アリババクラウド、日本でDXラボ開設–参画企業とのイノベーション図る
今回は「アリババクラウド、日本でDXラボ開設–参画企業とのイノベーション図る」についてご紹介します。
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アリババクラウドは8月29日、DXプロセスの加速に向けたプログラム「アリババクラウドDXラボ」を発足したと発表した。同プログラムは、小売や物流などの分野に特化し、エコシステムに参画する企業とともに、産業ソリューションの共同開発に取り組む。
アリババクラウドは、消費者向けEC「天猫」やオンライン決済サービス「Alipay」など、幅広い事業を展開するアリババグループを技術面で支援する企業。
同グループは毎年11月11日の「独身の日」、ECイベント「天猫ダブルイレブン・ショッピングフェスティバル」(W11)を中国で開催しており、2020年における期間中の流通総額は約7.7兆円、オーダー数は毎秒58.3万個に上った。アリババクラウドはW11の運営も支えており、期間中トラフィックが通常時の約122倍になる中、レスポンスへの影響を防いだほか、1日約70億回のサイバー攻撃を防御したという。
アリババクラウドDXラボにおいて同社は、アリババグループやエコシステムの企業が有するDXや顧客体験(CX)の変革に関する経験、それを支えるノウハウやソリューション事例を共有する。また、エコシステム企業間におけるコラボレーションを推進し、DXなどの社会実装を目指すとしている。
同ラボ設立の背景について、同日開催の説明会に登壇したアリババクラウド・ジャパンサービスでカントリーマネージャーを務めるUnique Song(ユニーク・ソン)氏は「当社は長年、パートナー企業と共に日本市場で事業を展開してきた。これまで獲得してきたノウハウや経験を生かしたいと思った」と説明した。
初期のプログラムメンバーとして、東急不動産やアパレル大手のTSIホールディングスなどが参画する。またテクノロジーパートナーとして、ゲーム開発スタジオのJP GAMES、韓国のライブコマース大手LaLa Station、ブロックチェーンサービスを手掛けるAvalancheやCloud Naviなども参画し、技術リソースや専門知識を提供する。
同プログラムでは、アリババクラウドとテクノロジーパートナーがクラウドコンピューティングやAIサービスなど幅広いテクノロジーを提供し、プログラムメンバーのサービス向上を図る。プログラムメンバーとテクノロジーパートナーはネットワーキングイベントやテクノロジー研修を通して定期的に交流し、業界のトレンドを共有する。
プログラムメンバーのTSIホールディングスは、アリババクラウドDXラボの取り組み第1弾として、アリババクラウドのスマート物流ソリューションを導入し、国内外におけるサプライチェーンのデジタル化を図る。
TSIホールディングスは「JILL STUART」「MARGARET HOWELL」など52ブランドを展開する企業。同社は、二酸化炭素(CO2)の排出量削減やトラックドライバーの時間外労働時間の上限を960時間に短縮することで生じる諸問題「2024年問題」に加え、物流コストの削減、配送リードタイムの短縮などに対応することが求められている。
アパレル業界の物流は、生産拠点から当期在庫が在庫型物流センター(DC)を経て店舗やECへ配送され、返品された当期在庫は過年度在庫としてアウトレットモールなどで再販する(図1)。TSIホールディングスは、波動(物流の波)が最も大きい「生産物流」(生産拠点~DC間)を改善することにした。
これまでは世界各地のサプライヤーが商品を製作し、1カ所の国内DCに一括して送っていた。拠点を1カ所にまとめているのは、「人が全ての業務を担う」という前提では在庫を一元管理しやすいという理由がある。しかし、(1)在庫が集中してスペースが逼迫(ひっぱく)する、(2)1つの拠点に対し、多くのスタッフを集めるのが困難、(3)効率化が進まず、コストが増加する――といった課題がある。
そこでTSIホールディングスは、1カ所のDCで管理する体制を見直し、サプライヤーは世界各地の通過型物流センター(TC)に商品を配送。TCは、現地の販売会社に直送したり、国内クロスドック(商品を仕分けして配送する拠点)を経て店舗に送ったりする体制を構想(図2)。これにより1~3の課題が改善すると期待される。
拠点の分散に当たり同社は、アリババクラウドの倉庫管理システム(WMS)を導入することで、在庫状況をリアルタイムに把握し、データに基づいて意思決定することを図る。同システムには、アリババグループ傘下の物流企業であるツァイニャオ・ロジスティクスのスマートロジスティクス技術を活用している。
TSIホールディングスは、2023年3月に中国・上海と付随する国内のクロスドック倉庫でWMSを展開。同年11月に予定しているベトナムの倉庫をはじめ、今後も複数の物流拠点に展開することを計画している。同社は2025年までに、生産総量の30%に分散型の体制を適用することを目指している。
TSIホールディングス 執行役員 プラットフォーム本部 副本部長の渡辺啓之氏は「物流DXの本質は“お客さまへどのようにモノを届けるべきか”ということ。お客さまの利便性向上に向けて、生産物流だけでなく販売物流にもしっかり取り組まなければいけない」と語った。