AIは人間の仕事を奪うのか、補助するのか–ビジネスリーダーと専門家の見解

今回は「AIは人間の仕事を奪うのか、補助するのか–ビジネスリーダーと専門家の見解」についてご紹介します。

関連ワード (AI、仕事、自動化の未来、CIO/経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 「ChatGPT」が約1年前に登場したとき、生成AIは物珍しい技術から広く利用される技術になった。多くの企業と従業員が、これらの人工知能ツールをすぐに採用した。生成AIが過度な期待のピーク期から幻滅期へと滑り落ちつつある今、実際にどのような変化が仕事に起きようとしているのだろうか。

 メディアではよく、人間を助けるために作られたAIが失業の原因にもなる、と報じられている。たとえば、IBMとBT Groupの両社は先頃、人員削減を発表した際にAIに言及した。再就職支援企業のChallenger, Gray & Christmasによると、2023年5月には約4000人の雇用がAIによって失われたという。このトレンドは今のところ小規模で、AIが奪った仕事は失われた雇用全体の約5%だが、今後は拡大の一途をたどるだろう。

 Goldman Sachsの将来の予測に関するレポートでは、生成AIが現在の業務の最大4分の1を置き換える可能性がある、とされている。労働者にとっての朗報は、次のようなものだ。「労働市場に対するAIの影響は大きそうだが、大部分の仕事と産業は部分的にしか自動化されないため、AIに取って代わられるというより、AIによって補完される可能性が高い」

 若い人ほど、AIを脅威ではなく、仕事を助けてくれる存在とみなすことが多いようだ。たとえば、ソーシャルメディアエージェンシーHighKey Enterprisesの創設者であるZ世代のLuke Lintz氏は、次のような見解を示している。「AIは人間の効率を高めるので、AIと働くのは快適に感じられるはずだ。この新しい世代が労働人口の3分の1を占めようとしている今、AIのような新しい技術に適応して、うまく活用する若い世代の能力に注目することが重要だ」

 1世代上のMichael Everest氏も同じ考えだ。いつでも一緒に勉強できる仲間として設計されたAIプラットフォーム「edYOU」を立ち上げたEverest氏は、「当社のプラットフォームは、教師やライターの仕事を奪うことなく、人間がより多くのことを行えるように支援できる」と主張する。

 経営コンサルティング会社ElixirrのパートナーでAI専門家のIliya Rybchin氏も同様の意見で、以下のように述べている。

「未来の雇用市場の鍵となるのは、従業員のスキルアップではなく、『コスキリング』だ。コスキリングにより、人間は自分のスキルをAIと組み合わせて、1+1=3となる生産性を生み出す。計算機は会計士の代わりにならなかったし、スペルチェッカーが編集者の仕事を奪うことも、動画の再生がコーチに取って代わることもなかった。これらはすべて、優秀な人材が使用することで、より大きな効果を発揮したツールの例だ」

 生成AIがビジネスにもたらす利点を気に入っている人もいるが、そのような人々は決して労働者をAIに置き換えようとしているわけではない。BBCやThe New York Timesなどの企業に動画ストリーミングインフラストラクチャーサービスを提供し、エミー賞を獲得した新興企業Bitmovinの創設者で、最高経営責任者(CEO)を務めるStefan Lederer氏は、次のように語る。「当社のエンジニアリングチームは、革新的な動画ストリーミングを構築するために、『GitHub Copilot』を試している。このクールなツールは、チームの効率向上にある程度の効果があった」

 「ある程度」とはどういうことなのか。Lederer氏は次のように説明する。

「Copilotは現在の大半のAIツールと同様に、良い出発点となるが、求められたことを実行しているかどうかをエンジニアがダブルチェックする必要がある。場合によっては、修正が必要なものや、完全に間違ったものが提案されることもあるだろう。確かに、Copilotはボイラープレートコードや簡単にチェックできるものには有用で、作業や入力の手間を大幅に省けるが、依存しすぎると、細かいバグが発生するおそれがある。イノベーションに関して言えば、コーディングにはまだ人間の関与が必要だ」

 仕事に関して、AIにはまだ人間の関与が必要と考えるのは、決してLederer氏だけではない。

 請求記録と保険金請求関連のデータサービスを手がけるOntellusのCEOであるVince Cole氏は、「AIは保険金請求処理や顧客サービスといった従来のビジネスプロセスを迅速化することで、保険業界に変革を起こした。この技術により、作業に必要な時間の短縮、顧客満足度の向上、業務の効率化が可能になっている」と述べた。同氏はさらに次のように語る。「生成AIは、文書生成やデータ入力などのタスクを自動化する能力によって、特に人事や請求処理の分野で勢いを増した。生成AIはバックオフィスのプロセスを合理化し、最終的にコスト削減と生産性向上を実現することが期待されている」

 言い換えると、この変化が一定の雇用喪失につながるだろう。

 しかし、Cole氏はこう付け加えた。「生成AIには可能性があるが、慎重な姿勢をとることが極めて重要だ。クライアントは、AIによって生成された出力を人間が監視して検証することの重要性を強調している。重要なプロセスでAIだけに頼り、適切なチェックを怠れば、ミスやコンプライアンスの問題が生じて、大きな損失を被るおそれがある」

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