インテントAIが製薬にもたらすインパクトと未来
今回は「インテントAIが製薬にもたらすインパクトと未来」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、トランスフォーメーションの破壊者:インテントAI等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
製薬業界は、かつてない変革の波にさらされています。新薬の開発には多大なコストがかかり、一方で、成功率は低く、特許切れによる売り上げの減少、規制の厳格化、DXの遅れといった課題が山積しています。これらの課題を打破する鍵となるのが、この連載で取り上げている「インテントAI」なのです。
製薬業界において、インテントAIはどのように課題を克服し、未来を切り開くのか――ここでは、現在の製薬業界の問題点と、それを変革するインテントAIの可能性について探ります。
現在、1つの新薬を市場に投入するには、10年以上の開発期間と約2600億円以上のコストがかかると言われています。それにもかかわらず、臨床試験の成功率はわずか0.02%と低く、多くの企業がリスクを抱えています。特に、フェーズIII試験(大規模試験)での失敗は深刻な問題で、開発資金の大部分がこの段階で失われるのです。
コンピューターとAI技術を活用した有名な創薬手法が、「インシリコ創薬」です。創薬の初期段階の化合物探索や、安全性試験へのコンピューターシミュレーションなどに用いられます。インテントAIによって、インシリコ創薬における創薬プロセスのスピードを飛躍的に向上させることが可能になります。従来の手探り的な化合物スクリーニングではなく、AIが研究者の意図(=インテント)を読み取り、最も有望な候補化合物をリアルタイムに提示することによって、開発期間を数年単位で短縮し、コストを数十%削減できる可能性を秘めています。
製薬企業の多くは、特許に依存した収益モデルを構築しています。しかし、パテントクリフ(特許切れ)により、ジェネリック薬やバイオシミラーが市場を席巻し、収益が急落するケースが増えています。リアルタイムな市場分析だけではなく、「新規適応症の発見インテントAI」が、市場動向をリアルタイムに解析し、新たな適応症(オフラベル適応)の可能性を即座に発見できるようになるでしょう。
例えば、ある抗がん剤が特定の神経疾患にも有効である可能性を示唆するデータを自動で抽出し、迅速に再申請を行うことができるのです。このプロセスによって、売り上げの安定化と市場優位性の確保に直結させることが可能になります。
米国食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)の規制が年々厳しくなり、新薬承認までの時間が長期化しています。特に、リアルワールドデータ(RWD)の活用が進まないことが、規制対応の遅れにつながっています。インテントAIを活用することによって、規制準拠の自動化やRWDの活用が活性化され、そこから規制要件を自動解析し、承認申請書類の作成を効率化できます。また、RWDを統合的に解析し、治験データと実臨床データの整合性を高めることで、規制当局からの承認を迅速に取得できる可能性が高まります。