JR東海、DX推進で未来の鉄道サービスを創造–挑戦と革新の軌跡

今回は「JR東海、DX推進で未来の鉄道サービスを創造–挑戦と革新の軌跡」についてご紹介します。

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 東海旅客鉄道(JR東海)は、日本の重要な交通網である東海道新幹線を運営しており、その鉄道運行は多くの従業員によって支えられている。線路の点検や修理、車両の整備、列車の運行管理、駅でのサービスなど、多岐にわたる業務を人の手で行っており、まさに労働集約型の産業といえる。

 しかし、日本全体の労働人口が減少していく中で、JR東海も人手不足という課題に直面している。そこで、JR東海はデジタル技術を活用した業務改革(DX)を進めることで、少ない人員でも安全で質の高い鉄道サービスを維持・向上させることを目指している。

 現在、JR東海は効率的な業務執行体制を構築することで、10~15年をかけて定常的なコストを単体で800億円削減する「業務改革」を推進している。さらに、同社は新しい発想によって「収益拡大」を実現することにも挑戦し、経営体力の再強化に取り組んでいる。

 東海旅客鉄道 総合企画本部 情報システム部 担当課長の石川剛志氏は、「従来の鉄道事業における経験や勘に頼った業務運営から脱却し、画像認識、ビッグデータ分析、AI、ロボットといった最新の技術を積極的に導入することで、「より安全、より便利で、より快適なサービスを効率的に提供していく」と語る。

 DX推進の基盤となるのは、データ分析を担う人材育成と組織体制だ。JR東海は、情報システム部内にICT推進部門を立ち上げ、データ分析を加速する体制を構築した。データエンジニアやデータ分析のスキルを持つ人材を育成し、ICT全社員教育も実施することで、全社的なデータリテラシー向上を目指している。具体的には、データ分析講座やDataRobot主催のAIアカデミー研修、大学のプログラムなどを活用し、社員のデータ分析スキル向上を支援している。また、全社員を対象としたデータリテラシー研修カリキュラムを作成し、データに基づいた意思決定や問題解決ができる人材育成に力を入れている。

 東海旅客鉄道 総合企画本部 情報システム部の中尾健人氏によると、データ活用の進捗(しんちょく)状況は部門ごとにばらつきがあるという。データを日常的に参照する習慣がある部門においては、データ活用が円滑に進んでいるが、従来の経験や勘に頼ってきた部門では、データ活用に対する抵抗感が依然として存在している。社内の意識改革を促すために、データ活用が進んでいる部門の成功事例や分析を進める上でのノウハウを共有している。この取り組みにより、データ活用の効果を具体的に示し、他の部門にも成功事例を波及させていくことを目指している。

 JR東海がデータ活用基盤として導入したのが「DataRobot」である。DataRobotは、専門的な知識がなくても直感的な操作でデータ分析やAIモデル構築が可能なツールであり、JR東海の全社的なデータリテラシー向上に大きく貢献している。実際に、DataRobotの導入後、多くの社員がデータ活用に興味を示し、「社内勉強会には800人もの社員が参加した」(石川氏)という。

 DataRobotは、データの前処理、特徴量エンジニアリング、モデル構築、評価、デプロイ、モデル運用管理の全プロセスを自動化し、分析作業の効率化と精度向上、さらに継続的なモデルのビジネス利用を実現している。また、GUIベースの操作画面により、プログラミングなどの専門知識がない社員でも容易にデータ分析を行うことができ、一方でコーディング技術を有する社員も分析効率を大幅に向上することが可能である。

 JR東海は、DataRobotの活用により、従来の経験と勘に頼った業務から、データに基づいた客観的な意思決定へと大きく方針転換を図っている。これにより、業務効率の向上、コスト削減、顧客満足度向上など、多岐にわたる効果が生まれている。代表的な例として、新幹線の輸送量予測モデルの構築や、2025年に開催される大阪万博に向けた人流予測などが挙げられる。

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