2050年を目標に開発が進む量子コンピューター、古典コンピューターによる検証でも成果–NEC
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NECは、量子コンピューティングの技術開発と事業の最新動向についてプレス向け説明会を開催した。
同社の量子コンピューティング関連の技術開発の現状について紹介した研究開発部門 セキュアシステムプラットフォーム研究所 量子コンピューティング研究グループ ディレクターの白根昌之氏は、量子技術について「量子という特殊な世界の特異な性質や振る舞いの物理法則を積極的に利用することで、われわれの日常生活に役に立つ性質を導き出すもの」と説明し、「三大量子技術」として「量子コンピューティング」「量子暗号」「量子センシング」を挙げた。同社は3領域全てを研究開発対象としているが、今回は量子コンピューティングの取り組みについて説明した。
NECは1999年に世界初となる「固体素子量子ビットの動作実証」を成功させ、総合科学誌「Nature」に論文が掲載されており、まさに量子コンピューター開発競争の幕を開けた企業といえる。また同社は、一般に量子コンピューターという場合にイメージされる汎用的な演算が可能な量子ゲート方式だけでなく、量子アニーリングの分野でもさまざまな成果を挙げていることで知られるが、社会実装や新産業の創出といった応用面を重視した取り組みである量子技術による新産業創出協議会(Q-STAR)でも、「量子重ね合わせ応用部会」のリーダー企業として「最適化・組合せ問題に関する部会」の副リーダー企業として活動するなど、積極的な取り組みを行っている。
白根氏はアニーリングマシンによる最適化・組み合わせ問題の解決は「社会実装が一番近い分野として非常に注目されており、当社としても一番力を注いでいる分野の一つだ」とした。同時に、科学技術振興機構(JST)が推進する「ムーンショット型研究開発事業」の「目標6:誤り耐性型汎用量子コンピュータ」の研究開発プロジェクトでは、同社のセキュアシステムプラットフォーム研究所 主席研究員の山本剛氏がプロジェクトマネージャーとなって「超伝導量子回路の集積化技術の開発」に取り組んでおり、量子ゲート方式/量子アニーリング方式の両方でそれぞれ積極的な研究開発が進行中という状況である。
同氏はさらに、NECにおける量子アニーリング分野での取り組みの具体例としてNECで開発中の超伝導量子アニーリング素子や、それと並行して既に実サービスの提供が開始されている、同社のベクトル型スーパーコンピューターを利用したシミュレーションによる「疑似量子アニーリング」のサービスについても紹介した。
続いて、コーポレート事業開発部門 量子コンピューティング統括部長の泓宏優氏が、疑似量子アニーリングマシンの提供サービス「NEC Vector Annealingサービス」について説明した。同サービスは、2021年9月に発表後、同年11月から提供されており、「ベクトル型スーパーコンピューターを活用した量子インスパイア型のシミュレーテッドアニーリング利用サービス」と説明されている。もう少し具体的には、「NECが研究・開発を進めている量子アニーリング処理に適した独自開発のアルゴリズムを組み込んだソフトウェアを、ベクトル型スーパーコンピューター『SX-Aurora TSSUBASA』上で動作させ、クラウドサービスとして提供するもの」となる。
泓氏は同サービスの利点として「(超伝導量子素子による)量子アニーリングマシンとデータ形式が同一、入出力が全く同じなので、本物の量子アニーリングマシンが使えるようになる前に今あるコンピューターを使ってその使い方を練習し、事業を展開できる」ことだと説明した。いわば、量子コンピューターの社会実装に向けた検証を量子コンピューターの実現を待たずに即開始できるということになる。