現代のカップルに合わせた銀行サービスの形

今回は「現代のカップルに合わせた銀行サービスの形」についてご紹介します。

関連ワード (体験、個人的、婚前契約等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


Zeta(ゼタ)の 共同創業者Aditi Shekar(アディチ・シェカール)氏は3年間にわたって、カップルがカード決済や割り勘などで財布を共有して管理する 方法を追跡 してきた。その努力の結果、何万組ものカップルが無料の家計簿アプリ体験に登録するまでになった。こうして収集した情報が、ベンチャー支援のスタートアップとして結実した。

カップルが財布をひとまとめにできる新しいフィンテックプラットフォームのゼタは、共同名義の銀行口座というコンセプトを作りたいわけではない。口座を現代の家族に合わせた形にしようとしているのだ。現在、共同名義の口座というものには透明性が欠けており、人生におけるさまざまな関係から生じた複数のユーザーを口座に追加するオプションが欠けている。一般的な共同名義口座はほとんどの場合、お互いの口座に全面的にアクセスできるようにしているだけで、支払いを細かく分けることはできない。

付き合っている相手との割り勘や支払いにストレスを経験した彼女自身の経験から、起業したシェカール氏は「カップルが支払いに関してあれこれ考えずに済むようにすることが、ゼタの目標だ」と説明する。

シェカール氏と共同創業者の Kevin Hopkins (ケヴィン・ホプキンス)氏はこのビジョンを背景に、Deciens Capital(デサイエンス・キャピタル)とPrecursor(プレカーサー)が率いるラウンドで150万ドル(約1億5740万円)を調達した。また、Chime(チャイム)、Square(スクエア)、PayPal(ペイパル)、Venmo(ベンモ)、Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、Weight Watchers(ウェイトウォッチャーズ)の幹部も出資した。シェカール氏によると、資本政策表の57%は女性または有色人種だという。

「当社はある意味で、ベンモが対応できない分野にマッチする存在だと考えている。ベンモを使って、ときには1日に6回も互いにお金を送金し合っているカップルがいる。こうした面倒なやり取りを肩代わりしてあげたい」とシェカール氏は言う。ゼタはカップル向けのツールとして市場に参入したが、シェカール氏は、現代のあらゆる世帯が安心して運用できる口座になるという壮大な構想を練っている。

ゼタのようなツールは、毎日のお金の管理を簡単に済ませることが目的だ。つまり、家賃の支払いに必要な小切手の発行、食費の分割、ディナーの割り勘、お小遣いの支払いなどだ。

つまり、ゼタは既存の銀行口座にバンキングサービスを統合できるデジタルな部分を加えることで、First Republic(ファーストリパブリック)やChase(チェイス)に取って代わる存在となる。カップルがゼタをダウンロードすると、2人が持っている既存の口座をまとめるゼタの共同カードと共同名義の口座が用意される。共同カードを使用すると、カップルが同じ口座から支払うことが可能だ。

今のところ、ゼタの口座の主な使い方は2つだ。まず、家賃や住宅ローンなどの固定費を支払う際に使う方法。もう1つは、2人の目標(コロナ収束後の旅行や車や家など2人で共有する大きな買い物など)を達成するための預金口座として使う方法だ。利用者は自分のメイン口座からゼタに必要な額だけ入金しておき、2人の出費を支払う時にゼタのデビットカードで決済する。個人的な買い物には使用しない。

「直接振り込めるフィンテックは無数に存在するが、ゼタは既存の口座を基盤として利用できるため、残高を全額送金する必要はない」とシェカール氏は言う。

ゼタは手数料(マーチャントが支払いを処理するのに要する費用)から収益を得る。チャイムと同じ手法だ。手数料の一部がゼタに、一部が銀行に支払われる。

「付き合っている相手と一緒に家賃を支払ったり、請求書の支払いを共有したりする場合は、ゼタが自然な選択になる」と同氏は言う。

「率直にいって、従来の金融機関はユーザーをバラバラにしか見てこなかった。フィンテックは我々が思っているよりも社会の現状に合わせようとしている」とシェカール氏は言う。

ゼタが成功した理由には、多くの人が自分の口座を継続的かつ有意義な方法で共有したいと考えているということがある。また、銀行のサービスが個人よりもグループを重視する方向に、早期かつ大々的に移行する準備が整っているという理由もある。こうした移行は困難に思えるが、ベンモやSplitwise(スプリットワイズ)などのアプリ、また数週間前のGameStop(ゲームストップ)騒動のような現象が示すように、すでにソーシャルファイナンスが大きな流れであることを認識している。

マルチプレーヤーフィンテック(現状にフォーカスした消費者にやさしい銀行サービスを分類する用語)に参入することで注目を集めているスタートアップは他にもある。グループファイナンスプラットフォームであるBraid(ブレイド)は、同居世帯やサイドビジネス、創造的なプロジェクトまで、さまざまな利用者向けの取引に対応しようと考えている。

ブレイドの創業者Amanda Peyton(アマンダ・ペイトン)氏が説明するように、複数の人が共有できるソーシャルファイナンスという概念を2つのフェーズに分割すると、フェーズ1.0がVenmoである。フェーズ2.0では、「口座レベルと取引レベルでお金を共有できるようになる」と同氏は言う。

「現在、主流となっているさまざまな銀行サービスは、自分とパートナーのお金を別々に管理している。ソーシャルファイナンス2.0では、双方のお金という考え方が導入される」とペイトン氏は言う。

「銀行はこれまで、自行の顧客ベースを拡大することを優先させてきた。銀行はZelle(ゼル)のサービスを除いて、メインの預金口座が他行でもお金を共有できるサービスにはあまり投資してこなかった」と同氏は説明する。「そのような製品に投資しても、銀行は目に見える利益をほとんど得られないからだ」

「ゼタは、支払いや将来のための貯蓄など、カップルやファミリーに特化することでブレイドとの差別化を図っている。シェカール氏によると、税金の支払いや婚前契約など、さらに広範にわたってファミリー向けのサービスを今後サポートしていく予定だという。現時点では、ゼタの1口座につき2人までしか参加できないが、ブレイドの共同名義口座には複数のユーザーを追加する機能が用意されている。

ゼタにとって最大の課題は、利用するカップルが2人で運用する口座を共有できるほど充分に信頼し合っているかどうかという点だ。個人主義というのは、ツールが不足しているからという銀行側の手抜きの結果ではなく、自分のお金を自分で管理したいという利用者の選択の結果である。もちろん、お金を共有することの裏返しとして、カップルの関係が終わってしまったときのやり取りが面倒という問題がある。

画像クレジット: Zeta

「我々が構築した最初の機能は、口座の分割だった」とシェカール氏は言う。カップルが別れてしまったとき、共有口座のお金がどうなるのかについて、ゼタには明確な規定がない(というより、お金の折半を必要とする条項がない)。

ゼタは今後、「関係が終わってしまったときに」口座をどうするかについて、登録時に利用者に尋ねる機能を追加することを考えている。

「口座を共同で作る際には、相手を心から信頼している必要がある」と同氏は言う。「相手を信頼していないなら、ゼタを使う準備ができていないということだ」。

画像クレジット: Zeta

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[原文へ]

(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)

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