序章:誰も語らないDXの現状
今回は「序章:誰も語らないDXの現状」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、エリック教授の”Next DX”論等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
長い間、日本企業の多くがデジタルトランスフォーメーション(DX)を掲げて取り組んでいます。しかし、その実態を見ると、「DX」という言葉が持つ本来の意味とはかけ離れた活動が目立っています。テクノロジーを導入するだけでDXを達成したと思い込んでいるケースや、最新技術を使うこと自体でDXを達成したとごまかし、目的化している事例が少なくありません。このような現状に私自身、日本企業にDXの必要性を呼び掛けてきた変革者の一人として、DXの創成期から活動してくる中で大きな違和感を覚えてきました。
DXの本質を語る上で、まず重要なのは、「DXとは何か?」という問いに適切に答えられるようになることです。この答えがあやふやなままでは、DXの議論は成立しません。私は、講演や取材でデジタルを語る時、いつも「DX is not technology」という言葉から始めています。DXとは、テクノロジーと同義語ではないということです。
もともと、デジタルという言葉の定義は非連続性を意味しています。例えば、波形で言えば、デジタルに対する言葉であるアナログの波形は波のようなイメージですが、デジタルとは、連続性のあるアナログとは異なり、階段状に変化する断続的な特性を持っています。
断続的な変化をテクノロジーの非連続的な発展と考えると、その真意はイノベーションです。つまりDXは、一言で言えばイノベーションであり、正確に表現すれば「DX=イノベーション with Digital」と言うことができます。過去の延長線上にない新たな発想や行動――それこそがDXであり、イノベーションそのものなのです。DXは技術の導入だけでは実現できません。非連続性に基づく発想が必要なのです。
日本企業がDXを誤解し、失敗している大きな要因は、連続性への依存です。日本の“カイゼン”文化は効率化には優れていますが、非連続的な変化には対応しづらいのが実情です。
この文化が企業内で根強く、DXを単なる効率化の延長と捉えてしまう傾向があります。DXの本質は単なるデジタル化ではなく、企業の構造や価値観の転換です。これを実現するには、経営層の強い意志と、現場の主体的な取り組みが不可欠なのです。
DXにおいて最も重要なのは、ビジョンを起点とすることです。技術を手段として活用し、ビジョンに基づく革新を遂げています。これらは新しい技術の導入では成し遂げられません。技術は手段であり、目的ではないではないという実例です。
DXは単なるデジタル化や最新技術の導入ではありません。それは非連続的な発想を起点とし、新しい価値を創造するプロセスです。DXは流行語ではなく、次の時代を切り開くための挑戦です。この挑戦を本質から捉え直し、非連続性を恐れずに進むことで、日本企業は新たな地平を切り拓けると確信しています。