DX専門組織を実際に立ち上げるステップ–前編
今回は「DX専門組織を実際に立ち上げるステップ–前編」についてご紹介します。
関連ワード (DXマネジメントオフィス入門、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
本連載は、これまで10回に渡りデジタルトランスフォーメーション(DX)推進における戦略・組織/人材・テクノロジーに係る大きな方向性やフレームワーク、DXガバナンス、つまりはDX専門組織が全社DXを進める旗振り役になり得るための、抑えるべき要点について解説してきました。今回からは、最終ステップに入ります。DX専門組織を組閣し、経営層から一般社員までの全社ステークホルダーの納得性を得た上で醸成すべきDXのモメンタムの中、当該活動をいかに継続的・効果的に進めていくべきか――DX専門組織の組閣アプローチとともに、大局的なロードマップの策定、次世代DXに向けた次のステップについて詳細かつ具体的に解説していきます。
まず本記事では、実際にDX専門組織を組閣し、立ち上げていく際に、どのような手順とアプローチで効率的・効果的に進めていくべきかについて、2回に渡り具体的に解説します。既存のIT部門とは、「目的や狙い、業務部門を支援する領域」が異なるDX専門組織を、着実に、また、盤石な形で立ち上げるには、単にリソースを収集するだけではなく、意思と戦略を持って一つひとつのタスクを計画的に進めていくことが肝要です。特に、3カ月程度の短期間でDX専門組織を垂直立ち上げする場合はなおさらです。立ち上げのアプローチとしては、「1.あるべき姿の明確化」「2.企画・設計」「3.運用準備」「4.DX専門組織 試行運用」「5.DX専門組織 本格運用」の5段階の手続きを推進することを推奨します(図1参照)。
DX専門組織の組閣を意思決定したら、最初に「DX専門組織のあるべき姿」を明確化します。どんな組織体でも、その組織の「存在意義」をまず定義しないと、参画メンバーの意識統一がままならず、今後の活動にブレが生じる可能性が高くなります。
ここで改めて、自社の中期経営計画やビジネス視点の全社戦略をしっかりと確認・把握します。その後、DX専門組織の「ビジョン・方針の明確化」を行います。組織の存在意義や方向性を言語化することは、メンバーたちの納得感や意識醸成を得るための準備になります。
次に、「想定顧客(内外)の期待把握」を行います。DX専門組織が関与する企業内の部門、場合によってはグループ企業や社外へのサービス提供も踏まえ、どのようなニーズがあるのか、何を求められているのかを理解しておきます。こうすることで、組織運営において効果的な貢献ができないまま時間だけが過ぎてしてしまうといった事態を回避します。
さらに、「顧客(内外)接点におけるサービス提供対象範囲の概要設定」において、DX専門組織が支援すべき社内外のステークホルダー(法人格や事業部門など)を特定し、ステークホルダーにどのようなサービスを提供していくか、概要レベルでアウトラインを策定します。これらの検討により、自分たちが何のために、誰に対して、どのような支援を行っていく組織なのか、骨格の概念が固まります。
(1)で概要レベルの組織方針の骨子が完成したら、DX専門組織の推進シナリオを作成します。「立ち上げ推進体制・メンバー定義」で、初期メンバーの人数や人物を特定します。
次に、「DX専門組織立ち上げ・推進・サービス設計アプローチ(概要スケジュール)作成」として、立ち上げに至るスケジュールを週単位の粒度、担当者も明記した上で計画します。それをインプットに、「DX専門組織の初期メンバー候補者との個人面談(1on1)」を行い、DX専門組織のあるべき姿や意義、進め方を説明し、候補者のDXに対する意思や意識を確認します。候補者の納得感を得て視線を合わせる、この手続きがないまま組織運営をスタートさせると、キックオフをしないままプロジェクトを開始して迷走してしまうような事態になりかねません。
次に「推進上の課題の明確化(リスク特定)」をします。組織運営に潜むリスクは、企業や組織文化にとってさまざまですが、早い段階で将来的なリスクにも目を向けることにより、健全な組織運営の実現につながります。DX専門組織の運営は、多様なステークホルダーと連携しつつ、変革を進めていくことが肝要です。
続いて、「マネジメント領域別概要設計(人事を含めたチェンジマネジメント/コミュニケーションプラン)」で、これまでに作成したDX専門組織の推進シナリオをどのように進めていくべきか、手順や頻度、手法について、方針レベルで整理することが重要です。また、DX専門組織へ他部門から人材を招集する場面がやってくることも想定し、人事部門を巻き込み、情報連携についても方針を検討しておくことが望ましいでしょう。