ウェブ誕生から35年、その生みの親は破綻したウェブを救えるか

今回は「ウェブ誕生から35年、その生みの親は破綻したウェブを救えるか」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 1989年のインターネットはすでに生まれてから何年も経っていたが、その姿は今とはまったく違うものだった。今日私たちが使っているインターネットが持つイメージや使われ方は、Tim Berners-Lee氏と、同氏が創造した「ワールドワイドウェブ」から大きな影響を受けている。ウェブの起源は、その元をたどれば35年前のBerners-Lee氏の論文、「Information Management: A Proposal」に行き着く。

 Berners-Lee氏は世界を変えようとしていたわけではない。欧州原子核研究機構(CERNと呼ばれることが多い)の中で簡単に情報を共有する手段を作ろうとしたにすぎない。同氏が考案したのはインターネット上に分散したハイパーテキストシステムであり、これが現在ウェブと呼ばれているものになった。

 紙の上のアイデアから実用的なシステムになるまでには数年かかった。ウェブが本格的に稼働し始めたのは1993年のことだ。筆者が有名なウェブの紹介記事を書いた最初の人物になったときには、ウェブサーバーは2つしかなかった。

 筆者が1994年に著書「Inside the World Wide Web」を書いた頃には、インターネットが爆発的な人気を集めていた。技術者だけが使っていたものから、どこにでもある今日のウェブの基礎となっていったインターネットを、誰もが使いたがった。

 Berners-Lee氏はウェブが35周年を迎えるにあたり公開したメッセージの中で、「ウェブはコラボレーション(Collaboration)を可能にし、思いやり(Compassion)を育み、創造性(Creativity)を生み出すことを目指して作られた。私はこれを『3つのC』と呼んでいる。ウェブは人類に力を与えるツールになるはずだった。最初の10年間はその期待通りになり、ウェブは分散的で、コンテンツや選択肢のロングテールを持ち、小規模で局所的なコミュニティーを生み出し、個人のエンパワーメントを実現し、大きな価値を育むものだった」と述べている。

 しかしBerners-Lee氏は続けて、「この10年間のウェブは、それらの価値を体現するどころか、むしろそれらをむしばむのに一役買ってきた」とも書いている。同氏はその原因として、「ウェブが複数の企業の利己的な考えによって支配されていることによる機能不全」を挙げた。

 皆さんから見ても分かるはずだ。ウェブの黎明期には、インターネットの豊かな土壌で新しい企業が数多く生まれた。しかし今では、インターネットと株式市場の両方が、Meta(Facebook)、Amazon、Microsoft、Apple、Alphabet(Google)のいわゆる「MAMAA」によって支配されている。支配的企業が、古いFAANG(Facebook、Amazon、Apple、Netflix、Google)から、新しいFAANG(Facebook、Amazon、Apple、NVIDIA、Google)に変わったと言われることもある。略語はともかく、インターネット経済が小規模なスタートアップではなくこれらの大企業のものになっていることは明らかだ。

 Berners-Lee氏は、ウェブの30回目の誕生日に、ウェブが「公共広場、図書館、病院、商店、学校、デザインスタジオ、オフィス、映画館、銀行、その他もろもろ」になったと述べた。しかし同時に、「詐欺師のチャンスを広げ、憎しみを広げる人々に発言力を与え、あらゆる犯罪を容易にしている」とも指摘した。X(旧Twitter)、Reddit、Nextdoorなどのソーシャルネットワークを見れば、ウェブが持っている醜い一面を見て取ることができる。

 人工知能(AI)が普及してもその状況は改善されていない。実際、Berners-Lee氏は今回のメッセージの中で、AIはむしろ事態を悪化させたと考えており、「AIの急速な進歩がこうした問題を悪化させたことは、ウェブ上の問題がウェブだけのものではなく、さまざまな新技術と深く絡み合っていることを示している」と述べている。

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