順天堂大学と日本IBM、「ぬくもり」感じる面会アプリを開発–メタバース上で入院患者と会話
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順天堂大学と日本IBMは7月25日、メタバース上で入院患者との面会ができるメタバース面会アプリ「Medical Meetup」を開発したと発表した。同日に行われた説明会では、同アプリの紹介とデモンストレーションが行われた。
順天堂大学と日本IBMは、2022年4月に「メディカル・メタバース共同研究講座」を設置し、メタバース技術の活用による新たな医療サービスの研究と開発に取り組んでいる。これまで、順天堂大学医学部附属順天堂医院(順天堂医院)を模した「順天堂バーチャルホスピタル」を作成し、バーチャルで病院を体験したり、治療の疑似体験ができたりするサービスを提供してきた。
今回発表したMedical Meetupは、患者の満足度の向上や医療従事者の働き方改革を目指して開発された。同アプリでは、入院患者と面会者のアバターがリゾート施設などを模した仮想的な非日常空間で会話をしたり、乗り物での移動、ハイタッチなどで擬似的に触れ合えたりと、通常の面会の枠を超えた体験ができる。
同アプリは7月31日に「Apple Store」で一般配信を開始する。順天堂医院 副院長/順天堂大学大学院 医学研究科 膠原病・リウマチ内科学の山路健教授は開発背景について、「患者さんと病院外の方が、さまざまな制限や制約を乗り越え、実際に対面で会わなくても“ぬくもり”のある面会を実現したい」と説明した。
入院患者にとって家族や親しい人との面会は、ストレスの軽減や癒やしを与え、病気に立ち向かう力にもつながるほど重要だという。しかし、がんなどの高度な医療を受けるために入院していると容易に面会ができなかったり、感染症の流行などで面会の制限を受けたりする。また、身支度や装いなどの気遣い、時間的な制約で面会が難しいケースが少なくないという。
ほかにも、電話やオンライン面会は気軽に使えるコミュニケーションツールとして利用されているが、山路教授は「やはり対面のようなぬくもりが欠ける」と語る。同アプリを利用することで、非日常感への没入とアバターでの会話や触れ合いにより、患者の面会を「より気軽に」「よりリラックスして」「より“ぬくもり”あるものに」できるのではないかという。「多様なニーズに合わせた面会の提供やストレスの軽減、最終的には病気に立ち向かう力の向上につなげていきたい」(山路教授)
同アプリの特徴として、点滴を受けているなどで腕の動作に制限がある患者向けに、アバターを操作するコントローラーの位置を自身でカスタマイズできる機能を搭載し、患者や医療従事者にとっての使いやすさを考慮したデザインになっているという。
8月から10月まで、順天堂医院小児医療センターにおいて同アプリのパイロット運用・臨床研究を行う。入院している小児患者と家族に利用してもらうことで、使いやすさや運用方法を確認し、患者にとって有益なアプリの開発につなげるという。
順天堂大学大学院 医学研究科 小児思春期発達・病態学の藤村純也准教授によると、同センターに入院する患者は特に面会の制約があり、保護者以外の面会が難しく、兄弟や学友に会いにくい状態にあるという。また、自由な外出も難しい。しかし、同アプリを用いることで、メタバース上で兄弟や学友、入院するほかの患者とのコミュニケーションの機会を創出できるとしている。
運用検証の終了後、同センターでは同アプリを用いて学友やほかの患者との遠足を検討しているという。メタバース空間はリゾート空間以外にもフィールドを設け、例えば現実にある空間をはじめ、宇宙や海の中などにも拡大していくとしている。また、同センターの入院患者を対象に、入院中のメンタルケアに有効かを検証する研究を推進する予定だ。
両者は今後、“ぬくもり”のある面会体験を多くの医療機関に提供し、各施設の希少疾患や同じ境遇の患者・家族同士が交流できるようにする。また、講演会や遠隔診療など、健康・医療のあらゆるメタバースサービスが提供できるプラットフォームにしていきたいとしている。