開発者は言葉での説明能力が必要に–GitHub デイグルCOOが考えるAI普及と開発

今回は「開発者は言葉での説明能力が必要に–GitHub デイグルCOOが考えるAI普及と開発」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 現在、さまざまな分野でAI機能を搭載した製品が提供されている。GitHubもAIペアプログラミングサービス「GitHub Copilot」を2022年6月に一般提供し、それ以来、AI機能の提供を続けている。1年半前ぶりの来日となった同社最高執行責任者(COO)であるKyle Daigle氏に開発分野でのAI機能の現状や今後について話を聞いた。

–GitHubのAI機能は現在、どれほど普及しているのでしょう。

 2年前にローンチされたGitHub Copilotは、ビジネス利用する企業が世界で5万社に達しており、これは有料版を利用する開発者100万人以上に相当します。Copilotは、採用ペースがGitHub史上最速な製品です。スタートアップも大企業もCopilotを使い始めています。2023年に開催した当社のカンファレンス「GitHub Universe」では、AccentureがGitHub Copilotを使って5万人の開発者にコミットしたことが発表されました。北米だけでなく、日本、アジア太平洋地域、ヨーロッパでも、比較的多くの企業が導入しています。

–この伸びは予想以上でしたか。

 常に新しいアイデアを世に送り出してきましたが、これほど早く普及するとは思ってはいませんでした。ユーザー数の増加パターンを示すのにSカーブが用いられますが、GitHubには1億人以上の開発者がいることを考えると、やっとスタートラインに立ったところだとも言えます。

 Copilotによって、プロの開発者、オープンソース開発者、学習中の人々など、多くの人たちがGitHubに集まってきています。AIを使ってコードを書くことについて皆さんを支援するという意味では、私たちには多くの余地が残されていると思います。

–Copilotのローンチ後にOpenAIの「ChatGPT」が一般提供されています。ChatGPTの登場は、Copilotの普及に影響したと思いますか。

 ChatGPTが優れているのは、分かりやすく、誰にとっても価値のあるツールだということです。誰が質問しても答えを返してくれます。

 Copilotについて見ると、導入需要には力強さが既にありました。理由としては、何も特別なことをしなくてもよいことがあります。開発者が質問を入力すればコードを完成してくれます。開発者が他の開発者に質問するのは日常的なことなので、「Copilot Chat」でチャットするのは特別なことではありません。Copilotのユーザーエクスペリエンスが導入を強力に推し進めたのだと思います。

 一般的なAIの普及は、企業の経営陣といった開発者ではない人たちがこうしたツールの潜在的な力を理解するのを手助けしたとは言えるでしょう。ChatGPTの登場は、関心を高めるという意味では役立ったと思います。しかし、Copilotの普及という部分においてどうだったかは分かりません。

–現在、GitHubも含めて多くの企業が、開発者向けの製品にAI機能を追加しています。開発者はこの傾向をどう捉えているのでしょう。

 Copilotに対する当初の反応はさまざまでした。若手や経験の浅い開発者は、恥ずかしくて先輩開発者に聞くことができないことでも躊躇(ちゅうちょ)なく質問できると喜んでいました。ベテランの開発者は、自分が知らないプログラミング言語の問題に取り組むことができます。私は、「Ruby」でコーディングしますが、「Java」のプロジェクトに入れられたら、なんとかなるとは思いますが、時間がかかるでしょう。そのようなとき、Copilotは助けになります。

 Copilotのゴールは、創造性やコードを書く能力を奪うことでもありません。つまらない作業の退屈な部分を取り除くことです。このことへの理解が得られた結果、CopilotをGitHubのプラットフォーム全体に導入できました。脆弱(ぜいじゃく)性を見つけるだけでなく、説明をしてくれて、コードの修正を提供してくれる「GitHub Code Scanning Autofix」といった機能です。脆弱性の検出は重要です。しかし、それは胸踊るような仕事ではありません。そのため、このような機能を導入すると、開発者たちはとても喜んでくれます。

 GitHub全体でCopilotを使うと、約70%の開発者がCopilotを使わないときよりも仕事にやりがいや幸せを感じると回答しています。80%以上が、AIのおかげで人間の同僚とより協力的になったと回答しています。Copilotは、あくまで「copilot(副操縦士)」であり、開発者の仕事を支援するものです。開発者から仕事を奪うというものではありません。

–AIが仕事を奪うという懸念は、1年半前の来日時でも話があったように思います。状況は変わっていないのでしょうか。

 私の記憶では、AIが全てのソフトウェアを書くようになったらどうなるか、ということが当時の疑問だったと思います。この1年半で、現状は、そのような状況からかけ離れたところにあると気づきました。

 AIについて話をすると、皆、この魔法の機械が仕事を全てやってくれると考えます。このような考えは、私たちの経験とは異なるものです。AIを使っている開発者は、そのようなことにはならないと感じています。

 私たちは、開発者をループ(作業工程)に組み込んでいるのが最高のAIだと信じています。開発者は、何か新しいものが求められる場面で意思決定をするという役割を担います。私たちは、入力を受け付けて全てを実行するというのではなく、開発者が意思決定を求められるポイントを次々にクリアできるよう、最大限のことをします。AIが全ての工程を支援しながらも、全てをコントロールするのは開発者であるようにしたいと考えています。

–他にどのような懸念がAI能力を開発プロセスに導入する際にあるのでしょう。

 Copilotは、仕事のやり方や共同作業のやり方を変える代わりに、既存のエンジニアリング文化を拡張します。お客さまと話をする際にトピックとして挙がるのが、「Copilotはソフトウェアに限らずエンジニアリング文化の近代化にどう貢献するか」ということです。皆が同じ部屋にいない状況でも問題に取り組むことができるのか。このような部分において、私たちは、Copilotを試験導入している企業を支援しようとしています。

 大抵の場合、企業の懸念は「市場で競争力を維持するために生成AIをどう活用するか」です。特に日本では、若い世代の開発者を成長させ、スキルアップさせるために生成AIをどう利用するかだと思います。

 今、企業は、導入に1〜2年かけて全社展開する代わりに、いかに従業員に早く提供できるかを考える必要があります。企業は、以前に比べて迅速に動くことを余儀なくされています。AIを導入している企業は、しばらくの間は優位に立てるからです。

–現在、企業が目を向けているのは、どうやってAIを導入するかいうことなのですね。

 日本で話題となるのは、いかに早く動くかということです。

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