セールスフォースが満を持して生成AIを自社製品に組み込む理由
今回は「セールスフォースが満を持して生成AIを自社製品に組み込む理由」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、松岡功の一言もの申す等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
米Salesforceが自社のクラウドアプリケーションにジェネレーティブAI(以下、生成AI)を組み込む環境の整備に注力している。エンタープライズアプリケーションベンダー大手はどこも同様の動きを見せているが、Salesforceについては「満を持して」との印象が強い。その理由と共に、今後のエンタープライズアプリケーション市場の行方を探ってみる。
セールスフォース・ジャパン 代表取締役会長 兼 社長の小出伸一氏は、同社が先頃開いた新サービスに関する記者説明会で、生成AIについてこう表現した。会見の内容は速報記事をご覧いただくとして、ここではその中から同社の生成AIの取り組みについて自信満々に語った小出氏の話に注目したい(写真1)。
「Salesforceは創業以来、CRM(顧客関係管理システム)を提供してきたが、生成AIはそのCRMの在り方も変え、企業と顧客の接点に革命をもたらすと考えている。当社のAIの歴史は、最近始まったわけではなく、『Salesforce Einstein』(以下、Einstein)というCRM向けAIを2016年から提供しており、今日まで開発と改善を重ねてきた。EinsteinはSalesforceのクラウド製品全体にネイティブに組み込まれており、既に当社のお客さまはEinsteinを通じてAIを活用している」
小出氏は図1を示しながらこう説明し、さらに次のように強調した。
「実際、Einsteinは週に1兆回以上の予測処理をお客さまに提供している。また、SalesforceではAIの研究者やデータエンジニアといった人材にも投資してきており、現在までに227件のAI関連研究論文を発表し、300件のAI関連特許を取得している。こうしたことから、AIを活用したCRMでは、Salesforceの右に出る企業はないと自負している。そして、さらに私たちは今、『予測AIから生成AIへ』と移行している」
「予測AIから生成AIへ」とは、最近のAIの進化を端的に表現したものといえよう。同氏はその上で、次のようにも述べた。
「生成AIは、企業に新たなイノベーションをもたらすものだ。生産性をはじめ、ビジネスモデル、顧客体験、ツールとスキル、製品戦略などを新しい形に変革する力を持っている。より高い生産性を実現し、今日のビジネス環境に対するレジリエンスを高めていくためにも、企業は今こそAIを中心にした経営戦略を考える必要がある」
では、Salesforceは自社のクラウド製品に生成AIをどのように組み入れるのか。小出氏は図2を示しながら、次のように説明した。
「Salesforceは多くの企業に生成AIを提供していくために、今年3月以降、当社のクラウド製品に順次組み込んでいくことを明言している。例えば、『Sales GPT』は見込み客に送るための電子メールを生成して、営業担当者がお客さまと直接やりとりする時間をより多くとれるように支援するといった具合いだ」
図2に記された同社のクラウド製品に組み込まれた生成AIによって、具体的にどんなことができるかについては発表資料を参照いただきたい。
さらに、Salesforceは2023年6月に、生成AI、データ、アナリティクス、オートメーションといった機能を統合した「AI Cloud」を発表。信頼性の高いエンタープライズ向け生成AIとしてアピールしていく構えだ。
このように生成AIの取り組みを説明した小出氏は最後に、「私たちはお客さまのビジネスに最もインパクトを与えるところにAIを提供することで、お客さまがその先のお客さまをより理解し、つながりを深められるように支援していきたい」との意気込みを語った。
こうした小出氏の一連の説明を聞いた筆者は、Salesforceが生成AIの取り組みについて、これまでの実績を基に満を持して臨んでいるとの印象を強く持った次第である。