生成AIがDX推進の起爆剤に–PwC Japan、「2023年 AI予測調査 日本版」

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 PwC Japanグループは6月15日、「2023年 AI予測調査 日本版」の調査結果を基に、日本企業のAI活用に関するトレンドと生成AIが日本企業の与えるインパクトを説明した。同調査から、日本は米国と比べてAI活用が遅れている一方、生成AIの活用意欲は高いことが明らかになった。

 同調査は、日本のAI導入済みまたは導入検討中で、売上高500億円以上の企業の部長職以上の331人と、米国のAI導入済みまたは導入検討中で、売上高5億米ドル以上の企業の幹部1014人を対象に3月に行われた。

 同調査によると、「全社的にAIを導入」または「一部の業務でAIを導入」している日本企業は合計で50%。2022年に行った同様の調査では53%だったことから、日本企業のAI活用に進捗(しんちょく)が見られない結果になった(図1)。一方で、米国は55%から72%と、17ポイント上昇した。

 日本と米国でこれほどまでに差が出てしまった要因について、PwCコンサルティング 上席執行役員 パートナー 兼 PwC Japanグループ データ&アナリティクス/AI Lab リーダーの藤川琢哉氏は、新型コロナウイルス感染症に対する政策の違いではないかと指摘。2022年において日本では緩やかな行動制限を講じた一方、米国では早々に敷いたロックダウンを解除し、早期の経済回復を図った。これにより、経済の流れが活発化し、AIに対する投資も早まったのではないかという。

 また、他社とのデータ連携の取り組みでも顕著な差が見られた。データ連携を実施している企業は、日本の21%に対し米国では60%だった。さらに、経営者の意思決定において、外部環境の変化を把握するための材料として「さまざまな外部データを取得し、重要な意思決定にはフル活用している」企業は、日本が15%で米国が44%。日本企業における外部データの活用は「一部の経営意思決定において、限定的な外部データを取得し、活用している」(日本:40%、米国:37%)との回答が最も多かった。

 米国では非財務情報の活用も進んでおり、非財務情報をダッシュボードなどで可視化し、AIで分析している企業は日本が8%、米国は56%だった。日本では、非財務情報の可視化と把握が35%で最も多く、非財務情報を手作業で集計している企業が25%、非財務情報を開示していないのが18%だった(図2)。

 この結果を踏まえて藤川氏は、日本企業にとって、自社だけのデータを活用するのは閉鎖的であるとし、他社とのデータ流通や外部データの活用を積極的に進め、閉塞(へいそく)感のあるAI活用の道を開くべきだと提起した。また、非財務情報に関してもコンプライアンスのための開示目的の可視化にとどまらず、相関分析や長期シミュレーションなどのAI活用で、将来的な企業価値につながる非財務情報への投資を行うべきだとした。

 次に、日本企業においてAI活用が停滞している背景を説明。AIへの投資について、過去1年間でどの程度期待に添ったものだったかを「より良い顧客体験の創出」や「より効果的な業務運営と生産性の向上」などの項目別に質問。これに対して、「ROI(投資利益率)を得ている」と回答した日本企業は全ての分野において3割未満にとどまった(図3)。この結果から、日本はAIによるビジネス効果が思うように出ておらず、AIへのさらなる投資に踏み切れなくなっているのではないかと藤川氏は見解を述べた。

 加えて、「稼働後のAIモデルの性能が低下し、想定していたビジネス効果がでないケースがある」という日本企業は43%に上る。これに対して同氏は「運用フェーズこそAIの価値を最大化する最も重要なフェーズである。機械学習の運用(MLOps)環境を整備して、AIによるビジネス効果を継続的に創出すべきだ」という。

 AIに対する課題についても調査している。2022年の調査では、日本においてAI関連の課題で最優先事項は「AI戦略の設定」と回答した企業が最も多かったが、2023年では「AIリスクの管理」と回答した企業が6%(2022年)から33%(2023年)に急増。しかし、米国と比べてAIリスクへのガバナンス施策に取り組む日本企業は十分とは言えない(図4)。

 藤川氏は、「AIガバナンスに取り組み、安心してAIを活用できる環境を作ることで人材の獲得や企業イメージの向上にもつながる。AIガバナンスを、AI活用を進めるドライバーと捉え、戦略的に推進すべきだ」とした。

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