ジョブ型人事制度にもの申す–新入社員や経営者をどう育成するのか

今回は「ジョブ型人事制度にもの申す–新入社員や経営者をどう育成するのか」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営、松岡功の一言もの申す等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上で効果的な人事制度である「ジョブ型」を導入する動きが活発化している。人材を適材適所でなく「適所適材」で生かそうという施策だが、筆者は2つの疑問を抱いている。それは、ジョブ型人事制度で「新入社員をどう育成するのか」、さらに「経営者をどう育成するのか」だ。そんな疑問に対し、興味深い導入事例を見つけたので、その内容を踏まえて考察してみたい。

 ジョブ型人事制度とは、ジョブ(職務)内容を明確にした雇用形態と、それに基づく採用、人材配置、評価の仕組みのことを指す。雇用形態として注目されがちだが、この制度の導入は、「今いる人材で何ができるか」という従来のメンバーシップ型の発想から、「事業戦略を遂行するためにどんな人材が必要か」という考え方への、人的資本と組織の在り方に対する戦略的アプローチの転換を意味する。

 また、メンバーシップ型は人が会社に就く「就社型」、ジョブ型は職務に人を就ける「就職型」とも言われる。ただし、前者は新卒採用で能力やスキルがなくても教育を施して終身雇用を前提とするが、後者は職務遂行に対する能力やスキルで評価され、それらが足りないと判断されれば解雇もあり得る。さらに、前者は労働時間で管理されるが、後者は時間に関係なく成果で評価されることも重要なポイントである。

 DXの観点からも、DXはすなわちビジネスおよびマネジネントの変革を指すことから、高いスキルが求められるジョブ型とは相性が良い。

 筆者もジョブ型の導入は企業変革を進める上で有意義だと考えるが、先にも触れたように「新入社員」および「経営者」の育成に関する視点が抜け落ちているケースが多いのが、かねて気になっていた。この点については取材も重ねてきたつもりだが、これまでピンと来る導入事例に出会う機会はなかった。

 そんな折、興味深い事例を見つけた。群馬銀行が先頃、「2024年6月からジョブ型人事制度を導入」すると発表した中での新制度の内容がそれだ。制度改定のポイントとして、次の3つを挙げている。

 1つ目は、「総合的視野・専門的視野を持つ人材の複線的な育成」だ。管理職としての「マネージャー職群」と専門人材としての「スペシャリスト職群」を同列に設定し、複線型の多様なキャリア形成を支援する制度に転換する。職務記述書を作成し、職務内容を明確に定義するとともに、行内開示することで仕事の見える化を図り、将来のキャリアをイメージしやすい仕組みとする。

 2つ目は、「年齢にとらわれない実力に応じた適所適材のポスト登用」だ。年功的な要素の強い資格体系を廃止。職責に応じた4つの職群に集約し、階層のフラット化や一部の職位を廃止することで管理職登用を早め、年齢にとらわれず能力・意欲の高い者を柔軟に登用できる仕組みとする。

 3つ目は、「職務価値(担当業務の難易度・深度)に応じた適正な処遇」だ。資格に応じた給与を廃止し、管理監督者の給与は職務記述書に基づく「職務価値」に応じた「職務給」のみとしてジョブ型の処遇を実現する。隔地転勤の有無により給与差のあった2つのコースを「総合職」に統合し、職務配置や育成に柔軟性を持たせ、多様な分野での活躍機会を提供する。

 図1が、現行制度から新制度への変化、新制度での4つの職群の内容を示したものである。

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