商品発注や値引きを自動化–ヤマザワとBIPROGYが挑む、IT協働の店舗運営
今回は「商品発注や値引きを自動化–ヤマザワとBIPROGYが挑む、IT協働の店舗運営」についてご紹介します。
関連ワード (マーケティング、流通テック最前線等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
山形県を拠点に食品スーパーマーケットチェーンを展開するヤマザワは、BIPROGYと二人三脚で、少ない人員での安定した店舗運営に取り組んでいる。
ヤマザワは、山形・宮城県で「ヤマザワ」、秋田県で「よねや」を計71店舗展開する企業。同社は1952年に「山澤薬局」を開業、1962年に山形県内発の本格的なスーパーマーケットを開店し、「地域に愛される、健康元気な100年企業」というグループビジョンを掲げている。BIPROGYは、2024~2026年の経営方針で小売を注力領域の一つとしており、2030年に向けて「未来型店舗の実現」を目指している。
BIPROGYは長年、メインシステムベンダーとしてヤマザワの業務変革を支援してきた。ヤマザワは2024年9月、BIPROGYのAI需要予測による発注自動化サービス「AI-Order Foresight」を全70店舗の日配部門に導入。同サービスは、ライフコーポレーションや、静岡県中部を中心にスーパーマーケットを展開する静鉄ストアなどでも利用されている。
AI-Order Foresightは、店舗での販売実績・気象情報・催事情報などの各種データをAIに学習させ、適切な商品発注数を自動決定する。同サービスにより小売企業は、発注業務にかかっていた時間を削減するとともに、従業員の知識や経験に依存することなく、欠品ロスや廃棄ロスを削減することが可能となる。
ヤマザワはもともと、加工食品や住居関連商品において、在庫数の基準点を下回った際に発注を行う「基準在庫補充方式」の自動発注システムを利用していた。しかし、卵や冷蔵食品などの日配品は消費期限が短いため、既存のシステムを利用できず、依然として発注業務が属人化していたという。
ヤマザワ 取締役 人事教育部部長 兼 情報物流部部長 兼 プロジェクト管掌の山本哲也氏は、ZDNET Japanの書面での取材で「発注数量の決定にAIを活用することで、発注時間の削減や過剰/過少発注の防止を実現したいと考えていた」と振り返る。
AI-Order Foresightでは、補充型ではなく予測型の自動発注を行うことで、日配品や生鮮品など消費期限が短い商品の需要予測・自動発注を可能にする。通常はデータサイエンティストなどの専門家が行う予測モデルの改善をAIが代替するため、導入企業はデータ分析のノウハウがなくても、予測精度を維持・向上できるという。
BIPROGY インダストリーサービス第一事業部 営業一部 第二営業所 シニア・スペシャリストの野口秀胤氏は「予測型の自動発注では通常、専門家が気象情報などの説明変数をこまめに確認し、微修正しなければいけない。一般的に小売業では、そうした人材を社内で確保することが難しく、導入しても次第に発注精度が落ちてしまい、結果として使わなくなるという課題があった。AI-Order Foresightは、微修正の業務もAIに学習させるのが特徴だ」と説明する。
気になるのは従業員が行う時と比べた発注の精度だが、BIPROGYはヤマザワの担当者から「精度はこれまでとほとんど変わらない」と聞いているそうだ。大きく上回っているわけではないが、発注業務を担う人材を定常的に確保するのが難しい中、これまでと同等の精度に達していることに満足しているという。
AI-Order Foresightでは、予測に必要な量のデータを収集するのに最短2週間を必要とするが、その後は安定した予測が可能になるとしている。BIPROGYによると、ヤマザワの担当者は同サービスについて「いわば『素直な新入社員』。少しの間教育した後は、そのスタッフの意見に従えばよい」と評しているという。
AI-Order Foresightでは「AI自動アラート」という機能が搭載されており、過去の実績と比べて発注数が急増した場合などは、「この予測には自信がない」と“報・連・相”する。そのため、従業員はアラート商品のみを確認すればよく、魅力的な売り場づくりなど、付加価値の高い業務に時間を割くことが可能となる。
野口氏は「日配品や生鮮品の自動発注には予測型が適しているが、消費期限が長い加工食品などは在庫/販売点数に基づいた補充型が適しているので、システムを使い分けることが大事。補充型の方がAIによる処理が軽いので、簡素化できる部分はした方がよい」と述べる。
ヤマザワの店舗では現在、日配品だけでなく、店舗以外の場所で包装した「アウトパック」の生鮮食品や総菜など、ほかのカテゴリーでもAI-Order Foresightを活用している。