世界初の可動部のない自動運転用ソリッドステートLiDAR開発、見たいところを必要なだけ見る人間の目のような視覚システム実現
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本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、LiDAR(ライダー)システムの開発・製造・販売を行うSteraVisionは2月21日、世界で初めて、スキャナー(MultiPol)の可動部を一切なくし量産性を向上させたソリッドステートLiDARを開発したと発表した。光の干渉を利用した光コヒーレント技術を組み合わせることで、肉眼では見えない遠方や霧の先が見えるようになり、さらに自動運転車向け認識技術と連動させることで、「見たいところを必要なだけ見る」ことができる人間の目のような機能を持たせることが可能になった。
これは、NEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」において、SteraVisionが2019年から進めてきた「長距離・広視野角・高解像度・車載用LiDARの開発」の取り組みによるもの。高性能LiDARによる省エネルギー化が大きな目標だが、今回開発されたソリッドステートLiDARを使用して、道路や交通状況を把握し早めに対処する「予知運転」が可能になれば、燃費向上による15.2%のエネルギー削減が実現するという。
LiDARは、レーザー光で測距や画像検出を行う光センサー。自動運転車の「目」となる重要な技術だ。これまでは、レーザー光で対象物をスキャンする際に、鏡を動かしてレーザー光を走査させる方式が一般的だったが、そのような可動部があることで、金属疲労による動作停止や、外部からの振動による不安定化、小型化が困難といった問題があった。そこでSteraVisionは、可動部を一切なくしたソリッドステートLiDARを開発した。
このLiDARの柱となる技術の1つが、ソリッドステートスキャナー「MultiPol」だ。液晶を使って光ビームを上下左右に高速でスイッチすることで、デジタルスキャンを可能にした。
ソリッド・ステートスキャナー「MultiPol」の動作原理
もう1つは、光方向性結合器やY分岐器といった光部品の多くを1チップに集積したフォトニックICだ。多くの光ビームのスキャンが行え、指先に乗るほどの小型化と低価格化が実現した。
開発したフォトニックIC
そして3つ目が、カメラ画像、パーセプションAI、LiDARの融合だ。LiDARによる物体検出とカメラ画像の自動運転車向け認識(パーセプションAI)を融合させ、カメラだけでは困難だった霧や煙の向こうにある物体の検出や追跡ができるようになった。さらに、アナログ式ではレーザー光を走査させて全体を計測した後にフレームをリフレッシュしていたが、デジタル方式では選択的に重要な部分だけを計測し、即座にリフレッシュができるため高速追跡が可能となり、「見たいところを好きなだけ詳しく見る」という人間の目と同じような効率的な視覚システムが実現する。
カメラ画像・パーセプションAIと、LiDARを融合した重みづけスキャンの例。LiDARによる物体検出(上図)を3Dカメラ画像(下図)と融合して、パーセプションAIにより認識(下図の赤枠部分)させている
SteraVisionでは、これから自動運転、FA、ロボティクス、セキュリティといった分野の顧客ニーズに合わせてチューニングを行い、2022年の7月ごろからサンプル出荷を開始する予定とのことだ。