「日本はダメだ」と言い過ぎ、挑戦をたたえよう–ソフトウェア協会の田中会長
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ソフトウェア協会(SAJ)は1月17日、東京都内で2024年の新年賀詞交歓会を開催した。会場にはソフトウェア産業の関係者など約650人が参加。あいさつの冒頭で会長の田中邦裕氏(さくらインターネット 代表取締役社長)は、能登半島地震の犠牲者に哀悼の意を表するとともに被災地の復興を祈念しながら、「SAJは地方で各種イベントを開催し、『行ってもいい』という時期になったら現地にうかがい、少しでもできることに協力したい」と語った。
田中氏は、「昨年(2023年)の賀詞交歓会で『アゲの年になる』と語った。長期金利や物価、賃金が上昇した。今年も『アゲの年』になると確信している。私たちはデフレに慣れ過ぎていたのではないか。今こそインフレ経営に変えていくことが重要である」と提言した。
その上で自ら経営するさくらインターネットを例に、「東証一部上場時に、『クラウドは民間企業ではダメではないか、公的な投資をすればいいのではないか』と言われた。2020年に『クラウドは外資系企業でいい』と言われた。2021年、ガバメントクラウドが外資系企業だけに決まった際は、そこに入れないという悔しい思いと諦めの気持ちで日本はダメだと思った」と回顧。
さらに、「日本がダメだと思うとダメに思えてくる。最近『日本がダメだ』と言い過ぎではないか。景況感は良いと思えば良くなるし悪いと思えば悪くなる。荻原紀男前会長(豆蔵 K2TOPホールディングス会長兼社長)から、『日本のクラウドは絶対にあるべきだ』と話をいただき、ガバメントクラウドに登録されるかどうか分からなかったが、それを目指して、これまで人を採用しなかったさくらインターネットで毎年100人採用することにした」とコメント。田中氏は、SAJで挑戦する意義を学び、勇気をもらったとする。さくらインターネットは、2023年に条件付きでガバメントクラウドに登録された。
田中氏は、「チャンスをもらい、チャレンジし、それを乗り越えるという当り前の起業家精神が日本では無くなっている。今ようやく『アゲ』の時が来ている。皆で力を合わせてこの国を良くしていこう。ソフトウェアは絶対にこの国を変える。デジタルの力はこの国を変える。停滞することでもうけていた人たちがもうからないようになり、変化して成長させることでもうけようとしている人がもうかるようになれば、日本は良くなる」と語った。
続けて「SAJには2つの価値がある」と述べ、「1つは仲間による情報。これからの世界がどうなるかなど教えてもらい、自分がチャレンジするためのテーマをもらえる。もう1つは仲間から勇気をもらうこと」とした。IT開発・構築の二次請け、三次請けだった会員企業が直受けになった例があったという。
「当初交渉が怖かったが、交渉の結果、直請けで仕事が得られ、利益が増え、社員の給与が増えたと聞く。別の会員企業は、自社サービスをやるのが怖かったが、話を聞いて自分たちでもできるのではないと思うようになった」と事例を紹介。SAJがチャレンジするマインドづくりを支援する団体だと訴え、「国が成長する中でデジタル業界も成長し、企業も社員も成長し、未来を一緒に作りたい」と締めくくった。
あいさつに立ったデジタル庁 副大臣の石川昭政氏は、「昨年はマイナンバー関連情報とのひも付けの誤りが確認され、ご迷惑をおかけした。自治体や関係機関の協力で2023年中に総点検を完了でき、再発防止策も講じている。7割を超える国民に保有しただき、そのうち7割が健康保険証を登録(マイナ保険証)している。政府はクラウドバイデフォルトを標榜し、ガバメントクラウドの整備を進め、クラウドを基盤としたソフトウェアサービスを活用したDXを推進している。2025年度末まで自治体の基幹業務システムのガバメントクラウドへの移行が本格化する。社会全体のデジタル化に向けてメリットを実感してもらえる仕組みを提供できるように、みなさんの協力を得たい」と述べた。
デジタル庁の初代大臣を務めた衆議院議員の平井卓也氏は、「AIもソフトウェア。安全安心なソフトウェアが競争力そのものになる。SAJは産業の中心」としながらも、「ソフトウェア業界には能登半島地震でデジタルが役立ったのかということを検証してほしい。このままでは(衛星通信ビジネスの)Starlink だけが良かったという話になりかねない」と提言した。
さらには、自身の所属する自民党について触れ、「自前のサーバー、学習セットで自民党のAIを開発し、広報ツールとして利用できるものが完成している。、自民党はユーザーではなく提供者、開発者の立場。広報職員2~3人分の仕事ができるようになっている」と紹介。だが、不安定な部分があり改良が必要といい、「永遠に完成はしないだろう。政策立案に関するアイデア出しはできるが、直感的に未来を感じて、なにかを決めるというところは政治家がやらなくてはいけない。意思決定は人間で、それをサポートするAIを作っていく社会にしていかなくてはならない。民間がリスクを取るなら政治もリスクを取る。リスクを取る人を応援したい。国も全面的に支援する」などと述べた。
富士通 執行役員EVPの古賀一司氏は、「生成AIはソフトウェア開発にも大きな影響を与えた。富士通は、みずほフィナンシャルグループと共同でシステム開発プロセスでの設計書の記載の間違いや漏れを生成AIで自動検出し、開発品質の向上に取り組んでいる。一定の成果を挙げている。人にしかできないソフトウェア開発の自動化にも取り組むほか、理化学研究所や各大学と『富岳』のコンピュ―ティングパワーを使い、日本語独自の処理、各業界の言葉を処理する大規模言語モデルの研究も進めている」などと紹介した。
SAJは、ビジョンとして「Software Everywhere~すべてはソフトウェアで動く、これからのデジタル社会へ~」を掲げる。古賀氏は「これを一緒に体現し、サステナブルな社会づくりをしていきたい」と語り、乾杯の音頭は取らず会場の参加者と「がんばろう能登、がんばろう北陸」と呼び掛けた。