オラクルをはじめメガクラウドベンダーが相次いで日本に巨額投資する背景とは
今回は「オラクルをはじめメガクラウドベンダーが相次いで日本に巨額投資する背景とは」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、松岡功の「今週の明言」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、Oracle CEOのSafra Catz氏と、ZVC JAPAN 代表取締役会長 兼 社長の下垣典弘氏の「明言」を紹介する。
日本オラクルは4月18日、年次イベント「Oracle CloudWorld Tour Tokyo」を都内ホテルで開催した。冒頭の発言はこの機に初来日した米Oracle最高経営責任者(CEO)のSafra Catz(サフラ・キャッツ)氏が日本への巨額の投資計画を発表したことについて、同イベントの基調講演および急きょ開いた記者会見で、その理由を述べたものである。
同日、Oracleは日本オラクルを通じて、日本におけるクラウドおよびAIインフラの需要拡大に対応するため、今後10年間で80億ドル(1兆2000億円)以上の投資を計画していることを発表した。これについて、Catz氏は基調講演および記者会見で次のように述べた。
「コロナ禍を経て、日本の経済は勢いがつき始めた。そうした中で、日本では今、新しいテクノロジーに対する需要が大いに高まっている。特にクラウドによるITモダナイゼーションやさまざまな分野でAIを活用したいというニーズを強く感じている。Oracleはこれまで40年にわたって日本へ多大な投資を行ってきた。今後も引き続き投資を行い、日本のお客さまおよびパートナー企業の活動を支援していきたい」
冒頭の発言は、このコメントから抜粋したものである。
Catz氏の会見にはサプライズで、駐日米国大使のRahm Emanuel(ラーム・エマニュエル)氏も登壇し、「日米は今、先進テクノロジー分野で緊密な連携を図っている。そうした中での今回のOracleの日本への投資計画を大いにたたえたい。これは、米国の日本に対する信頼の証しでもある」と強調した。
このEmanuel氏の発言は、Oracleが日米関係においてキープレーヤーであることを印象付けた。なお、Catz氏の記者会見の内容については関連記事をご覧いただきたい。
Catz氏の会見に出て筆者が注目したのは、Oracleの競合となるメガクラウドベンダーが、このところ相次いで日本への巨額の投資計画を打ち出していることだ。具体的には、Amazon Web Services(AWS)が2023年から2027年までに149億6000万ドル(2兆2600億円)、Microsoftが今後2年間で29億ドル(4400億円)といった具合だ。
それぞれの投資の巨額ぶりとともに印象強いのは、AWSの会見では初代デジタル大臣を務めた平野卓也衆議院議員が登壇して賛辞を贈り、Microsoftに至っては先頃の岸田文雄首相の訪米に合わせて発表し、岸田氏が米国でMicrosoft副会長兼プレジデントのBrad Smith(ブラッド・スミス)氏と面会し、投資計画に謝意を伝えたという動きだ。
こうした一連の動きの背景には何があるのか。筆者は日米関係におけるテクノロジーや経済面での協力強化とともに、国家安全保障の結束レベルが変わったことを感じた。クラウドやAIはそういう性質を持つテクノロジーでもある。
加えて、今後、考えていく必要があるのは、メガクラウドベンダーによる日本への巨額の投資計画を、もろ手を挙げて喜ぶだけでなく、この影響がどのように及んでいくかだ。例えば、日本のIT産業が変質してしまうのではないか(もう変質しているとの見方もあるが)、膨らみ続ける日本の「デジタル赤字」をどうするのか、といった点だ。
これからの日本にとって大きなテーマである。そんなことを考えさせられたCatz氏の会見だった。