業務ソフトウェアとデザインの関係–SAPの最高デザイン責任者に聞くこだわり

今回は「業務ソフトウェアとデザインの関係–SAPの最高デザイン責任者に聞くこだわり」についてご紹介します。

関連ワード (ソフトウェア等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 SAPがデザインに力を入れている。企業IT分野のコンシューマー化が進む中、デザインの役割は何か。最高デザイン責任者として製品やサービスのデザインに責任を持つArin Bhowmick氏は、「ユーザーが行いたい業務をデザイン面でどう支援できるのか」が最大のフォーカスだと語る。

–最高デザイン責任者として、どのような業務をしているのでしょうか。

 デザインを通じて、SAPの製品とサービスの体験を改善し、顧客が使いたいと思うような製品を構築する。これが私の業務です。統合基幹業務システム(ERP)、顧客体験(CX)、人事管理、旅費精算、サステナビリティー(持続可能性)など、SAPが提供する全ての製品が対象です。

 「デザイン」と一口に言ってもさまざまですが、私の定義は広く、顧客のジャーニー(旅路:ここでは製品やサービスを知り、それらに触れ、利用する一連の流れを例えた言葉)における全てのタッチポイントを改善することです。つまり、Google検索でSAPのウェブサイトにやってくる、製品を試してみる、サポートチームとやりとりする――これらの体験を全て見ています。

–「SAP Fiori」などの取り組みはあるものの、全体としてSAPのユーザーインターフェース(UI)は必ずしも好評とは言えません。どのようなやり方で改善を進めているのでしょうか。

 その指摘は素直に受け入れたいですね。だからこそ、私の役割があります。最高デザイン責任者として、製品、ストーリー、スケールの3つでUI改善を進めています。

 1つ目の製品は、インクルーシブな製品を設計・構築することです。SAPはグローバル企業で、実に多様なユーザーがわれわれの製品を使っています。どうやって多様なアイデアと体験を通じてダイバーシティーを支えていくか、単に使いやすいではなくユーザーに愛される製品にしていくかです。

 2つ目のストーリーとは、SAPがやっている素晴らしいイノベーションを知ってもらうことです。SAPは、顧客やパートナーとさまざまな共同イノベーションを進めており、素晴らしい成果や成功があります。これをもっとたくさんの人に知ってもらい、SAPと一緒にやりたいと思ってもらいたいですね。

 3つ目は、デザインのインパクトをスケールし、成熟させることです。デザインの目的は、製品をカッコよく見せるためだけではありません。特にエンタープライズソフトウェアは、ユーザーが業務をこなすためにありますので、デザインがそれをどのように支援できるのか、そのために社内でさまざまな実践を設定しています。例えば、イノベーションのフレームワークとしてのデザインシンキング、人工知能(AI)向けのデザイン、ユーザビリティーやユーザーの洞察などをどのように製品の改善に役立てるかなどがあります。

 方法としては、デザインシンキングのフレームワーク、ユーザーリサーチ、イノベーションツールキットの3つの組み合わせとなり、新製品なのか、既存製品なのかなど、製品のライフサイクルに合わせて、組み合わせを変えながら使っています。

–世代によりUIの好みや使い方が異なります。どのようにして幅広いユーザーに優れた体験を提供するのでしょうか。

 これは重要なテーマです。これを考える際は、現在と短期的な将来に分けて見ています。

 今後数年で職場に入ってくる人たちの期待は、われわれとは大きく異なります。SAPには、インクルーシブデザインの原則とツールキットがあり、リサーチも行いながら、違いを考慮するようにしています。

 同時に、主要なターゲット層を見失わないことも大切です。そこに向けて最適化するようにしています。次にやって来る世代のことも今考え、実現していきます。

–Qualtricsの組み込みを進めています。

 ユーザー体験(UX)のデータポイントとして、ほぼ全てのクラウド製品にQualtricsを組み込んでいます。それだけでなく、「SAP Analytics Cloud」なども使っており、顧客のジャーニー全体で、どの機能が使われていないのか、どこでつまずいているのか、などのデータも得ています。

 しかし重要なのは、データを収集することではありません。データを使って何をするのかが重要です。そこで、ユーザーリサーチ分野で応用的な研究プロトコルを使い、エンドユーザーが置かれている環境の流れで、どこに痛みがあるのかを見るようにしています。それとデータを組み合わせることで洞察を得ています。

 このように、定量的、定性的と両方のデータを使っています。

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