LIFULLが推進するプロダクトマネジメント&アナリティクスの取り組み

今回は「LIFULLが推進するプロダクトマネジメント&アナリティクスの取り組み」についてご紹介します。

関連ワード (データマネジメント等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 LIFULLは、国内最大級の不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」などを企画・運営する大手企業。競争の激しい市場環境において、同社はプロダクトマネジメントとプロダクトアナリティクスを推進することで、提供価値の向上と競争力の強化を図っている。

 LIFULL HOME’Sは、「叶えたい!が見えてくる。」をコンセプトに、賃貸、一戸建て・マンションの購入、注文住宅、住まいの売却など、さまざまなサービスを展開している。2024年8月6日現在で約630万件の物件情報を掲載し、約3万店の不動産ネットワークを抱えるという。

 生成AIなどの新機能に対応するサービスやプロダクトの開発にも積極的に取り組んでおり、2023年4月には国内不動産ポータルサイトとしては当時初めて OpenAIが提供する「ChatGPT」の技術を活用した「AIホームズくんBETA LINE版」のパイロット版をリリースしている。また、2024年6月には、こちらも国内不動産ポータルとして初めて「Apple Vision Pro」向けにアプリを提供している。

 LIFULL HOME’S事業本部 Chief Product Officer/プロダクトプランニング部 部長の大久保慎氏によると、同事業本部でプロダクトマネジメントとプロダクトアナリティクスを推進するための環境整備に着手したのは3年ほど前からだという。

 大久保氏は、当時のプロダクトチームについて「頭打ち感や閉塞感があった」と振り返る。

 「新しい取り組みができず、いろいろと時間がかかる状態だった。社内のあちらこちらで『スクラム開発に挑戦しよう』『何か単発でやってみよう』という動きもうまれたが 、そこから先になかなか進まず、社内で広がらなかった」(同氏)

 それまで、社内にプロダクト開発の型がなく、チームによって各職種の責任や権限の範囲が不明確だったり、計画通りに進めることがプロダクト開発の優先事項となったりしていた。

 そうした状況を改善するため、大久保氏は書籍「INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント」(日本能率協会マネジメントセンター)を参考に、プロダクトマネジメントの手法を取り入れることにした。

 「INSPIREDには、エンタープライズ企業にとってのプロダクトマネジメントの意義が書かれており、まさにわれわれが陥っていた状態がかなり的確に描写されていた」(大久保氏)

 プロダクトマネジメントの推進に向けては、サービス企画、デザイナー、エンジニアという既存の職種に加えて、プロダクトマネージャー、テックリード、プロダクトデザイナーという役割を新たに設置。役割や職種の専門性に基づき、責任を持つ対象や範囲を明確に定義した。

 具体的には、プロダクトマネージャーは「ユーザーはこのプロダクトを購入したり選んだりしてくれるか」や「事業として実現・継続が可能か」といった視点で、テックリードであれば「自分たちにこのプロダクトを開発できるか」、プロダクトデザイナーなら「ユーザーはこのプロダクトの使い方が分かるか」という視点で、それぞれプロダクトの価値に責任を負う。

 大久保氏は、プロダクトアナリティクスについて「もともとはFacebook(現Meta)などの企業が自社プロダクトをグロースさせる際に自作した社内分析ツールを、汎用的なツールとして派生・発展させたもの。プロダクトを利用しているユーザーの行動データを分析し、成長のための改善点などを発見するためのものである」と説明する。

 LIFULLでは、もともと「Google アナリティクス(ユニバーサルアナリティクス、UA)」を活用していたが、非常に多くのカスタマイズを行っていたため学習コストが高く、ツールを使いこなすには「属人性が高く、職人芸の域だった」と大久保氏は語る。また、高度な分析にはアナリストの助力が必要となる一方で、アナリストの人数は限られていたためボトルネックとなっていた。そうした中、「組織全体としてユーザー理解が定量・定性ともに不足していた」(同氏)という。

 顧客データ基盤(CDP)の導入とUAのサポート終了をきっかけに、プロダクトアナリティクスツールの「Amplitude」を採用した。「学習コストの低いツールを導入することで、分析をプロダクト成長のボトルネックにしない。一定水準の高度な分析はプロダクトマネージャーでも自走可能にし、広く深いユーザー理解につなげたい」(大久保氏)

 Amplitudeは、ベストプラクティスとされる各種フレームがテンプレートとして標準搭載されており、他ツールであれば難易度の高い分析でも数クリックで簡単に行える点が特徴の一つだという。

 ただ、従来の分析ツールとは異なる部分も多く、勉強会の開催や知見の共有、Amplitudeが主催するデータ分析のハッカソンへの参加などさまざまな工夫を行い、プロダクトアナリティクスの定着・活用高度化を推進した。

 プロダクトマネジメントとプロダクトアナリティクスの推進により、市場学習回数を従来の1.5倍、施策成功率を同2.8倍、創出コンバージョン数を同10倍まで向上した。「気づけば240人以上がAmplitudeを使っており、2023年末にはAmplitudeの『Pioneer of the Year』を日本企業として初めて受賞した」(大久保氏)

 今後の展望については、プロダクトを通じた事業拡大のため「市場学習回数の最大化」に取り組んでいく。「施策単位で1%未満のリフト(改善)であっても、頻度を高めることで複利的にリフトを積み上げるという考え方だ。中期的には年1000回(のリフト)を目指している」(同氏)

 また、「真の課題解決にコミットし、共創をリードする」をプロダクトマネージャーやサービス企画のあるべき姿として置き、その観点で「プロダクトチームとして全体の底上げを図っていく」としている。

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