科学者が分子構造をVRで共有し研究におけるコラボを促進させるNanomeが3.1億円調達

今回は「科学者が分子構造をVRで共有し研究におけるコラボを促進させるNanomeが3.1億円調達」についてご紹介します。

関連ワード (Nanome、学術研究、資金調達等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


新しい分子化合物の発見と研究は大変な費用がかかるビジネスだ。その開発コストは、1物質あたり100億ドル(約1兆460億円)を超える場合もある。その理由の一部は、化学組成や相互作用だけでなく、原子レベルでの物理構造を研究し、関連するすべての分子を綿密に調べる必要性にある。これらの化合物や分子をモデル化するためのソフトウェアの進歩にもかかわらず、2次元のコンピュータ画面を使ってその形状を完全に理解するにはまだ課題が多い。

サンディエゴを拠点とするスタートアップのNanomeは、この問題を解決するためにバーチャルリアリティ(VR)を使用している。Nanomeのアイデアは、同社の創業者兼CEOであるSteve McCloskey(スティーブ・マクロスキー)氏がカリフォルニア大学サンディエゴ校のナノエンジニアリングプログラムに在籍していた時に、3次元の分子構造をもっとよく理解する必要性を感じたことに端を発しているという。

TechCrunchの取材に対して「構造を理解することにより、ユーザーは自分たちのデザインがどのように機能するかを理解することができます」と同氏はメールで語った。「しかし、創薬のための研究開発プロセスは2Dモニター、キーボード、そしてマウスに依存しており、複雑な3D構造や相互作用の理解が制限されていることから、1つの薬剤あたり平均25億ドル(約2614億円)にもおよぶ巨額の研究開発コストの原因となっています」。

Nanomeは最近、新たなビジネスパートナーシップの確立、同社のブランド構築、サイエンスエンジニアリングチームの拡大のために、Bullpen Capitalが主導する300万ドル(約3億1000万円)の資金調達ラウンドを終了した。Bullpen CapitalのゼネラルパートナーであるAnn Lai(アン・ライ)氏は、プレスリリースでこう述べている。「Nanomeは、コラボレーションによるイノベーションがかつてないほど重要になっている現在、科学との関わり方を再考しています」。Oculus(オキュラス)の共同創業者であるMichael Antonov(マイケル・アントノフ)氏が率いるFormic Venturesもこのラウンドに参加した。

関連記事:新型コロナの流行で分子科学のクラウドソーシング演算パワーがエクサフロップ級に

マクロスキー氏は、Nanomeのプラットフォームは、新型コロナウイルスのパンデミックの間、さらに意味を増したと考えている。研究者たちはときに、研究室内の技術やソフトウェアへのアクセスを制限され、リモートでの作業を余儀なくされることがあると浮き彫りになったからだ。

「Nanomeは、科学者たちがより早く同じ認識にたどり着くのを助けてくれます」と同氏はメールで語っている。「従来、分子を扱う科学者たちはスクリーンショットや画面共有を使用し、マウスカーソルやZoomを使って自分の洞察を伝えたり、他のチームメンバーからフィードバックを求めたりしていました」。Nanomeは、研究者たちを同じバーチャルリアリティ空間に招き、彼らは一緒に分子開発に取り組むことで、このプロセスを合理化する。

これまでのところ、Nanomeは主に食品・飲料業界の企業とのプロジェクトや、より持続可能なバッテリーの開発に取り組んできた。しかし、今回の新たな資金提供を受けて製薬化学、合成生物学、さらには教育分野への展開を計画している。次の製品アップデートでは、マクロスキー氏が「スペーシャル・レコーディング(Spatial Recording)」と呼ぶ機能を搭載する予定だ。これにより、ユーザーは後でレビューするために自らの仕事を記録することができるようになる。基本的には画面の記録だが、さらにVR体験が可能なレコーディングだ。「これは、研究者間の非同期コラボレーションのためのすばらしい機能であるだけでなく、講義やレッスンの作成にも役立ちます」とマクロスキー氏は述べている。

画像クレジット:Nanome


【原文】

Discovery and research of new molecular compounds is an expensive business, with development costs exceeding $10 billion per substance in some cases. Part of that comes from the need to closely examine every relevant molecule, studying its chemical composition and interactions as well as its physical structure at the atomic level. Despite advances in software to help model these compounds and molecules, there are still challenges in fully understanding their shapes through a two-dimensional computer screen.

San Diego-based startup Nanome uses virtual reality to solve that problem. The idea for Nanome came out of CEO and founder Steve McCloskey’s time in the nanoengineering program at UC San Diego, where he saw a need for a better understanding of three-dimensional molecular structures.

“Understanding structure empowers our users to understand how their designs function,” he wrote in an email. “Yet, the R&D process for drug discovery relies on 2D monitors, keyboard, and mouse, which limits the understanding of complex 3D structures or interactions and contributes to massive R&D costs averaging $2.5B per drug.”

Nanome recently closed a funding round led by Bullpen Capital for $3 million to establish new business partnerships, build up the company’s brand and expand their science and engineering team. “Nanome is reimagining the way we interact with science at a time when innovation in collaboration is more important than ever before,” said Bullpen Capital General Partner Ann Lai in a press release. Formic Ventures, led by Oculus co-founder Michael Antonov, also took part in the round.

McCloskey thinks that Nanome’s platform has become even more relevant during the COVID-19 pandemic, as researchers might be forced to work remotely on occasion, limiting their access to in-lab technology and software.

“Nanome helps scientists get on the same page quicker,” he wrote in an email. “Traditionally scientists working with molecules use screenshots or screen sharing, and rely on the mouse cursor and Zoom to communicate their insights and ask for feedback from other team members.” Nanome streamlines this process by bringing researchers to the same virtual reality space to work on molecule development together.

So far, Nanome has worked largely on projects with companies in the food and beverage industry, as well as another to develop more sustainable batteries. But they have plans to use this new funding to expand into pharmaceutical chemistry, synthetic biology and even education. Their next product update will feature what McCloskey calls “Spatial Recording,” which will allow users to record their work for later review — basically a screen recording but with a VR experience. “This is not only an amazing feature for asynchronous collaboration among researchers, it is also useful for producing lectures and lessons,” he wrote in an email.

(文:Sophie Burkholder、翻訳:Aya Nakazato)

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COMMENTS


3788:
2021-02-12 22:05

コロナ禍で、歴史屋としてアカデミアの世界に広く訴えたいのは、今年も来年も、一介の若手研究者や院生の工夫だけでは学術成果が出ようがない年だったことを、学振なり就職なりの審査の時に念頭に入れておき続ける必要。留学や調査が立ち消えたことの若手のダ…

3792:
2021-02-12 21:06

継続される方向で全ての経済政策がたてられているようですし、学術会議人事掌握問題も軍事研究や改憲および彼らの教育改革を有利に進めるための組織的弱体化による下地造りの役割もかねているものと思われるし、警察組織や検察や裁判所人事掌握とメディア統制の人事掌握も全て改憲議論を

3791:
2021-02-12 20:08

安全保障技術研究推進制度が始まった平成27年度は大学からの応募数が58件だったのに対し、令和2年度はその6分の1以下の9件 平成29年の学術会議の「軍事研究禁止声明」の悪影響

3793:
2021-02-12 18:13

「〔戦前の〕学士院にしても学術研究会議にしても、その会員はそれぞれの機関で自ら選考し、政府による任命はまったく形式的であった…学問のことに関しては行政府の介入を許さないという毅然とした態度を堅持し、学界の自治を大学の自治と同じように守っていた……

3795:
2021-02-12 18:11

世界に広まる「慰安婦=性奴隷」説を否定 米ハーバード大教授が論文発表 慰安婦が政府規制下で認められていた国内売春婦の延長線上の存在であることを理論的実証的に示した論文が、3月刊行の学術誌に掲載さ…

3790:
2021-02-12 16:53

安全保障技術研究推進制度が始まった平成27年度は大学からの応募数が58件だったのに対し、令和2年度はその6分の1以下の9件 平成29年の学術会議の「軍事研究禁止声明」の悪影響

3794:
2021-02-12 16:44

>学術書を読む 著 鈴木哲也 装画 沢野ひとし 10章は学術雑誌と論文、査読データの数値化について論じています 私のような一般人は専門的で遠い内容です ただ 評価基準の寡占化や標準化が効率のみに進むと 自死された仏教研究者の話を思い出し 複雑です。

3789:
2021-02-12 15:16

「新書読め」騒動で思うのは、いまの人はハズレ引くのの嫌がり方が激しいから、むしろ「学術文庫読め」を推奨したい。講談社学術文庫なんかはハズレを探す方がたいへんなくらいだ。最新学説は読めないけれど、評価の定まった先行研究を読めるぞ。

3797:
2021-02-12 10:23

まさかの 「国民から意見を募る」! 国の、学術会議や研究開発へ予算の偏りのツケが大きすぎる。この10年なにやってたんすかね。 デブリ取り出し「作戦練り直す必要」

3798:
2021-02-12 00:48

サイエンスは一年購読してたが、純粋に学術論文というわけでもなければかといってジャーナリズムでもなく、むしろ記事は客寄せで研究者の就職斡旋サイトみたいになってる気がした。情報を得るだけだったらもっと良いサイトが他にたくさんある。

3796:
2021-02-12 00:42

全身全霊で打ち込める何かを見つけられるかどうか? 振り返ってみると、それが運命の分かれ道だった。 生業でも文化でも学術研究でもいいだろう。 本気で打ち込み、己を育てようとするからこそ、智慧が生まれる。 その智慧は後進へ伝えることで、未…

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