日本IBM、新メインフレーム「IBM z17」発表–AI向けに完全設計

今回は「日本IBM、新メインフレーム「IBM z17」発表–AI向けに完全設計」についてご紹介します。

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 日本IBMは4月9日、メインフレームの新製品「IBM z17」を発表した。大規模言語モデル(LLM)や生成AIなどに対応し、AI時代向けに設計された次世代メインフレームと位置付ける。米国時間6月18日に出荷を開始する。

 開発には5年を費やし、100社以上のユーザーから意見を聞き、必要な機能を実装していったとのこと。マルチモデルのAI機能をはじめ、データを保護する新しいセキュリティ機能、AIを活用したシステムの使いやすさと管理を向上させるツールなどの機能を備える。

 日本IBM フェロー 執行役員 コンサルティング事業本部 最高技術責任者(CTO)の二上哲也氏は、IT市場環境における課題として(1)人材不足、(2)IT技術継承、(3)安定稼働、(4)企業データの活用――の4つを挙げ、IBMの対応策は「AI」「自動化」「ハイブリッド・バイ・デザイン」の3つだと示した。

 「人材不足、IT技術継承については、人材の流動化や高齢化などもあるが、原因の一つは既存システムのブラックボックス化。若手のスタッフが入ってきても中身が分かりづらいという課題がある。安定稼働については、クラウド、メインフレームを含むオンプレミスとシステムが複雑化、属人化し、問題に迅速に対応することが難しいと聞く。企業データの活用では、企業がこれまで培ってきたデータをデジタルの領域やクラウドで活用しきれていない。特にセキュリティを確保しながら活用するのは難しい」(二上氏)と現状を説明する。

 これに対し、AIを活用すればコード生成やテストの自動化ができ、人材不足やIT技術継承の解消につながるとのこと。加えて、既存のコードからAIで仕様書や構造を可視化することで、ブラックボックス化も解消できるという。

 また、オンプレミスとクラウドを適切に組み合わせるハイブリッド・バイ・デザインについては、「計画段階から全体を最適化する。メインフレームがあり、クラウドあり、という状況で、後からこれらをつなげてもデータは活用できない。最初からしっかりと考えておくことが大事」(二上氏)とした。

 IBM z17は、2022年の「IBM z16」以来3年ぶりに登場した新製品。z16に比べ1日当たり50%多くAI推論を処理できるなど能力を高めた。

 新しい「IBM Telum II プロセッサー」は、最新の5ナノメートル(nm)で、動作速度は5.5GHz。z16より、パフォーマンスを11%向上したほか、消費電力量も15%削減できるという。

 第2世代のAIアクセラレーターは、量子化と行列演算の改善により、コア当たり8倍のアクセラレーターを利用することが可能。これにより、1日当たり最大4500億の推論演算を1ミリ秒の応答時間で処理できるとしている。

 メインフレーム事業部 アドバイザリー・テクニカル・スペシャリストの竹吉俊輔氏は「世界的にAIの需要が高まる中、データセンターの消費電力は課題の一つ。今回使用している『IBM Spyre アクセラレーター』は、消費電力が少なく環境面を配慮する企業にとっても非常に有効なもの。拡張性にも優れ、生成AIのような大規模なAIモデルの処理にも優れる」とメリットを説く。

 IBMでは、約3年ごとにメインフレームを発表し、3つ先のリリースまでを見据えた開発を進めている。執行役員 テクノロジー事業本部 メインフレーム事業部長の渡辺卓也氏は「このロードマップはきちんと維持していく。お客さまには安心してメインフレームを使ってほしい。製品の提供や投資についてもコミットしていく」と今後も推進していく姿勢を示した。

 事業戦略については、メインフレームの資産を活用しながら、AIを加速させ、ハイブリッドクラウドの出現に向けて新たな機能を提供していくことを販売戦略に据える。さらに、SCSKのハイブリッドクラウドプラットフォーム「MF+」、キンドリルのクラウドサービス「zCloud」などと併せて共同利用する選択肢も用意する。

 メインフレームに関する人材育成の面では、ユーザーコミュニティーとして「メインフレームクラブ」を2023年4月に発足。ユーザー、パートナー企業、IBM関係者らが参加しており、現在600人を超えるコミュニティーに成長しているとのこと。

 「若手の育成が注目されているが、600人のうち約180人が入社から9年以内の若手。若手だけのコミュニティーも立ち上がっている。また、日本アイ・ビー・エム デジタルサービスでも新入社員の2~3割のメンバーをメインフレームの技術者として育成、研修し、投資している」(渡辺氏)と明かした。

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