イオンが取り組む共通データ基盤の構築とデータ連携の強化

今回は「イオンが取り組む共通データ基盤の構築とデータ連携の強化」についてご紹介します。

関連ワード (データマネジメント等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 イオンは、営業収益9兆5535億円(2024年2月期連結決算)、グループ従業員約60万人、店舗・事業所数1万7887カ所、連結カード会員約5027万人という国内大手の小売企業である。

 1758年創業の「岡田屋」を起源に、現在では300以上の子会社を持つ。ダイエー、カスミ、マルエツ、いなげや、キャンドゥ、ウエルシア、ツルハなど、多くの企業が合併してグループを形成している。イオンの最高技術責任者(CTO)でイオンスマートテクノロジーのCTOも兼務する山﨑賢氏は、同社のグループ戦略について「独自性を尊重した緩やかな連帯」を企業文化として大切にしていると話す。

 一方で、この「緩やかな連帯」のために、多数の顧客情報がそれぞれ独立した形で存在し、相互の連携が不足しているという「独自性のしがらみ」が課題となっていた。「アプリやデータが個別に存在し、連携が取れていない状態が続いていた」と山﨑氏は当時の状況を振り返る。

 その要因の1つは、「会社の成り立ちの違いから利用しているシステムが異なる」という点である。多くのシステムが独自のプロトコルで通信しており、それが各事業会社の基幹システムに接続されている。そのため、データを統合するには多くの変換プロセスが必要となっていた。

 もう1つの要因は、「各事業会社の独立性を重んじるために発生する利害関係の不一致」である。各事業会社では、他社のデータも含めて分析したいものの、自社のデータは自社内にとどめたいという要求があった。「データを収集することの難しさよりも、データの管理とガバナンス、そして社内の各部門に対する公平かつ制御されたデータの公開が非常に重要になる」(山﨑氏)

 イオンは、過去3年間で3000億円以上をデジタル分野に投資してきた。具体的には、(1)ネットスーパーやEコマース、オムニチャネルなどのデジタル事業への投資、(2)顧客基盤やデータ基盤などのデジタルインフラ整備への投資、(3)セルフレジや店舗運営の効率化、従業員体験の改善など、店舗や本社のデジタル化への投資――になる。

 2021年9月には、グループのサービスを統合するトータルアプリ「iAEON」の配信を開始した。同アプリは、イオングループが提供する決済機能やポイントプログラムを一つにまとめたもの。グループ内の多くの事業会社が持つ顧客IDと購買データを集約することを目的としている。配信開始から約3年で、iAEONは1000万以上ダウンロードされ、独自のコード決済サービス「AEON Pay」は2024年7月時点で1000万人が利用しているという。

 データ基盤の整備においては、オンラインとオフラインの取引データや顧客データを一元管理するシステムを構築した。2024年には、イオングループの共通データ基盤「AEON SMART PLATFORM FOR DATA」(ASP/D)をフルスクラッチで内製開発。これは、取引総額9兆円のトランザクション量と、カード会員数4800万人以上のユーザーベースを持つデータ基盤および会員基盤となる。顧客データ基盤(CDP)や店舗従業員向けスマートフォンアプリ、経営層向けビジネスインテリジェンス(BI)など、データを利用したサービスも同時にリリースした。

 山﨑氏によると、ASP/Dの構築により「データの集約はできたが、依然として利用者に対してローデータを提供できていない」という。

 そこで、イオンでは、さまざまなニーズに対応できる多様なプロトコルを備え、多くの製品と連携可能な「Snowflake」をASP/Dのコラボレーションレイヤーに組み込むことを決定した。現在は、既存のプラットフォームをラッピングする形で、データガバナンスやデータ提供の手段として活用しているとのこと。

 Snowflakeを導入する前の議論では、「自前でデータ基盤を作ったのだから、それを使えばいいのではないか」「既存のプラットフォームを拡張すればいいのではないか」「ニーズごとにシステムを作って提供してはどうか」といった意見があった。

 しかし、山﨑氏は「データ製品は適材適所であり、それぞれに得意領域が存在する。全てを叶える銀の弾丸のようなプラットフォームは存在しない。大企業で多様なデータとユースケースが存在するイオンならなおさらであり、データを提供する部分は製品との相性も存在する。そのような多様なプロトコルを内製で作ることは現実的ではない」という方針を明確に示した。

 Snowflakeは、さまざまなデータ提供のパターンに対応できる製品であるため、どのようなデータ連携を行いたいかを標準機能から選択させることで、連携パターンの標準化に成功しつつあると強調した。

 山﨑氏の説明では、イオンではこのほかにも幾つかのプロジェクトでSnowflakeの活用が進められている。例えば、「IBM Db2」ベースで開発・運用されているイオングループの商品系データウェアハウスをSnowflakeに移行するプロジェクトが進行中で、新しいリテールメディア配信基盤にもSnowflakeの活用が予定されているという。

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