建設・建築業の半数以上が人材問題に直面–手形や現金の取引根強く、効率化が急務

今回は「建設・建築業の半数以上が人材問題に直面–手形や現金の取引根強く、効率化が急務」についてご紹介します。

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 アメリカン・エキスプレス・インターナショナルは6月15日、「建設・建築業界における企業間決済調査」の結果を発表した。建設・建築業界の直面する課題として半数以上が人に関する問題を挙げており、人材不足や高齢化の現状が明らかになった。

 現在、物流をはじめとするさまざまな業界で“2024年問題”と呼ばれる労働環境の改善が急務となっている。建設・建築業界もそうした業界の一つと言われており、今回の調査は同業界のバックオフィス、特に経理業務の実態を捉えることを目的にオンラインで実施された。建設・建築業界の経営層や経理・決済業務に従事する300人以上が対象で、期間は4月21~24日。

 まず、建設・建築業で直面している全体の課題として挙げられたのは、「人材不足」(51.8%)や「労働人口の高齢化」(38.5%)で、人材にまつわる問題が顕著だった。

 人材不足が課題となっている企業では、専門のバックオフィス部門や担当を置いていない場合も多かった。経理業務に関わる業務時間は、月間平均で約107時間だった。請求業務では、在庫確認や見積もりの作成といった受発注処理業務に12.8時間、請求書の準備に11.6時間かかっていたほか、支払いに関しては新規取引審査や経営状況の把握に10.5時間かかっていた。人材不足の中でも毎月、経理業務に人員を割かなければならない状況が明らかとなった。

 効率化したい決済方法を聞いたところ、「銀行振込」(49.2%)、「現金」(42.7%)、「手形・小切手」(32.7%)の順で回答が寄せられた。それぞれの決済方法を効率化したい主な理由としては、「ミスを減らしたい」という属人的な作業によるリスクのほか、「面倒だから」や「別の業務に専念できるようになるから」といった業務効率が挙げられた。

 建設・建築業における主な取引先との決済方法については、請求/支払いのいずれも銀行振込が8割以上と、最も多く利用されていることが明らかになった。さらに、現金(請求43.0%/支払い62.5%)、口座振替(請求23.3%/支払い47.6%)、手形・小切手(請求26.5%/支払い41.4%)、クレジットカード(請求14.9%/支払い30.7%)と続き、決済方法が多様化している様子もうかがえるとした。また、全体のうちクレジットカードの利用は、請求で14.9%、支払いで30.7%と、支払い時の利用が2倍となっていることも分かった。

 また、決済方法を選択する理由として、銀行振込は「いつもこの方法だから」(51.6%)が最も多く、手形・小切手(44.8%)、現金(37.3%)では「取引先にこの決済方法を求められるから」が主な回答だった。このことから、企業が積極的に決済手段を選択できる状況にはないことが明らかとなった。

 一方で、口座振替(37.5%)とクレジットカード決済(38.2%)については、選択理由として「手間が少ないから」が最も多く、本来は効率的な手段を優先して選択したいという意向もうかがえたとしている。

 企業は用途や場面に応じて支払い方法を分けている様子も明らかとなった。例えば、毎月発生する通信費(57.9%)や水道光熱費(57.9%)には口座振替、待交際費(64.7%)や宿泊・出張代(53.4%)には現金、ガソリン代や電子料金収受システム(ETC)といった荷造運賃(36.6%)にはクレジットカードといった具合だ。仕入れ代(17.5%)や機材・設備費(9.1%)など、主に高額な取引には手形・小切手が利用されていた。

 請求時に関わる課題としては、キャッシュフロー管理が最も多く挙げられた。特に、長期的な支払い期間によるキャッシュフローへの影響(39.5%)や、不透明なコミュニケーションによる支払い遅延(ツケ払い、30.4%)といった入金までの期間に関する不満が多く挙がった。支払い時においても、資金不足に対する不安(47.2%)が2番目に多い回答として寄せられたことから、キャッシュフロー管理が請求/支払いに共通する課題となっていることが明らかとなった。

 調査では、請求から代金回収にかかる平均日数についても聞いており、最短で18.3日、最長で43.6日との回答が多く寄せられた。なお、クレジットカード請求も利用している回答者は、最短10.1日、最長19.1日だった。同社は「最長の場合、半分の日数で代金回収が可能となる」といい、「クレジットカード請求が支払い期間や支払い遅延の不安解消につながる」とアピールした。

 支払い時の決済方法として、58.3%がクレジットカードを利用したいと回答しており、現状(30.7%)の約2倍だった。クレジットカード決済を既に利用している回答者にメリットを聞くと、「ポイントが貯まる」(34.7%)や「振込手数料を減らせる」(32.6%)といった点が寄せられた。また、「効率化される」(29.5%)、「与信審査が不要になる」(13.7%)もメリットとして挙がった。

 取引先への請求時にクレジットカード決済を受け入れたい回答者は44.3%で、既に受け入れを開始している回答者は、そうでない場合と比べて、「新規の取引先を獲得できる」(28.3%)、「与信確認が不要になる」(28.3%)、「コンプライアンス対策になる」(21.7%)といった決済業務以上のメリットを実感していることが明らかとなった。

 アメリカン・エキスプレスは、建設・建築業界で同社の中小企業向けビジネスカードの利用が拡大しているとし、業界に特化した専門知識を持つコンサルティングチームが経費管理や経理業務の効率化を支援していくとしている。

 また、建設資材のメーカーや資材の調達や販売をする商社を加盟店とすることで、出張・接待交際費、ガソリン代、ETCによる高速道路料金、国税、広告費のほか、高額支払いとなる建設機械や木材・建材、住設機器、電材などの仕入れにも利用でき、支出の集約と管理が可能になるとのこと。

 なお、15日に開かれた説明会では、スパイダープラス 代表取締役社長で最高経営責任者(CEO)の伊藤謙自氏、スマートガバナンス 代表取締役共同創業者で弁護士の落合孝文氏、アメリカン・エキスプレス・インターナショナル カード事業部門 セールス&マーケティング 副社長の谷川美紀氏によるパネルディスカッションも行われ、調査の内容を交えながら建設・建築業界の状況について議論した。

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