オブザーバビリティの「リーダー的組織」が得る効果は投資の2.6倍–Splunk調査

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 Splunk Services Japanは11月12日、「2024年のオブザーバビリティの現状」レポートに関する説明会を開催した。同レポートは今回で4回目となる年次調査で、グローバル1850人のIT運用担当者・開発者を対象に実施されたもの。

 オブザーバビリティ・ストラテジストの松本浩彰氏は、オブザーバビリティという用語の定義として「システムがどのような状態になったとしても、どんなに斬新で奇妙なものであっても、どれだけ理解して説明できるかを示す尺度」という言葉を紹介した。

 クラウドシフトやアプリケーションのコンテナー化といったシステムの変化を背景に必要に迫られた結果、「グローバルでは、オブザーバリビティはもはや『新たなトレンド』ではない」「IT環境が複雑化し、顧客の期待が高まる中で、組織が競争力を維持し、競合他社の先を行くために不可欠な存在となっている」との認識を示した。

 同レポートでは、オブザーバビリティの実践レベルを「基本的な可視化」「インサイトの活用」「プロアクティブな対応」「ワークフローの統合」の4段階に分けた成熟度フレームワークを採用し、それに基づいて回答組織を「ビギナー」「成熟度が中程度」「成熟度が高い」「リーダー」の4段階に分けて個別に考察している。

 松本氏は、「オブザーバビリティの取り組みが最も進んでいるリーダー的組織は、投資に対して2.6倍の価値を実現している」「68%のリーダー的組織が、アプリケーションの問題を数分、または数秒以内に検出できると回答。そのスピードは、オブザーバビリティの取り組みが遅れているビギナー組織の2.8倍に上る」といったデータを紹介した。

 なお、オブザーバビリティは従来のアプリケーションパフォーマンスマネジメント(APM)製品とは異なり、クラウドネイティブなアプリケーションなど、膨大な数のコンテナーなどがAPIを通じて連携動作するような複雑な環境において問題箇所を迅速に特定するのに有効なソリューションとして設計されている。

 こうしたアプリケーションは、主にインターネット上で提供されるコンシューマー向けサービスなどで使われることが多く、わずか数秒程度の遅延やシステムダウンが多額の機会損失につながる可能性がある。オブザーバビリティの主な適用分野はこうしたシステムであり、前述の投資利益率(ROI)や対応速度についてもそうしたシステム環境が前提となった上での評価だと考えるべきだろう。

 日本では、クラウドネイティブアプリケーションやコンテナーなどの利用状況はグローバルに比べてまだ始まったばかりという段階であり、エンタープライズユーザーでは長年運用を継続してきたレガシーシステムが維持されている例も珍しくない。一方、コンシューマー向けサービスではスマートフォンアプリなどを活用する必要も生じていることから、クラウドネイティブシステムとレガシーシステムを併用する形も普通に見られる。

 松本氏はこうした日本の現状を踏まえ、「オブザーバビリティ(可観測性)というキーワードの認知はここ数年で高まった」とする一方で「エンタープライズ企業がオブザーバビリティを高める場合にはさまざまなチャレンジがある」と指摘した。

 部分的にオブザーバビリティを適用するという考え方については「さらなるサイロ化の進行は望ましい姿ではない」といい、「変化に柔軟に対応できる運用スタイル(クラウドネイティブシステム)がフィットする領域、安定性を重視した運用スタイル(レガシーシステム)、管理責任がそもそも限定的な運用スタイル(SaaS/PaaSなど)を適切に配置し、組織間の連携にも配慮しつつ、品質・効率性・コストの全てにおいて合理的なシステム運用を発想する必要がある」と提言した。

 Splunkは2024年3月にCISCOに買収されており、11月13日にAppDynamics事業をSplunkに移管することが発表された。AppDynamicsは2017年にCISCOによって買収されたAPM製品ベンダーで、買収後もCISCO AppDynamicsとして継続提供されており、近年ではオブザーバビリティ機能も搭載される形となっていた。

 AppDynamicsがSplunkに移管されたことでSplunk側ではレガシーシステムなどへの対応能力が強化される形となるほか、CISCO傘下でオブザーバビリティを中核的に推進する立場が明確化されたものといえるだろう。同様に、CISCO傘下でオブザーバリビリティ関連ソリューションとして位置付けられていたThousandEyesについては、Merakiと合わせて「ネットワーク・モニタリング」製品と位置付けられ、Splunkから見ると重要なデーターソースの一つという扱いになっている。

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