて選択できる方法とバランスを保つことが重要」とした。
2023年の戦略方針は、ITインフラ領域とセキュリティ領域の両面で、上述の3つの競合優位性を維持向上させていく。ITインフラ領域では、7月にコンテンツ配信ネットワークのFastlyとの協業で、ADCとウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)を統合した「A10 Next-Gen WAF, Powered by Fastly」を投入する。運用に高度なノウハウが必要でマネージドサービスの利用が多いWAFをハイブリッドクラウド環境で利用できるようにするという。セキュリティ領域では、巧妙化・高度化するDDoS攻撃などの脅威への対応をさらに強化していくという。
また日本市場のビジネスは、コロナ禍にあっても堅調な成長を続けているとのこと。バイスプレジデントで日本法人代表を兼務する川口亨氏は、「お客さまへのサポートをリモートで行う機会が増えるなどの変化があった程度で、サービスプロバイダーと大手企業のお客さまそれぞれのご要望に応えていることが持続的な当社の成長につながっている」と述べる。
Trivedi氏に、さらなる業績拡大に向けた施策として、買収・合併などの方針を尋ねると、「当社の戦略にかない、お客さまの価値にかない、当社の製品アーキテクチャーにかなうテクノロジーであるかどうか判断している。セキュリティやネットワーク監視など当社のコア(安全性、可用性、高性能)に資することが重要」と述べるにとどめ、堅実経営に徹する姿勢を印象づけた。