創造的な挑戦を促進する組織カルチャー–DXが定着した企業の要件(その4)

今回は「創造的な挑戦を促進する組織カルチャー–DXが定着した企業の要件(その4)」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 DXジャーニーは終わりのない長い旅路ですので、常に挑戦し続けなければなりません。新しいことに挑戦するためには、リスクの捉え方にも変革が求められます。誰もが自由に創造的な活動を行え、失敗から学ぶことができる組織カルチャーが重要です。

 前回は、デジタルトランスフォーメーション(DX)が定着した企業の5つの要件の3つ目の要素として「多様な人材と柔軟な組織運営」を挙げました。今回は、これに続いて「創造的な挑戦を促進する組織カルチャー」について考えていきます。

 DXを企業戦略の中核に位置づけ、永続的な活動として誰もが自分事として取り組んでいくためには、創造的な挑戦を促進する組織カルチャーを根づかせなければなりません。それには、リスクに対する考え方にも変革が求められます。従来の企業では、ほとんどのプロジェクトは成功させなければならないと考え、一つ一つの案件を個別にリスク評価します。そのために綿密な計画を立て、実現性や効果について事前に十分に審議します。

 もちろん、計画時点でリスク要因を考慮しますが、それは失敗するリスクを最小限に抑えるためです。そのため、往々にして不確実性が高い領域にはチャレンジせず、リスクが大きそうなプロジェクトは実施しないという判断が下されます。結果として、経験豊富な既存事業の近傍領域に集中投資する傾向が強まります。

 しかし、不確実性の高いビジネス環境で、新しい取り組みにチャレンジするには、行動するリスクと行動しないリスクとを比較し、ポートフォリオで管理しなければなりません。ポートフォリオ管理とは、一つ一つの案件を個別に評価するのではなく、その集合でのバランスを考慮に入れて検討し、合理的な取捨選択や優先順位を導き出して、最適な意思決定を図るマネジメント手法のことです(図1)。

 従って、成功するプロジェクトは全体の2割、失敗するものは8割などと想定して、飛び地を含めた多岐にわたる未知の領域に分散投資することもあります。従来のビジネスと一見無関係な領域で新規事業を立ち上げたり、M&A(合併買収)によって取得したりすることが有効となる場合もあります。全く異なる分野で成長する場合もあるでしょうし、後に既存事業とつながってくることもあります。

 デジタルの世界では、たくさん種をまくことも有効な選択肢となります。不確実要素の多いDX施策では失敗は珍しくありませんので、失敗を許容することも重要です。失敗を恐れて何も行動しないというのでは本末転倒です。また、失敗したらマイナスの人事評価が下されたり、次のチャレンジをさせてもらえなかったりといった風潮では誰もチャレンジしなくなってしまいます。失敗したら、その失敗から早く立ち直り、それを元に学習すれば良いのです。

 DXの推進では、経営者のトップダウンや推進担当者のリーダーシップも重要ですが、DXへの取り組みが活発化してくると、現場の従業員一人一人の草の根的な活動がより重要になってきます。予測が困難で一つの正解がない時代には、多様な人材が多彩なアイデアを出し、素早く挑戦し、数多く失敗することが学びとなり、成功につながるからです。

 誰もがテクノロジーの価値と可能性を理解した上で、デジタル技術の活用を前提にビジネスや業務の在り方を考え、新たなビジネスを創出したり、業務を抜本的に変革したりしていくためには、全従業員が日常の業務に埋没することなく、新たな価値の創出のために何らかの行動を起こせることが大切です。そして、それは誰かからの指示や命令によってではなく、自発的に行われることが望ましいといえます。

 このような創造的な活動を自由に行うことができ、経営者や周囲の人たちからも支持され、協力を得ることができ、そしてそのような活動の成果が称賛されるような組織カルチャーを持つことが求められます。創造的な活動への動機づけが促され、また、チャレンジの成果が適正に評価されるだけでなく、貢献に見合った報奨や賞賛が与えられることも重要です。また、それを実現するためには、自分で時間をコントロールする権限、予算を執行できる権限、組織や人的リソースを動かす権限などが、一定の範囲内で委譲されている必要があります(図2)。

 GoogleやAmazonのようなデジタルネイティブ企業は、まさにこれを実践しています。例えば、Googleの社員が業務時間の2割を個人的にやりたい仕事に充てることができる「20%ルール」は有名です。

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