「生成AIの活用は積極性と安全性の両立が重要」–旭化成、デジタル基盤強化へのDX戦略

今回は「「生成AIの活用は積極性と安全性の両立が重要」–旭化成、デジタル基盤強化へのDX戦略」についてご紹介します。

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 旭化成は12月7日、DX戦略説明会を開催した。同社は2018年から「デジタル導入期」、2020年から「デジタル展開期」、2022年から「デジタル創造期」、そして2024年以降は「デジタルノーマル期」と4段階の戦略で推進している。

 2022年度に公表した3カ年の中期経営計画「2024 ~Be a Trailblazer~」の1つ「DX-Challenge 10-10-100」は、グローバルの全従業員中2500人程度をデジタル人材のプロにし、データ活用量を2021年度の10倍、重点DX分野で100億円の増益貢献を目指す施策。

 旭化成で取締役 兼 専務執行役員 デジタルトランスフォーメーション統括を担う久世和資氏は「すべて順調に進んでいる。(材料開発に情報技術を活用して開発機関の大幅な短縮や革新的な製品開発を目指す)マテリアルズ インフォマティクスは時間がかかるものの、スマートファクトリーは短期的な増益を期待できる」と進捗(しんちょく)状況を明らかにした。

 旭化成のDX推進施策に伴う効果は多岐に渡るが、本稿ではデジタル基盤の強化として取り組むデジタル人材育成や、生成AIの活用に注目したい。

 同社は2021年当初からコミュニティー運営でバッジ取得後の活用・実践につなげる「旭化成DXオープンバッジ」を内製化してきた。能力に応じた5段階のバッジを用意し、11言語で展開することで、グローバルのデジタル人材育成を推し進める施策だ。

 授業内容や教材の98%は社内で作成し、社外の外部委託はハンズオントレーニングにとどめる。取り組みを盛り上げるための社長動画メッセージや、バッジ取得結果を社内のタレントマネジメントシステムに掲載するなど、デジタル人材の意識向上に努めてきた。

 製造現場に対しても工場休転時を利用した集合型研修履修の実施や、100近くのデジタル事例集を用意している。この取り組みはコミュニティー活動を基盤としているが、企業として人材育成を主導するため、2023年4月にデジタル共創本部内にデジタルタレント戦略室を新設した。その理由として久世氏は、「個別なアジャイル開発を体系化して加速させる」ためだと説明している。

 また、同戦略室ではデジタル人材育成の一環として、宮崎県の「デジタル人財育成コンソーシアム」への参画や、宮崎県立延岡工業高等学校への出前授業も実施しているが、同社 代表取締役社長の工藤幸四郎氏は「延岡は創業の地で多くの工場がある。DX教育・育成を通じて地方活性化を目指したい」と取り組みの背景を述べた。
旭化成 代表取締役社長 工藤幸四郎氏

 生成AIに関しては2023年4月末に全従業員向けの生成AI活用ガイドラインを制定し、「安心・安全に注意を払いながら、積極的に使おうというメッセージ」(久世氏)で企業の方向性を指し示した。その後は活用コミュニティーを発足させ、現在は700人以上の従業員が参加しているという。ほかにも事例・技術情報の共有、セミナー開催と行動しながら、10月に生成AIに関する専任組織を発足している。久世氏は「コミュニティーは重要だが、グループ内にリードしてオーナーシップを持つ専任組織」が必要だと述べた。

 6月末に全従業員が利用できる生成AIを導入して業務利用を開始。8月には社内データとの連携と新たなデータの追加学習を行うファインチューニング(微調整)を施し、自社に特化した回答の取得と特許作成など専門性の高い業務に対応させた。久世氏は、「現場と事業部、事業本部が共に進めている。ただ、社内データ連携は技術的ハードルが高く、専任チームが参加せずとも現場が主体的に使える仕組みを第3段階として、2024年1月に用意する」と今後の展開を説明した。

 年間140件発生する事業の書面監査業務は、和訳や一次回答調査など25時間の作業時間を要していたが、工程の一部に生成AIを用いることで12時間に短縮し、年間1820時間の削減に成功している。一連の取り組みについて工藤氏は「これからのビジネスは未来予測からはじまる。生成AIは未来を推測しながら進むためのツール。積極性と安全性を両立させるのが重要」だと述べた。
旭化成の生成AI活用例

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