ニワトリ用スマートアンクレットで進む、中国の養鶏DX

今回は「ニワトリ用スマートアンクレットで進む、中国の養鶏DX」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 スマートウォッチやスマートバンドは主に大人が使用するものだが、中国では安全確認や防犯対策として子供用の端末が一定のシェアを獲得している。さらに世界で見ると、ペットの位置情報や健康状態を把握するためのウェアラブル端末も登場している。近年、中国ではニワトリ用のウェアラブル端末が一部で普及し始めている。

 ただ、ここで言及されているニワトリは、ペットとしてではなく食用として飼育されており、特に地鶏とされているものだ。日本における地鶏の基準の一つには「平飼い」が含まれており、ニワトリが自由に歩き回ることができる環境での飼育を意味する。同様に、中国でも広い空間を自由に歩き回るニワトリは、その繊細な風味としっかりした食感で高く評価され、一般的なブロイラーと比較して高価で取引されている。しかし、偽物が多く出回る中国市場において、販売されているニワトリが適切な環境で育てられ、十分に運動しているかをどのように証明するのかが課題となっている。

 そこで、ニワトリの足に装着するアンクレット型のウェアラブル端末の出番である。デバイスの名称などが特にないため、本稿では「スマートアンクレット」とする。このプロジェクトは中国の浙江省温州市にある泰順県の山間部で展開されており、プロジェクトリーダーの唐平冬氏は、友人がスポーツブレスレットを使って運動量を追跡し、リアルタイムにデータを交換するのを見て、同様の技術を養鶏にも適用できると考えた。そこから開発パートナーを探し、ニワトリ用にスマートアンクレットの導入を進める。

 スマートアンクレットは、計測した歩数などのデータを無線で養鶏場のコンピューターに自動転送するIoTデバイスである。ニワトリの識別IDや歩数などを参照可能な二次元バーコードも備わっている。消費者は鶏肉を購入する際に二次元バーコードをスキャンすれば歩数情報を確認できる。開発段階では、仕様を固めてから実際に問題なく機能するようになるまで、開発会社と共に試行錯誤を重ねた。ニワトリが自由に動き回れるようにしつつも、データを取得できるエリアを超えないように、中心の小屋から100メートル以内にネットを設置。ニワトリの出荷後、消費者から歩数データの信頼性に関する疑問が寄せられたため、データの改ざんを防ぐためにクラウドストレージとブロックチェーン技術を導入した。

 鶏肉のおいしさを歩数別で比べた結果、100万歩を歩いたニワトリが最もおいしいと評価され、その基準でニワトリを選別して出荷することにした。消費者にとっても、100万歩という数字はキリが良く分かりやすい。中国では、鶏肉は日常的に食べられており、炒め物としてよく使われている。そのため、鶏肉に対する要求も高い。「100万歩のニワトリ」というコンセプトは、消費者にとって説得力があった。唐氏は「2018年には年間1万~2万羽の出荷数だったが、このプロジェクトが始まってから、初年度には5万羽を超え、2年目には数十万羽に達した。業績は数倍に増加した」と語る。需要の増加に加え、デジタル化によりデータ管理が可能になった一方で人手をあまり必要としないことも、成功の要因となっている。

 唐氏は地域住民と協力し、スマートアンクレットとひよこ、そして養鶏のノウハウを無償で提供することで、事業規模を拡大させている。同氏は鶏肉を販売すると同時に、その鶏肉で作った濃厚なスープを提供するレストランを開業し、さらにビジネスを成長させた。新型コロナウイルス感染症の影響で厳しい制限が課され、客足が途絶えたものの、ライブコマースを活用して鶏肉とスープの缶詰を販売し、困難を乗り越えた。

 唐氏らによるスマートアンクレットを活用したソリューションで、同氏の養鶏場だけでなく、周辺の300戸の農家も所得を増やすことができ、デジタル技術を駆使した地域活性化に寄与した。中国政府は、若者や大学生に対して農村へのUターンやIターンを促し、起業を奨励しており、唐氏の成功はその模範として広く紹介されている。その影響力は大きく、中国全土で類似のスマートアンクレットを使った事例が報道されるようになり、この分野を専門にする企業も現れた。歩数を表示するディスプレイ付きのスマートアンクレットや、養鶏場のネットワークカメラを組み合わせた総合管理プラットフォームが開発され、ニワトリの生産過程を詳細に追跡できるようになった。これにより、中国の養鶏業のDXが進展している。

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