全銀システム障害の復旧に時間がかかったのはなぜか–NTTデータG・本間社長に聞いてみた
今回は「全銀システム障害の復旧に時間がかかったのはなぜか–NTTデータG・本間社長に聞いてみた」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
10月に発生した銀行間送金システム「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」の障害は、復旧までに2日間を要した。なぜ、そんなに時間がかかったのか。そこに、今後のデジタル社会に影を落とす根本的な問題があるのではないか。そんな疑問を、全銀システムの構築・運用に携わるNTTデータグループ(NTTデータG) 代表取締役社長の本間洋氏に、同社の記者会見でぶつけてみた。
「10月10、11日に全銀システムで不具合が発生し、預金者の皆さま、金融機関並びに関係者の皆さまに多大なご迷惑、ご心配をおかけした。深くお詫び申し上げる」
本間氏は、NTTデータGが11月6日に開いた全銀システムの障害に関する記者会見の冒頭でこう述べ、頭を下げた。
会見では、障害の状況や今後の取り組みについて、本間氏をはじめ、国内事業を担うNTTデータの代表取締役社長 佐々木裕氏、金融分野担当の取締役副社長 鈴木正範氏が説明した。その内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは「復旧に時間がかかった根本的な要因」について考察したい(写真1)。
会見の質疑応答で、筆者は「本間社長にご見解をうかがいたい」と前置きした上で、次のように質問した。
「これまでもミッションクリティカルなシステムにおいて幾度となく障害はあったが、今回はかつてないほど復旧に時間がかかった。なぜ、こんなに時間がかかったのか。完璧を目指してもシステム障害は起きるが、どれだけ短時間で復旧させるかがエンジニアの腕の見せ所だと、私はこれまでの取材で認識している。障害の直接的な原因にも関係するとは思うが、今回の出来事の背景にもっと深い根本的な要因が大きな問題としてあるのではないか」
これに対し、本間氏はこう答えた。
「その点については大変申し訳ないが、現在、(全銀システムを運営している)全国銀行賃金決済ネットワーク(全銀ネット)と当社が一体となって、直接的な原因をはじめ、再発防止の観点から全体のプロセスについて詳細に検証し、どのように改善していけばよいかについて協議を進めているので、今の時点で当社だけでコメントするのは難しい状況であることをご理解いただきたい」
答えるのが難しいタイミングであることは承知の上で、次のようにも聞いてみた。
「私がお聞きしたいのは、根本的な問題について現時点でどう見ておられるかということだ。例えば、『技術が複雑になってきて人間が追いつけなくなってきた』あるいは『人間には予測不能なことが起きるようになってきた』といった問題が浮き彫りになってきたのではないかと。こうしたことをお聞きするのは、今回の出来事によって、社会基盤のシステムに障害が起きた場合、復旧に時間がかかることも起き得るのだと、多くの人たちが不安を感じたからだ。そして、これに対して、直接的な原因にとどまらず、その背景に大きな問題があるのならば、この際、浮き彫りにすべきだと考えたからだ」
重ねての質問に対し、本間氏は次のように答えた。
「システムの開発や運用においては、それぞれのプロセスで正常に動作するかどうか試験を行う仕組みになっているが、今回のトラブルは結果的にそれを全てすり抜けてきたことになる。とりわけ、最終工程はきめ細かい試験を行うがそこもすり抜けたのはなぜかという検証を、現在、全銀ネットと一緒に進めている。従って、現時点でご質問に対して明確なお答えはできないが、われわれが今、非常に重視していることを一つお伝えしておきたい。それは、ミッションクリティカルなシステムの基盤をかつてのレガシーからオープン環境に移行する際、アプリケーションに手をつけることなくそのシステムを構築し運用できるエンジニアをもっと育成していく必要があるということだ。今、多くのお客さまからこうした要望を頂いており、そうした人材育成が喫緊の課題となっている」