富士通、「がんのタイプ分け」などゲノム医療分野の課題を解く説明可能なAI技術を開発
今回は「富士通、「がんのタイプ分け」などゲノム医療分野の課題を解く説明可能なAI技術を開発」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
富士通は、複数の異なる形式のデータを「ナレッジグラフ」に変換し、AIを用いて自動的に統合・学習することで、高精度に原因や内容を判定・推定する説明可能なAI技術を開発した。
ナレッジグラフとは、知識を抽象化して体系化したもの。人、場所、物事などに関する知識(ナレッジ)を体系的に連結し、グラフ構造で表したネットワークのこと。膨大な量の情報を効率的に処理でき、AIや機械学習のさまざまな分野で利用されている。
今回開発した説明可能なAI技術が扱うデータはテキストや画像、数値などで、肺がんのタイプ分けや乳がん患者の生存期間予測など、医療分野の課題に活用される。同社では、肺がんの主要な2つのタイプの判別を、病理画像情報にさかのぼってその要因を説明する形で高精度に判定支援できることを確認した。
今回開発した技術は「マルチモーダル技術」と呼ばれ、テキスト、画像、数値などフォーマットの異なる複数のデータを扱う。医療分野では、電子カルテの患者情報、検査結果やCT画像、ゲノムデータベースなどを統一的に扱うことができる。同技術は、十分な学習データを準備できない病理画像の判定においても、ゲノム情報まで組み合わせた判断支援が実行できると期待される。
この説明可能なAI技術は、テキストや画像などの異なるデータ形式の各データを、形式に依存しない共通的なナレッジグラフに変換する。そのうえでナレッジグラフをAIにより自動的に統合し「大規模統合ナレッジグラフ」を作成する。これを用いて説明可能な形で様々な判断を支援する。
今回同技術を用いて、肺がん患者の病理画像とゲノム情報(コピー数異常情報)を、AIにより自動的に統合し、がんのタイプ分けを行った。その結果従来87.1%が最高精度だったものを、92.1%という世界最高精度まで伸ばした。これらのタイプ分けの際には、病理画像データにさかのぼって判断の根拠を示すことが可能だという。
また、乳がん患者の画像データに加えてRNAデータと診療データを、AIを用いて自動的に統合して判断した。その結果、乳がん患者の生存期間予測タスクにおいて、従来最高精度が66.8%だったものを、71.8%まで伸ばした。これらの生存期間の予測を支援する際には、画像データの中からその根拠を示すことが可能だという。
今後富士通では、今回開発した技術を、先端技術の試行環境である「Fujitsu Research Portal」で2024年度中に公開する予定だ。また同技術をバルセロナスーパーコンピューティングセンターとの共同研究に活用し、さらなる精度向上およびグローバルでの認知獲得をめざす。加えて医療分野だけでなく、データセンターの障害予測や詐欺検知などさまざまな領域で活用できるよう発展させていくという。