「いまだかつてない方法でデータを捉え、知見を導き出す」–日本オラクル
今回は「「いまだかつてない方法でデータを捉え、知見を導き出す」–日本オラクル」についてご紹介します。
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日本オラクルは、同社のSaaS事業に関するプレス向け説明会を開催し、同社のアプリケーションの最新動向や開発における注力ポイントなどを説明した。
まず全体概要を説明した同社の執行役員 クラウド・アプリケーション統括 ソリューション戦略統括の塚越秀吉氏は同社のミッションステートメントとして「人々が、いまだかつてない方法でデータを捉え、知見を導き出し、無限の可能性を得ること」を紹介し、自身が同社に入社した2006年当時は“Better Information, Better Result”というメッセージを打ち出していたことを振り返って「Oracleが目指しているところは一切変わっていない」と語った。
さらにその真意として「企業がより良い情報を得ることができれば、判断、予測値の算出、トラブル時の対応などにおいて、より良い結果が生まれる。そのため、より良い情報をお客さまに出していく、というのがOracleのビジョン」だと説明し、アプリケーションの役割については、データベースなどの基盤部分に蓄積された「良い情報」に基づき、インテリジェンス/洞察など、付加価値のある状態にするものとした。
下層のインフラストラクチャーとアプリケーションをつなぐ部分でAIの技術が活用されているが、同氏はAIについて「人為的なミスとバイアスを最小限に抑え、大量のデータから有益なパターンを見つけ出す技術」と説明し、データから知見を導く際に属人的な要素を排してより公正な解析を行うことを可能にする技術だとの位置付けを明確にしている。
塚越氏は「Oracle Fusion Cloud Applications」の戦略として“Designed for Change. Build for you.”というメッセージを紹介し、「ビジネス環境が激変する時代、アプリケーションも常に変化し続ける必要がある」として、変化対応や老朽化対策を重視していることを明かした。同社はSaaS事業に注力しているが、これも従来のオンプレミス型のパッケージソフトウェアと比較して、導入期間やコストが約半分に減少するという成果が得られることが紹介され、変化に対応しやすくなることがSaaSのメリットだとした。
続いて、Oracle Fusion Cloud Applicationsの優位性について説明した同社の理事 クラウド・アプリケーション統括 ソリューション戦略統括 インダストリーSE本部 本部長の中山耕一郎氏は、同社のSaaSの特徴として「自社提供のクラウド基盤であるOracle Cloud Infrastructure(OCI)上で提供」「業務領域を網羅的にカバーする機能提供、および、シングルデータベース、シングルデータモデルでインテグレーション済み」「部分的な導入、段階的な導入がしやすいアーキテクチャー」の3点をまず挙げた(図1)。
SaaSに関しても「アプリケーションの下支えとなる基盤」の部分を強調する理由として、同氏はユーザー企業に「ブラックボックスのままアプリケーションを使いたくないという気持ち」があるためだという。
さらに同氏は、アプリケーションに障害やパフォーマンス低下が発生した際の対応に優れる点をメリットとして挙げた。「問題があった場合は、なぜそれが発生したのか、原因はどこにあるのか、対応策はどうしているか、それは暫定対処なのか恒久対策なのか、という詳細な説明を行う責任があるが、基盤自体も自社で提供しているものであれば原因がアプリケーションでも基盤側でも責任を持って回答できる」という。
中山氏は同社のデータベース・アプライアンス“Oracle Exadata”の販売当初から関わっていた経験を有するとのことだが、Exadataの前身となったアプライアンス製品「HP Oracle Database Machine」では、Hewlett Packardがハードウェア、Oracleがデータベースソフトウェアを担当しており、何か問題が生じた場合には両社で大量のやりとりが発生して大変だったと振り返った。その後、Sun Microsystemsの買収によってハードウェア事業を獲得した同社は、自社ハードウェアと自社ソフトウェアの組み合わせとしてOracle Exadataを製品化し、全てを自社で提供する形に移行している。
同氏は、一般的なSaaSベンダーがメガクラウドのインフラ上に自社アプリケーションを構築していることで、同様のサポート問題が生じると指摘し、OCIという自社インフラをベースとする同社の強みを強調した。
アプリケーションのアーキテクチャーに関しても、SaaS化と併せて新しい疎結合型のコンポーネントデザインが採用されたことで従来のオンプレミスの時代の設計とは異なり、ユーザー側で独自開発されるアドオンモジュールなどがシステムのアップデートの影響を受けないように配慮された点もメリットだという。
従来は、統合基幹業務システム(ERP)などの基幹アプリケーションのバージョンアップは数年がかりで億単位のコストを投入して実施することも珍しくなかったが、これを同氏は伊勢神宮が20年ごとに社殿などを建て替える「式年遷宮」に例え、こうした大がかりな更新作業はSaaSでは不要であり、定期的に小規模なアップデートを繰り返していく形になるとした。
最後に中山氏は、生成AIに関する同社の取り組みについても紹介した。2024年1月に提供開始されたばかりのサービス「OCI Generative AI」は「Cohere」「Meta LLama2」の2種類の大規模言語モデル(LLM)を選択可能で、独自データによるモデルのチューニングなども可能となっている(図2)。紹介されたユースケースでは、例えば財務報告書を作成する際に、直近の市場環境の変化や新しい取引先が追加されたことによる将来予測の変動などについて担当者が対話的に質問を投げかけ、生成AIからの回答を受け取ることで複雑なレポートを迅速に作成する例も紹介された。
また、OCI Generative AI Agentsでは検索拡張生成(Retrieval Augmented Generation:RAG)をサポートし、基盤となるOracle Databaseなどに格納されたデータに対して高度な検索が実行できるようになるという。
基盤の整備からアプリケーションの準備、さらに生成AIの技術の活用まで、さまざまな取り組みを「より良いデータからより良い結果を得る」という一貫した考え方に基づいて展開している同社のアプリケーション戦略は、ある意味極めて明瞭で分かりやすいものといえそうだ。