「Amazon Q」は「Azure OpenAI Service」と競合するか–AWSジャパン幹部に聞いてみた
今回は「「Amazon Q」は「Azure OpenAI Service」と競合するか–AWSジャパン幹部に聞いてみた」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、松岡功の「今週の明言」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、AWSジャパン 執行役員 パブリックセクター技術統括本部長の瀧澤与一氏と、日本IBM 執行役員 兼 技術理事 AIセンター長の山田敦氏の「明言」を紹介する。
米Amazon Web Services(AWS)の日本法人アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は12月6日、AWSが米国ラスベガスで11月27日~12月1日に開催した年次イベント「AWS re:Invent 2023」の発表内容について記者説明会を開いた。瀧澤氏の冒頭の発言はその会見の質疑応答で、今回AWSが発表した「Amazon Q」はMicrosoftが提供する「Azure OpenAI Service」と、企業向け生成AIサービスとして競合するのかを聞いた筆者の質問に答えたものである。
同イベントで主な発表が行われた基調講演のレポートについては関連記事をご覧いただくとして、ここでは瀧澤氏およびAWSジャパン 技術統括本部 技術推進グループ本部長の小林正人氏による発表内容の説明から、今回の発表の中で大きな注目を集めたAmazon Qの話を取り上げたい。
瀧澤氏はAmazon Qについて、「生成AIを活用したアプリケーションとして、学習したデータに基づいた洞察や、お客さまの組織内のデータを活用しながらハルシネーション(もっともらしいウソ)がない回答を対話形式で得ることができる」と紹介。AWSが自ら手掛けることの少ない「アプリケーション」との位置付けだというのが印象に残った。
小林氏はAmazon Qの特徴について、「企業内のデータと専門知識によって従業員に力を与える生成AIアシスタントで、仕事での利用にフォーカスしており、お客さまのビジネスに合わせて特化させることもできる」と説明し、その内容をブレイクダウンする形で表1を示した。
また、Amazon Qは「お客さまのビジネスにおけるエキスパート」だとして、「Amazon Qをビジネスデータやシステムと接続することで、既存の認証システムを利用してアクセスできるウェブアプリケーションを生成。さまざまなビジネス上のタスクを支援する」、あるいは「Amazon Qは入力された情報に忠実な回答を返すが、必要に応じて管理者側で質問や回答をキーワードによるフィルタリングにも対応する」といった特徴を紹介。それぞれの内容について表2に示した。
さらに、ビジネスにおけるエキスパートとして、「生成AIの能力を引き出すためには、お客さまのビジネスやユースケースに即した目的別のソリューションが必要になる。それに対応するため、AWSの複数のサービスでAmazon Qを組み込んでいる」とも述べ、表3にその具体例を示した。
筆者は会見の質疑応答で、「Amazon QはAzure OpenAI Serviceと競合するサービスなのか」と単刀直入に聞いてみた。すると、この質問にはAmazon Qの特徴についての説明が繰り返されただけだったので、改めて「ユーザーから見て、Amazon QはAzure OpenAI Serviceと比較して検討するサービスなのか」とユーザー視点で質問した。すると、瀧澤氏は次のように答えた。
「私はAzure OpenAI Serviceに言及する立場ではないので、Amazon Qが競合するサービスかどうかは分からない。私から強調しておきたいのは、Amazon QはAWSのお客さまからのご要望に基づいて実現したサービスであるということだ。AWSのお客さまにAmazon Qをはじめとした多彩な生成AI関連のサービスをフル活用していただきたい」
米国で開催されたイベントの基調講演では、AWSの最高経営責任者(CEO)であるAdam Selipsky(アダム・セリプスキー)氏がMicrosoftとOpenAIの陣営に対抗する姿勢を見せていたが、瀧澤氏は慎重な発言だった。もともとAWSは競合ベンダーについて言及しない印象があるので、むしろSelipsky氏の発言が踏み込んだものと見るべきかもしれない。
ただ、筆者がこの質問をしたのは、Azure OpenAI Serviceが企業向け生成AIサービスとして急速に広がっているからだ。明確なシェアを示した調査結果を目にしたことはないが、現時点では業務システム連携案件の多くが同サービスを適用したものと見られる。とはいえ、業務システム連携案件自体がまだまだ少なく、企業向け生成AIサービスの普及はこれからという状況だ。AWSがこのタイミングでAmazon Qを投入したのは、そうした背景があると推察される。
さらに、瀧澤氏の回答で改めて感じたのは、AWSにとって現時点で最も急ぐべき対策は、Azure OpenAI ServiceをきっかけにしてAWSの顧客をMicrosoftに奪われないようにすることだ。Amazon Qはそのための対策でもあるだろう。AWSのパートナー企業がAmazon Qをどれだけ積極的に担ぐか、日本では特にそこがポイントだと筆者は見る。今後の動きに注目していきたい。